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握手してください④

親孝行

卒業式の話をする前にちょっと思い出した話。

高校3年間、いや、中学から6年間、私は自転車で通学していた。

ふと考えると、とんだ親孝行娘だな…
だって6年間約7,000円の自転車だけで通学していたのだから。
それに一度もパンクしていないので、修理代もかかっていない。
ね?親孝行(受かった高校が近かっただけの話)。

登校一番

昔、3923が朝の教育番組で
誰が一番に学校に登校してくるか、というコーナーをしていたのを
たった今、思い出した。

♪ 登校いち~ばん~

なんの話?である。

ちなみに私は、頭は悪いが根は真面目なタイプで
勉強はするタイプ、ただ、頭に入っていないだけで。

そんな私が高校3年生の時に習慣としていたのが
夜22時には寝て、朝5時に起きて6時半には家をでて学校へ行っていた。
学校に到着するのは7時前くらいだろうか。
福岡県特有の朝課外、0限目が7時半から始まるので
約30分、教室でゆっくりと過ごす。

その日は、本当にたまたま見かけた。

先生の車、色だけは覚えていた。
詳しくないので当時車種までは知らなかったのだけど。

朝早い車もほとんど通らない田舎道、
片足をペダルにかけて横断歩道の信号が変わるのを待っていた。

青になったことに少し遅れて気づいて
ペダルを漕ごうとしたとき、右側からゆっくり左折してきた車がいた。

あ、やば

慌ててブレーキを握って車のほうに目をやると黒い車、
そう、先生だった。

思わず笑顔になる。

ぺこっと頭を下げて横断歩道を渡る。
後ろを振り向くと私たちしかいない交差点で車の窓を開けた先生が

先「ちい!おはよう!気をつけろよ!」

そのまま高校へ向かった。

ホットレモン

卒業も間近になると、日課にしていることがあった。
職員玄関の入口にある自動販売機にだけある飲み物がある。

自転車を止めて上靴に履き替え、財布だけ持って歩く。

自動販売機にはお目当ての飲み物が一度も売り切れずに残っていた。

ガコン

誰もいない静かな廊下に響く音、と同時に

「うぉっ、びっくりした~」

と声が聞こえた。
いや、私のほうがびっくりしたんですけど。
声がしたほうに目をやると、先生だった。

先「ちい、早いな~いつも」
私「先生おはよ~」
先「早く来て勉強しよると?」
私「いや~のんびりしとる」
先「のんびりかい(笑)」
私「ん~まあ、早く来たら先生に会えるかなと思ってさ」

おい、私やるじゃないか、ぐいぐい行くじゃないか。
先生は「ありがと~」と笑いながら職員室へ向かった。

とある日は飲み物を買う前に先生と会うこともあり
飲み物を買ってくれることもあった。

先「ちい、こればっかりやね、ホットレモン」
私「甘酸っぱくておいしいよ」
先「じゃあ俺も買お~」

嬉しかった、ドキドキした、朝の私と先生だけの会話。

他の誰も、聞いていない私たちだけの話。

先生、私、先生のこと大好きだよ。

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