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上海の夜景を見ながら考えた 「先進的」って何だっけ?

忙しさを理由に秋からnoteを更新していなかったのですが、

2020年のスタートを機に、2019年9月からの文化的暮らしを振り返りたいと思いますー。

「CODE46」な都市、上海


9月のこと。

大学時代の友人と10数年ぶりに連絡を取る機会があり、友人が上海で会社を経営していることを知りました。

上海は私の大好きなマイケル・ウィンターボトム監督のSF映画「CODE46」(2004年公開)ロケ地となった場所でずっと訪ねてみたかった場所。

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思い切って9月末の連休に行くことにしました。

土地に呼ばれるというか、勝手になんだか今すぐ行かないといけない気がして。

GoogleもFBもLINEもなかなか繋がらない「らしい」、とか現金は使えない「らしい」とか、

電子決済は中国に銀行口座がないと利用できない「らしい」、とかそんな前評判があったから、

アメリカより、ヨーロッパより、アジアの他の地域より、行くのが億劫だったのだと思います。

でも友人のおかげでその億劫な感情が消えて、急に上海熱が高まったのでした。

そして、

いざ行ってみると、実はめちゃくちゃ近いと気づきました。沖縄に行くのとあまり変わらない時間であっという間に着いてしまう。

結局、特別なWiFiを借りて現地入りすれば、LINEもGoogleもなんでも不自由無く繋がりました。

現金とクレカで決済もそれなりにこなせました。

現地で暮らす友人との連絡にはFBやLINEは不安定だったので(VPN接続に色々制限がかかるらしい)WeChatを使いました。

あとは百度のマップと翻訳アプリを多用していました。

日本人は漢字がなんとなくわかるから、現地の道路標識も無理矢理理解できちゃう。これは台湾や香港と同じ。

筆談が結構有効で、タクシーの運転手さんとは専ら筆談でした。

百度の翻訳アプリの性能も良くて、レストランではどのウェイターさんも、自分の携帯を私に差し出して、日本語で話した言葉を中国語に訳していました。そしてそれはほとんどが正解。

という訳で、上海の街を便利に乗りこなせてる感じ?に結構な心地よさを感じたのでした。

「先進的」って何だっけ?

滞在は2泊3日。

たった2日で見られる上海は限られていたけれど、デジタルテクノロジーが生活の中に浸透している都市だとの実感は湧きました。

駅に設置された自動販売機はデジタルサイネージがほとんどで、前に立つ人ごとにおススメの飲み物が変わります。

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そしてその自動販売機の多くはアリペイやwechatペイじゃないと買えないのです。

交通広告には必ずって言って良いくらいQRコードが載せられています。

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シェアサイクルもそこら中にあふれ、UBERみたいな配車サービスも整備されています。

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スーパーもAmazonGoみたいな無人スーパーがあるし、目抜き通りは「表参道!?」と見まごうほど洗練されている。

世界中の高級品が衣食住集められているから何でも手に入ります。めちゃくちゃ高いけど(関税が高いんだろうな)。

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一方で宿泊先の道を挟んだ奥には昔ながらの低い建物の長屋エリアが広がっていて、屋台でお惣菜や饅頭、野菜やスパイスを売っています。

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地元の人が自分の家の食材を調達しているようでした。上海ガニも驚くほど安い。(スーパーの10分の1以下!)

そしてそんな小売店でも、みんなQRコードでスマホ決済対応していました。



「CODE46」は環境破壊で砂漠化が進行した地球が舞台の話なのだけれど、

人工的に整備して作られた美しいテクノロジー都市とそのエリアの外側に広がる広大なエリアに二分された分裂社会を描いています。

エリート集団に選ばれたものだけが都市部に住むことを許され、専用の許可証をもらえるけれど、

無法地帯に住む人々は人としての最低限の生活すらままならない環境で暮らしています。

「CODE46」は舞台を「上海」として描いたわけではないのですが、上海の今を見て、勝手に「CODE46」と比較してみて、

今の社会はもっと複雑化していると改めて思いました。

そもそもよくつかわれる「先進的」という言葉って何に対して使う言葉なのか?と。

中国でスマホ決済が広く普及しているのは人民元に対する不信の表れでもあります。

現金の価値が危ういから電子マネーの方が良いという考え方です。これって先進的なのかしら?

個人情報がネット上に蓄積され、電子台帳に書き込まれて実質上改ざんが不可能なブロックチェーン技術は「先進的」な気がするけど、

その考えの根底に「性悪説」や「不信」があるとすれば、それは先進的なの?

なんて考えだすと、

長屋で1個数十円の饅頭を売ってスマホ決済しているおじさんが先進的なのか?

地下鉄に乗るたびに改札はスマホで出入りしているのに、その手前で必ず人間の手で手荷物検査が行われている、というのは先進的ではないよなぁ…。と思ったり。

そして

ドローンで有名な中国テック企業「dji」の「オスモ」で上海の夜景をめちゃ便利だなぁを連呼しながら撮影してる私は果たして先進的なのか?

と。

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うーん悩む。

今や「先進的」って言葉の意味が人によってかなり違ってて、新しい技術を使いこなして、便利そうに暮らしているのが先進的な訳でもないんだろうな。テクノロジーを駆使して便利に都市生活を乗りこなしてる感を出しているってことは、その一方で、個人情報を差し出している可能性も非常に高いわけで、「先進的」って難しいな。と悶々としてしまったのでした。

「CODE46」では守られた都市部は最新のテクノロジーを駆使したサイバー都市、それ以外のエリアは前時代的な描かれ方をしていましたが、実際はそんなに簡単な図式ではないのだなと改めて思いました。

友人に背中を押される

さて、肝心の友人との再会についても書いておこうと思います。

私の友人は上海でデジタルアートの会社をやっていることが分かったのですが、

上海の高層ビルで開催されているデジタルアート展のクリエイティブを制作していました。

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実際にその展覧会も見せてもらうことができたのですが、そのクオリティの高さは本物でした。

本来そこにはないはずのものがデジタル技術で表現され、その映像表現の美しさとインタラクティブ性を年齢や国籍、性別などを超えて誰もが体感できる。そんなデジタルアートに意義を感じているようでした。

人の心を豊かにするための手法として最新のテクノロジーが活用されている場合は無条件に「先進的」って呼ぶことにしよう。と私なりに勝手にルールを決めちゃいました。

そして

海外に家族で移り住み、志を貫いて形にしている友人のチャレンジングな姿に背中を押され、順番とか段取りとかとりあえず置いといて、まずはやれることやる、が正解!って気がした秋。でした。

アイスクリップでした。

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