見出し画像

拡大解釈しまくって、最高の自己紹介をする

こんにちは、いっちょです。

先日、学生時代の地元の友人と10年ぶりくらいに会いました。たまたま地元の何人かが集まる機会があるようだったので、僕も声をかけてもらいました。この年になっても誘ってくれる友人がいるのは幸せなことですね。

久しぶりに会ったということもあり、ここ数年どんな仕事をしているかという話題に移っていきました。すると友人の1人が

「大学卒業後からコンサル系企業でSEMを中心に担当し、その後医療系商社でいろいろ。副業で飲食店経営と人材系・不動産系の紹介をしてて…」


ごめんなさい、全く話が入ってこなかった。


その場は雰囲気で流されてしまったのですが、人材紹介も不動産仲介も資格が必要だから法に触れる可能性あるんじゃね?とも思いました。しかしせっかくみんなで集まったハレの場に水を差すわけにはいきません。

その時ふと思ったのですが、僕自身の経歴も「良い部分」だけを切り取ったら最高の自己紹介ができるのではないかと考えました。

しかし自己紹介でガッツリとウソをつくわけにはいきません。色々考えた挙句、僕は「拡大解釈」という言葉にたどり着きました。

=====
拡大解釈…法の語句、文章の意味適用の範囲を、通常よりも広げて解釈すること。また、法に限らず一般にもいう。※コトバンクから引用

=====
なるほど、拡大解釈。つまり事実を捻じ曲げない範囲で自分の都合のいいように解釈する、と。うん、行ける。拡大解釈を乱用して最高の自己紹介を作ってやろうではないか!

「拡大解釈」と近しい言葉に「盛る」という言葉があります。同サイトでは「大げさに言う」意味があるとされています。

https://kotobank.jp/word/%E7%9B%9B%E3%82%8B-509250

普段使いのイメージですと、「私には貯金が100万円ある」という事実に対して、拡大解釈では「私には貯金が8桁…とはいかないまでも7桁の貯金がある」という表現。盛るでは「私には貯金が150万円ある」という表現がそれぞれ当てはまるかなと考えます。

拡大解釈では、事実から逸脱しない範囲で異なる表現をする。盛るでは、事実を逸脱することも含んでしまう。そんな言葉の使い分けが存在すると考えますので、本記事では一貫して「拡大解釈」という言葉を使うようにします。

しかしいくら何でも拡大解釈ばかりでは読んでいる方に簡単に見抜かれてしまうはず。そこで適度に事実を交えながら、うまいこと要所要所で拡大解釈を活用してつくっていこうと思います。真実の中に混ざっている虚偽ほど、見抜きにくいものはないです。

それでは参りましょう。

================
<自己紹介>
こんにちは、いっちょと申します。

私は東京近郊で生まれ育ちました。いまの自宅は、都心まで40分ほどで到着するほどの好立地。賃貸ではありますがマンションの最上階に住んでおります。都心エリアに近いながらも大自然に囲まれた貴重なエリアで、自宅周辺をほんの数分散歩するだけで、全身にマイナスイオンを浴びることができリフレッシュできます。今でもこの街が好きで、生まれ故郷を忘れずに日々暮らしています。

小中学校は地元の学校へ、高校は「少しでも新しい世界で生活したい」という思いから、地元の友人が全くいない環境に身を置きました。大学受験には失敗してしまい、第一志望の学校に通うことは叶わなかったのですが、最後の最後でなんとか都内の某有名私大の法学部に合格することができ、日々勉強漬けの生活を送っておりました。

在学中のアルバイトは塾の講師をしておりまして、なんと小学校1年生~高校3年生まで全12学年の授業を全科目、経験したことがあります。塾だけではなく街中で生徒さんとたまたま会った時でも、「あ!先生こんにちは!」と声をかけてもらえるほど、生徒の皆さんと強い信頼関係を築くことができたのではないかと自負しております。
そのほか、大規模イベントのスタッフも経験しており、各国からイベントに参加する方に英語で案内をしておりました。

仕事はグローバルで商材を展開するデジタル系メーカーで1年強ほどプロモーション担当を、数年ほど人事担当を経験して参りました。
主な仕事現場は港区と中央区。会社の昼休みには近くの飲食店を頻繁に利用しておりました。六本木周辺や銀座周辺の飲食店に困ったときは、いつでも私を頼ってください。ランチからディナー、大規模なパーティーまでプロデュースして差し上げます。

しかしこの度、将来のキャリアをイメージしたところ、在籍中の会社では思い描いているキャリアが実現できないと考えたため会社を辞めてしまいました。私が会社を辞めるにあたっては、社員を合計で5人異動させてなんとか調整していただきました。
前職を辞めたばかりですが、将来のキャリアは明確にイメージできておりまして、それを実現するための充電期間としてここ数日を過ごしております。

休日の趣味は「NBA観戦」「モータースポーツ観戦」「お笑い鑑賞」「読書」とたくさんあります。なかなかすべてに時間を割けないというのが悩みなのですが、非常にぜいたくな悩みであることは自覚しております。
最近ではNBA観戦に関連して、国内プロバスケのBリーグの試合も観るようになりました。過去にも地元チームのホームスタジアムで生観戦した経験もあります。
他には腕時計を買い集めるのが趣味で、最近の好みは国内老舗メーカーの品です。特に好きなのはcitizenの「アテッサ」というブランドと、CASIOの「エディフィス」というブランド。どちらもその場で洗練されたデザインに一目ぼれしてしまい、思わず購入してしまいました。

…これはまだ誰にも言っていない、また特に言うことでもないのですが、コーヒーが大好きです。1度ハマってしまうと徹底的にこだわりたいタイプの人間なので、コーヒーは豆からとことんこだわります。一番好きなのは、グアテマラ国内で生産された高級コーヒー豆を使用した一杯。食後にゆったりとこだわりの一杯を楽しんでいる時間がたまらなく好きです。

些か、自分語りが過ぎてしまいました。
こんな私ですが、どうぞよろしくお願いします。

================


はい、いかがでしたか。

ここまで書いた内容は、拡大解釈を駆使するとまぎれもない事実ばかりです。

途中、我ながら「しゃらくせぇ~~~!!!」と思った部分もありましたが、丁寧に拡大解釈をしていくと事実なので思い切って書きました。

ではこの自己紹介文は何をどう拡大解釈して作成したのか、解説編をお送りしましょう。

=====

<解説編>

◇1段落目

「私は東京近郊で生まれ育ちました。いまの自宅は、都心まで40分ほどで到着するほどの好立地。賃貸ではありますがマンションの最上階に住んでおります。」

→間違いなく関東の県で生まれて育ちました。
自宅から都心までは、もう、本当に自宅から車で爆走して、駅入り口で車を乗り捨ててぎりぎりで電車に飛び乗れば、40分~45分くらいで東京23区内にたどり着きます。これらの条件を考慮すると一言も書いていませんが、ギリギリ事実です。

賃貸マンションの最上階に住んでいますが、3階建ての3階。駅からやや遠いためそこまで家賃も高くなく、タワマンとかではなく一般的な集合住宅です。


「都心エリアに近いながら大自然に囲まれた貴重なエリアで、自宅周辺をほんの数分散歩するだけで、全身にマイナスイオンを浴びることができリフレッシュできます。」

→家の隣にたまたま地元の地主が持つ畑があり、近所には森があります。自宅周辺を数分歩くだけで森に到着するので、完璧に事実です。あと私は在宅ワーク中に「まあまあの残業」をしていたため、近所にほんの数分散歩に行くことは非常に貴重な気分転換だと考えていました。近所の散歩だけでも私にとっては気分転換です。


「今でもこの街が好きで、生まれ故郷を忘れずに日々暮らしています。」

→正確には、親しい友人や家族がこの街に住んでいるので、相対的に街も好きになっている、くらいの非常に低い温度感です。友人や家族が引っ越したら僕も間違いなく引っ越します。
あとはただいい年をして実家暮らしをしているため、良くも悪くも生まれ故郷を一日たりとも忘れずに過ごしています。


…どうですか?1段落目だけでこの解説の量。

こりゃ他人が話をしている内容を全面的に信じてしまうと危険かもしれませんね。オーディションの選考官や、企業の中途採用担当の方は大変だこりゃ。

◇2段落目

「小中学校は地元の学校へ、高校は「少しでも新しい世界で生活したい」という思いから、地元の友人が全くいない環境に身を置きました。」

→完全な事実です。大事っぽく「少しでも新しい世界で生活したい」と書きましたが、こんなのみんな思っているでしょ。地元の友人が1人もいなかったのはマジでたまたまでした。


「大学受験には失敗してしまい、第一志望の学校に通うことは叶わなかったのですが、最後の最後でなんとか都内の某有名私大の法学部に合格することができ、日々勉強漬けの生活を送っておりました。」

→すべて事実です。ちなみに「有名私大」と書いていますが、ただ有名なだけであって「名門」「難関」ではありません。ただ名前だけちょっと知れているだけの大学です。勉強付けといってもあくまで相対的なものであり、自分で選んだ法律という学問がちょっと面白かったので「中学・高校生活と比較したら、まだ日常的には勉強している方」くらいの物量です。


◇3段落目

「在学中のアルバイトは塾の講師をしておりまして、なんと小学校1年生~高校3年生まで全12学年の授業を全科目、経験したことがあります。」

→塾といってもクラスを持つような集団指導塾ではなく、先生1人にMAX生徒3人という個別指導塾で働いていました。主に受検生・受験生が対象である塾であったため、基本的には中学3年生か高校3年生の授業を担当しておりました。それ以外の学年の生徒さんの授業は年に数回担当するくらいで、本当に「やったことがある程度」です。
ちなみに勤務の頻度は週に2回。全然もう毎日遊び歩いていました。

「塾だけではなく街中で生徒とたまたま会った時でも、「あ!先生こんにちは!」と声をかけてもらえるほど、生徒の皆さんと強い信頼関係を築くことができたのではないかと自負しております。」

→事実ですが、これは単にその生徒さんがものすごく礼儀正しい子だったというだけです。街中で遭遇したのが私でない他の先生であっても声をかけていたと思います。


「そのほか、大規模イベントのスタッフもしており、各国からイベントに参加する方に英語で案内をしておりました。」

→英語での対応はほんの一瞬です。しかも文法めちゃくちゃの雰囲気英語で「この道をまっすぐ行ってください」程度のもの。相手の方が少し日本語を理解できる方だったようで、相手の優秀さに全面的に助けられました。


◇4段落目

「仕事はグローバルで商材を展開するデジタル系メーカーで1年強ほどプロモーション担当を、数年ほど人事担当を経験して参りました。」

→はい、これは紛れもない事実です。等身大の真実です。
少し拡大解釈したのは「グローバルで商材を展開」という部分。一部の国と地域に対してはサービスを提要していますが、真のワールドワイドかと言われたら違います。


「仕事場は港区と中央区。会社の昼休みには近くの飲食店を頻繁に利用しておりました。六本木周辺や銀座周辺の飲食店に困ったときは、いつでも私を頼ってください。ランチからディナー、大規模なパーティーまでプロデュースして差し上げます。」

→港区と中央区が主な業務場所であったことは事実です。六本木や銀座駅近くの飲食店を活用していたのも事実なのですが、はなまるうどん・一風堂・個人経営の油そば屋・天下一品をヘビーローテーションしていました。周辺の飲食店に知見があるわけではありません。
知見はないですが、もし頼まれたら仕事だと割り切って、たくさん飲食店を調べて自力で下見して、その会合が成功するように努力しますのでプロデュースに関しても事実です。知見0からなんとか努力で成し遂げてやります。知見と自信はないです。


…いかがでしょうか。

段落が進むにつれて胡散臭さが増してきました。特にアルバイトのエピソードなど、相手が気を遣ってしてくれたことを自分の手柄のように平然と話しているのが、我ながら恐怖を感じます。

要するに自分は何もしていないのに、さも自分が何かを成し遂げたような書き方。意外と私、拡大解釈の才能があるかもしれません。


◇5段落目

「しかしこの度、将来のキャリアをイメージしたところ、在籍中の会社では思い描いているキャリアが実現できないと考えたため会社を辞めてしまいました。」

→等身大の事実です。ほかにたくさん理由はありましたが、主だった理由はこれでした。


「私が会社を辞めるにあたっては、社員を合計で5人異動させてなんとか調整していただきました。」

→事実ですが、これは私が退職を申し出てから実際に退職するまでに時間があったため、たまたまその期間で大規模な組織改編が発生しただけです。その組織改編で自分の周りの人員構成が大きく変動し、客観的に見ると私の退職と人事異動が関連性を持っているように見えなくもないという状況が生まれました。異動の目的の一つに私の代わりの人員補充もあったと思いますが、あくまで主たる目的は組織改編です。


「前職を辞めたばかりですが、将来のキャリアは明確にイメージできておりまして、それを実現するための充電期間としてここ数日を過ごしております。」

→無職が理由付けて遊んでるだけです。


◇6段落目

「休日の趣味は「NBA観戦」「モータースポーツ観戦」「お笑い鑑賞」「読書」とたくさんあります。なかなかすべてに時間を割けないというのが悩みなのですが、非常にぜいたくな悩みであることは自覚しております。」

→NBAはダイジェストで動画をちょっと見て、注目選手の成績を軽く調べる程度のニワカ。モータースポーツ観戦は競艇のことです。競艇が好きなので、「競艇でギャンブルしてクソ負けている」というクズテキストを極力オブラートに包んでみました。お笑い鑑賞はM-1などの賞レースだけ見る程度、読書は長編を読みたくないので、ショートショートのパイオニアである星新一さんの作品だけを狂ったように読み続けています。


「最近ではNBA観戦に関連して、国内プロバスケのBリーグの試合も観るようになりました。過去にも地元チームのホームスタジアムで生観戦した経験もあります。」

→Bリーグの試合は友人に勧めてもらって、会場で2試合観ただけです。現地観戦も、友人がチケットから当日のスケジュールまで全部用意してくれるっていうから付いていっただけで、実は自分自身の能動的なアクションはほとんどありません。


「他には腕時計を買い集めるのが趣味で、最近の好みは国内老舗メーカーの品です。特に好きなのはcitizenの「アテッサ」というブランドと、CASIOの「エディフィス」というブランド。どちらもその場で洗練されたデザインに一目ぼれしてしまい、思わず購入してしまいました。」

→デザインの美しさから腕時計を買い集めるのが趣味であることは間違いないのですが、実際に買ったことがあるのは2本だけ。それが「アテッサ」と「エディフィス」の2本です。

「アテッサ」に関しては100万円を超える品もありますが、私のは価格帯でいうとほぼ一番下の方。しかもアウトレットで購入したので定価の半額。それだけ比較的お求め易い品物でも、私は夏のボーナスが支給されたときに清水の舞台から飛び降りる思いで購入しました。デザインに一目ぼれしたというのは事実です。


◇7段落目

「…これはまだ誰にも言っていない、また特に言うことでもないのですが、コーヒーが大好きです。1度ハマってしまうと徹底的にこだわりたいタイプの人間なので」

→コーヒーが大好きなのは事実ですが、ここでいう「コーヒー」とは市販の缶コーヒーのことです。1度ハマってしまうと徹底的にこだわりますが、飽きるまで同じ商品を徹底的に買い続けるというだけのこだわりで、飽きたら全然違う商品を買います。

「コーヒーは豆からとことんこだわります。一番好きなのは、グアテマラ国内で生産された高級コーヒー豆を使用した一杯。食後にゆったりとこだわりの一杯を楽しんでいる時間がたまらなく好きです。」

→グアテマラ国内で生産された高級コーヒー豆を使用してつくられているのはこちらの商品。

ご存じの方もたくさんいるはず。「ボス レインボーマウンテンブレンド」。

紹介ページに書かれていたテキストを拝借して、それっぽく書いてみました。食後にゆったりとといっても、ラーメンを食った帰り道に自販機で買って飲みながら帰る、くらいのことです。自宅の洗練された空間で豆を挽いてこだわりの一杯を抽出する…なんて大それたことなど一切しません。ミルも持っていないですし、コーヒー豆を買った経験もございません。


=====


いかがでしたか?

こんな感じで自己紹介を作ってみました。


作ってみて思ったのですが、これ「どの箇所も一歩深く突っ込まれたらボロが出る」ことに気づきました。「モータースポーツ観戦って何観てるの?」とか「おすすめのコーヒー豆は?」とか。相手からの質問に回答しうる情報が頭の中にないのです。

つまり今後中長期的に良好な関係を築いていきたいと考える相手には、拡大解釈はしない方がいいのではないでしょうか。

また、自己紹介は端的に自分を表すことをビシッと伝えた方が、相手の印象に残ると思います。相手と打ち解けてから、一歩踏み込んだ話をするのがいいかと思います。

そうですね、ダラダラと自己紹介を書いてきましたが端的に自分を表すのであれば…

まあ、「無職」、でしょうね。


お読みいただきありがとうございました。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?