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パン屋で出会ったアメリカ人投資家のおじさんの話

確か、去年の秋頃の小雨の日のこと。

ダンサーの私が

人生で初めて「投資家」のおじさんと

出会った時の話です。


ダンサーをお仕事にしている私の日曜日は

スタジオをはしごして2本レッスンをする

楽しいけどちょっとタフな日です。


その日も1つ目のレッスンを終えて、

2つ目のスタジオに向かっていて

小腹が空いたのでパン屋さんに入りました。


小さいパンをふたつ選んで、レジに向かうと

外国人のひょろっとしたおじさんがレジの人と

会話ができず何やら困っている様子でした。


一応、英語は話せるので

店員さんとおじさんに

「どうしました?」

って声をかけたんです。


どうやら、コーヒーの買い方に質問があったようで

通訳をするとそのおじさんは

私に丁寧に、

thank youと言って会計を終えました。


ちょっと控えめで、紳士的。

でも少し寂しげなおじさんでした。

旅行者っぽくもなく、日本に慣れている感じもする。

きっと近くに大学があるから教授かなんかだろう、

でも、だったら何で日本語全然わかんないんだ?


そんな疑問は残りつつ、私も会計を済ませて

2階にあるイートインコーナーへ上がりました。


2階は程よく混んでいて、主婦の2人組や

課題をやる大学生が点々と座っていました。


空いている席に座ると、

近くにさっきのおじさんがいて

私に気付いて「さっきは、ありがとう」

と声をかけてくれました。

「どういたしまして、どこから来ているの?」

と質問し、私もおじさんの隣に席を移り

次のレッスンまでの間しばらく

会話をすることにしました。

アメリカ出身のそのおじさんは何度も日本に

来ているらしく、私が外国人の人と初めましてする時の

テンプレの質問をいくつかしました。

「今回は旅行?それともお仕事ですか?」

おじさんは、少し困ってから

「うーん、どっちでもないんだ」

と答えました。


ん?予測した答えと違う!

大学の教授じゃなかった!笑


「じゃあ、お仕事は何しているの?」

そう質問すると、

「仕事は、、、してないんだ。

君は仕事をしなくても

お金が手に入る生活だったら

何をする?」


私は固まりました。

いや、そんなこと考えたこともないわ!

今まで、ダンサーとしてのお仕事に就くまで

毎日バイトをしていた時もあった。

週6でバイト。その後、レッスンに通ったり、

先輩の代行でレッスンをしたり、

空いた時間には日雇いのバイトもした。

薄汚い工場で寒い中立ちっぱなしで、

シールを貼り続ける仕事もした。

1日オフがあるのは

2ヶ月ぶりだった時もあった。


「私はダンサーなんだけど、

それでもダンスはやるかなぁ。

教えることもステージで踊るのも楽しいし」

とっさに答えたけどきっと本心だった。


「ちょっと、待って

答えたくなかったらいいけど、

仕事をしないでお金が

もらえるって、どうゆうこと?」

そうおじさんに聞くと、彼の今までの話を

ゆっくりと思い出すように話してくれた。


アメリカでバリバリ証券マンをやっていた頃、

何回か仕事で日本に来ていたため、日本は馴染みがある。

その頃に投資をしたのが成功し多額のお金を手に入れた。

そのお金で家を何件も買い、

現在はその家賃収入、不動産収入で生活をしている。

今は新しい何かが見つかるまで興味を持ったことで少し

ビジネスをしてみたり、世界を旅している。


とまぁ、本当にそんな人いるんだ、、、といった内容だった。


そのおじさんはもう一つ私に質問した。

「じゃあ、

世界でどこかに家を持つとしたら

どの国がいい?

一つじゃなくてもいいよ」


いやいや、なんだその質問!!

私に家を買ってくれ!!と内心思いつつも、


「今のところ日本とドイツかな」

意外とあっさり答えられた。


「日本は家族がいるから。

あとは食文化や自然が好き。

ドイツは昔留学をしていたこともあって、

友達もいっぱいいるし、

スローライフでBIO食材が豊富なのがいい。

ダンスを出来るツテもある」

どうやら、私の基準は

人、食べ物、ダンスらしい。笑


なんでそんな質問をするのか聞くと、

おじさんは、今旅行をしているのは永住する国を

探しているためだと答えた。

「今まで、いろんな国を見て回って来たが、

どうもしっくりくるところがない。」

ちょっと困っているおじさんに、

当時25歳のちんちくりんな私は生意気にこうアドバイスした。

「大事なのは、どこじゃなくて

『誰と』かと思うよ。

一緒に住む人、周りの友達、

その人たちがそこに住みたいって

思わせてくれるんじゃないかな。」


私は労働をしないとお金が入ってこない生活をしていて

とても裕福とは言えないけど、毎日楽しい。

今年で8年目の彼氏とも順調で一緒に住んで

毎日バカやって踊ってたまに一緒に旅をして暮らしている。

友達を家に招いては遊んで、

週休2〜3日程度で働いてるが

毎日楽しいなぁって思える。

そう思えて来たのも、

ある程度ダンサーとしてお仕事が

もらえるようになって、

ボロボロの家から今の家に引っ越して

からのことだけど。


でも、最近丁度考えていた。

ダンサーは肉体的に限りがあるし、

家族を持ちたい、

自然の中で程よく大きい家に住みたいとか

その理想のためには、お金持ちじゃなくても

ダンスができてたら幸せっていう

今の生活はいつまでも続けられない。

自然の中に住むなら都内に働きに出る回数も減らしたい。


その頃ちょうどyoutubeで

『金持ち父さん、貧乏父さん』という本の解説を見て

働かなくてもお金が

入ってくるライフスタイルについて考えてたから、

パン屋でアメリカ人投資家のおじさんと出会えたことは

いい出来事だったし、

そのおじさんが少し寂しそう

なのも思いがけない出来事だった。


そうか、


どれだけお金があれば幸せかではなくて


どんな方法で、どれくらいのお金があれば

大好きな人たちと幸せな暮らしができるのか。


私の考えるべきことが分かった気がした。


お金儲けに本能的に嫌悪感を抱いてしまう私だったが

お金持ちになることをゴールにするのではなく、

お金は自分の幸せを実現する

ツールの一つでしかないと考えることは、

ある意味心の支えになるのかもしれない。



人生の豊かさは何で決まるのだろう。



そんな話をしていると、

2つ目のクラスのスタートまであと5分だった。

幸いにもパン屋からは、スタジオがそう遠くなかったので

おじさんに挨拶をしてダッシュでスタジオに向かった。


連絡先も交換せず、名前ももう忘れちゃったけど、

世界のどこかで

幸せに暮らしているといいなぁ。



#ゆたかさって何だろう

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