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ビットコイン現物ETF承認でのメリット・デメリットは


1.ビットコイン現物ETFとは

ビットコイン現物ETF(上場投資信託)は、トレーダーが暗号資産(仮想通貨)取引所で直接ビットコイン(BTC)を売買することなく、証券口座と株式市場を通じて簡単にビットコインに投資することが可能になります。ビットコイン現物ETFは、ビットコインに投資する新しい手段として注目されています。これが実現すると証券口座を通じて投資することができるため、多くの投資家にとって便利になります。

しかし、ビットコイン現物ETFには管理費用もかかり、ビットコインを直接所有することの利点、例えば中央管理者が不要なP2P取引やプライバシー(匿名性)の特性などは享受できません。

2.ETFの基本知識

ETFは、証券取引所で取引できる投資信託ですが、ビットコイン現物ETFを理解するために、金と株式や債券のETFを例にして説明します。

(a)金現物ETFとは

投資家は証券口座を介して、ニューヨーク証券取引所で取引される金現物ETF株式を購入でき、金相場に連動して価格が変動する仕組みです。
金は利息や配当を生み出す資産ではないため、金現物ETFに利息や配当はありません。

(b)株式・債券ETFとは

株式ETFは、特定の株式市場指数に連動するように設計された投資信託で、個別の株式を直接購入することなく、幅広い市場への露出が可能になります。「S&P500米国株ETF」などが一例ですが、投資家はこのETFを購入することで、S&P500指数に含まれる企業の株式に間接的に投資することができます。

株式ETFは、保有する株式から得られる配当を反映されるため、株式市場の成長に加え、配当収入も得ることができる点が、金現物ETFとの違いです。

債券ETFは、政府や企業が発行する債券に投資するもので、これらのETFは、特定の債券指数に連動するように構成されており、「米国国債7-10年ETF」などが一例です。これらは特定の債券市場指数に連動するよう設計されており、価格変動リスクの分散が可能となります。

3.ビットコイン現物ETFの特徴

資産運用会社ブラックロックは、2023年6月にビットコインETFの申請を米国証券取引委員会提出し、これを「ビットコイン現物ETF」としています。これが承認されれば、米国株式市場で直接ビットコインに投資することが可能になります。
では、ビットコイン現物ETFが承認された場合のメリットやデメリットをまとめてみましょう。

4.ビットコイン現物ETFのメリット

ビットコイン現物ETFは、機関投資家と個人投資家双方にとって多くのメリットがあります。機関投資家と個人投資家双方のメリットとしては、ビットコインを保管するウォレット管理の手間が削減され投資家にとってアクセスしやすくなります。

(a)規制上の監視が可能

証券口座を通じて購入・保有できるので、管理やリスク評価が便利になる利点があります。
ビットコイン現物ETFは通常、規制された枠組みの中で運用され、一定レベルの監視と投資家保護を提供し、規制されていない仮想通貨取引所に関連する可能性のある詐欺や市場操作に関する懸念を軽減するのに役立つ可能性があります。
また、先物ETFと比較して、現物ETFではロールオーバーコストや契約満期の心配がなく、長期保有できるメリットもあります。

(b)税制上のメリット

ビットコイン現物ETFは、特に長期投資目的でビットコイン(BTC)を保有したい日本の個人投資家にとって、税制上の重要なメリットを提供します。
証券口座を通じてETFを購入することで、ビットコインへの投資が手軽になるだけでなく、税務申告の手続きも簡素化されます。この点は、日本の税制の特性を考えると、特に重要です。
日本では、現物ビットコインの利益は「総合課税」として扱われため、ビットコインの収益を給与などその他所得と合算して、累進課税方式で税額が決まります。この方式では、所得が大きいほど税率が上がります。
一方で、ETFなどの株式投資による譲渡益は、「申告分離課税」の対象なので、ビットコインの譲渡益に対して税率20.315%が適用され、給与などの所得とは別の税金計算を行います。申告分離課税は税負担の管理が分かりやすくなるメリットがあります。
また、「損益通算」や確定申告が不要になる「特定口座」の対象となる可能性があります。
これら税制取扱違いを理解することは、ビットコインETFへ投資を検討する際に重要で、必要に応じて専門家に相談するとよいと思います。

(c)流動性と価格の発見

ビットコイン現物ETFの作成と償還のメカニズムは、市場の流動性の維持に役立ち、ビットコインのより正確な価格発見に貢献し、ボラティリティを低下させる可能性があります。

(d)保管サービス向上

ビットコイン現物ETFでは通常、原資産を安全に保持する信頼できるカストディアンが関与し、機関投資家にとってのビットコイン保有の安全性とセキュリティに関する懸念に対処できる可能性がある。

5.ビットコイン現物ETFのデメリット

ビットコイン現物ETFは仮想通貨の性質上のいくつかのデメリットが存在することもお伝えしないといけません。

(a)P2Pの消失

まず、ビットコインはP2P取引なので中央管理者が不要で、仲介者を介さず取り引き可能ですが、ビットコイン現物ETFではこの特性利用出来ません。そのためビットコイン現物ETFでは、ビットコインの分散型の特徴が活かされにくいのです。
それと関連して、24時間365日変動するビットコインに対し、ビットコイン現物ETFは証券市場での売買となると、取引時間が限定されるため、短期トレーダーにとっては不向きです。一方、長期保有したい投資家にとっては税制面の恩恵が、それを上回ることが考えられます。

(b)匿名性の低下

ビットコインの特徴のひとつである匿名性もETFでは限定され、証券取引所を通じて売買するために投資家の個人情報が共有され、ビットコイン取り引きの匿名性が薄れることが懸念されます。

(c)運用コスト

また、ETFの運用にはコストがかかります。運用手数料は収益率に影響するので、投資判断において重要となってきます。

(d)市場流動性の懸念

ビットコイン現物ETFが普及すると運用残高が増加して、市場に流通するビットコインの量が減少する可能性があります。ビットコイン現物ETF発行会社は、運用残高に応じてビットコインを購入するため、市場への流動性に影響を与える可能性を考慮する必要があります。

(e)市場のボラティリティ

ETFはボラティリティの低下に貢献する可能性がありますが、仮想通貨市場は依然として価格の変動が激しいことで知られています。突然の大幅な価格変動はETFの価値に影響を与え、投資家に潜在的な損失をもたらす可能性があります。

(f)市場操作の懸念

規制当局の監視にもかかわらず、市場操作に対する懸念は依然として残る可能性がある。仮想通貨市場はまだ比較的若いため、価格操作の影響を受けやすく、ETFの価値に影響を与える可能性があります。

(g)規制上のハードル

規制当局の承認プロセスは時間がかかり、不確実な場合があります。規制当局による遅延や拒否は、ビットコインスポットETFの設立を妨げ、投資家の信頼に影響を与える可能性があります。

(h)技術的な課題

暗号通貨市場をサポートする基盤となるテクノロジーやインフラストラクチャは、セキュリティの脆弱性やネットワークの問題などの技術的な課題に直面する可能性があり、それが間接的にETFに影響を与える可能性があります。

6.ビットコイン現物ETF上場承認による投資家やこれから投資を考えている人へ

ビットコインを伝統的な金融商品であるETFに組み込むことは、その法的位置づけや信頼性を高める上で大きな判断材料になることでしょう。これまで暗号資産に懐疑的だった投資家や、規制やリスク管理の面で懸念を持っていた機関投資家も、ビットコイン投資を検討するきっかけを得るでしょう。
また、規制情勢、市場状況、テクノロジーの発展は、ビットコインスポットETFの動向に大きな影響を与える可能性があることに留意することが重要です。

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