アドルフ・ロース『装飾と犯罪』
(タイトル画像は『ゼロからはじめる[近代建築]入門』原口秀昭、彰国社より)
タイトルは『装飾と犯罪』となっているけれど、「装飾は犯罪」というのがアドルフ・ロースの主張。ゴテゴテ飾り立てたり、イミテーションの素材を使ったりする“虚飾”を徹底的に排斥する。
そこには近代的思考(モダニズム)の徹底がある。合理的、理性的であることに何よりも価値をおくモダニスト。
コルビュジエやデル・ローエほどの知名度はないように思う(僕が知らなかっただけ?)けれど、訳者にも恵まれて愉しく読める。
文章から、やや偏屈で頑固で変わり者なロースのキャラが立ち上がってくる。実際に近くにいたらあまり親しくさせてもらいたくはないなあとも思うけれど、好きな人や良いと思うものを力の限り絶賛し、気に喰わない人やつまらないと思うものには全力で喰ってかかる。訳者のあとがきでドン・キホーテのよう、と評されているけれど、まさに言い得て妙。
建築論が多く収められているけれど、友人を悼む文章などは、情に厚い人だったのだなというのが伝わり、無味乾燥な評論集とは一線を画している。
先日姫路市立美術館で隈研吾の展覧会を観たのだけれど、隈のデザインがポスト・モダンであることがよく伝わる展覧会だった。
モダニズムを知ればポストモダンも分かりやすくなる。
この『装飾と犯罪』は、モダニズム建築の精神を理解する上でとても良い入門書だと思う。