見出し画像

敗者復活戦

お正月が苦手な理由が少しわかった気がする。家族とゆっくり過ごすとか、お正月らしさみたいなものに、いつの間にか馴染めなくなっていた。でもみんな同じじゃつまらないし、わたしはわたしでいいのか。


年越しは去年と同じで、母と妹と過ごした。日付が変わる直前、滑りこむように、2019年を日記で振り返るnoteを書いた。 元旦の朝には、母が買ってくれたおせちを3人で食べた。

2日は、母と妹と、母方のおばあちゃんに会いにいった。伯母さんが施設まで送ってくれた。年に1回だけなのに、会いにいくたびに、「遠いところありがとうねぇ」って何度も言ってくれるおばあちゃん。毎年のように、着ているコートやセーター褒めてくれる。ピンクのマニキュアが左手の薬指にだけ残っていて、「爪可愛いね」と言ったら、職員のお姉さんがやってくれたのだと教えてくれた。

母方の実家ではすごく良くしてもらった。それなのに、それだからか、帰りに伯母さんに車で駅まで送ってもらい別れてから、泣けてきた。いつかの、別の後ろめたい気持ちを思い出していた。おばあちゃんの介護、今かかってるお金のこと、どう思っていたんだろう。母やわたし、妹のこと、どう思ってるんだろう。疑心暗鬼がくせになってること、人間不信になってる自分がまた悲しかった。

夜は、地元にある広い温泉施設に行った。無料の送迎バスのお客さんは、わたしひとりだったけれど、温泉施設に到着すると、入り口から家族連れで賑わっていた。

お風呂場は混んでてガヤガヤしていて、湯船での「帰りたくないなぁ」って小さな呟きも誰の気もとめずに吸い込まれていって、心地よかった。

もう実家はないんだって感覚がどこかにあって、帰れる場所がある人たちをうらやむ気持ちがあって、そんな自分が嫌になる。考えごとしてたら、なんだか悲しくなってまた涙が出た。でもその数分後には、全く別のことを考えていたりして、悩みは、自分が思ってるよりも深くない。 去年あったうれしいこと、むかついたこと、どうでもいいことを思っていた。

脱衣所に出たら、コンビニで買った基礎化粧品のトラベルセットに7日間って書いてあるのを見つけた。これがあれば7日間は逃げ続けられるんだなと、意味わかんないことを思った。

温泉施設には休憩所があって、何人かの子どもがはしゃいでいた。机の向こう側に周っては、お母さんを振り返る女の子。何度も何度も振り返って、何度もお母さんのもとに走り寄るのを見ていた。可愛かった。

実家には泊まれない気持ちと帰りたくない気持ちから、その日は地元のネカフェに行った。父とおばあちゃんがいる実家には、3日に立ち寄る。たぶん。

「長期休みは新しいことにチャレンジしてみると満足度が上がるらしいよ」という助言を聞いたのに、ただ温泉いってネカフェに来て、こんな文章を書いている。新年一発目から、全然かませてない。なんなら、今年の目標も決めてない。

ただ、大晦日に友達が送ってくれたメッセージに「この1年は、どん底からの敗者復活戦で優勝したみたいな1年やったなあ!」と書いてあって、わたしも、という気持ちになったのを忘れないでいる。

去年は、だめだめな1年だったと自覚してる。でも同時に、もらった言葉や感情、見せてくれた日常や人生に力をもらった1年だった。心動かされて生きてるって気づいたし、生きようと思ったし、生きるしかなくなった。

うれしい感想をくれた。
いいと思うと強く頷いてくれた。
人間くさいところを見せてくれた。
「好き」のおすそ分けをしてくれた。
わたしが書く文章と向き合ってくれた。
わたしの文章を読みたいと言ってくれた。
自分の人生を生きていいと諭してくれた。

そうやって受け取ったものを返せるような、敗者復活戦な年にするんだ。そういえば、お笑いコンビのサンドウィッチマンも、敗者復活戦でM-1優勝したと聞いた。

配られた手持ちカードが劇的に弱くて絶望するみたいな、他の人よりもスタート地点がずっとマイナスに感じる日もあるけれど、自分じゃどうしようもないし、それでたたかっていくしかない、と思う。

去年、不幸でいることの方が、幸せになるよりずっと簡単だって気づいたから、たとえどんな劇弱な手持ちカードでも、人生やるからには楽しくしたいね、という気持ちでいる。

スキやコメント、SNSでのシェアうれしいです。ありがとうございます。いただいたサポートは、本、映画、演劇、寄席など自分の好きなものに注ぎ込みます!