rootらしいDXプロジェクトマネジメントとは? 水曜日のDXデザイン #4
日頃からDXに向き合う方々から、DX推進における現場での取り組みに関するお話を聞けるイベント「水曜日のDXデザイン」。Chatwork株式会社の坂田さんがモデレーターを務めた第4回において、ゲストスピーカーとして、FAKE Inc.の岡崎耕太さんと共に、rootの代表取締役である西村もお招きいただきました。
スタートアップから大手企業まで、様々な企業のDX推進をサポートする上で直面したリアルな悩みや、その乗り越え方について議論が交わされたイベントの模様をレポートします。
自走を目指した、顧客起点の開発体制構築
坂田:本日はよろしくお願いいたします。まずは、理想のDX推進プロジェクトの進め方についてお伺いできればと思います。お二人とも、新規事業の立ち上げやDX推進をクライアントないに入り込んでサポートしていらっしゃいますが、目指すべき理想の姿というものはあるのでしょうか?
西村:クライアントが自ら考えて動かしていける状態、つまりプロジェクトが自走できる状態というのが理想だと考えています。当然、立ち上げ当初は負荷もかかりますので、我々も力を入れて関与しますが、それはサポートという立場。あくまで主役はクライアントであるという視点を忘れずに取り組んでいます。
坂田:きちんと立ち上げを成功させつつ、自分たちで巻き取るのではなくサポートに徹する。線引きがなかなか難しいように思うのですが、そのコツや実際の取り組み事例として共有できるものはありますか?
西村:そうですね、弊社では立ち上げ初期に、クライアントの顧客情報やカスタマージャーニーを書き出してもらうという手順を踏むことが多いです。UXデザイナーがインタビューして綺麗に落とし込むのではなく、クライアント自身に書き出してもらう。自分たちで言語化することで、どの部分の解像度が荒いのかが見えてくる。それがそのまま検証するポイントになるんです。現状理解や構想、仮説も含めて可視化していくということがデザイナーに求められているのかなと思います。
坂田:デザイナーが介在して、クライアント内で曖昧になっている思考をビジュアライズすることで、仮説の抜けている部分が明らかになったり、チーム全体の解像度が上がったりしていく。たしかに、デザイナーの強みを活かしたサポートの形の一つですね。岡崎さんはいかがでしょうか。
岡崎:西村さんの言う通り、最終的には自走してもらうのがゴールになると思っています。そのための障壁を取り除くことは私も意識しています。例えば、クライアント内のコミュニケーションの円滑化。コミュニケーションが非効率的になり、本質的でない報告や連絡に時間を取られてしまうと、モチベーションが下がってしまう。それでは現場が自分で動かしていこうという推進力を削ぐことになりかねませんから。
坂田:おっしゃる通りですね。具体的にコミュニケーションを円滑にするコツや意識しているポイントは何かあるのでしょうか?
岡崎:一番は上層部をいかに現場に巻き込むかという部分だと思います。日々の進捗まで確認してもらえないとなると、どうしても定期報告で確認をとる必要が出てくる。ただ、報告のための資料作成にばかりリソースをかけていては本末転倒なので。
西村:本来であれば上層部もFigmaに入ってくれるのが理想ですが、なかなかそこまでは難しいですよね。そのために、会議体の設計を工夫するのも一つの手かもしれません。報告でしか上層部と接点を持てないというのはかなり不健全なので。報告で上がってくるのは数字や事実情報がメイン。ユーザーのリアルなインサイトをはじめとした、数字の背景にあるものも見てもらえないと、歪みが生まれてしまいますしね。
戦略と実践の両輪で、学びのサイクルを高速で回していく
坂田:最終的にはクライアントが自走できている状態を作り出す。そのためにも、コミュニケーションをはじめとした障壁を取り除いていく。そんなお話でしたが、他にも何かプロジェクトを進める上で意識されていることはあるのでしょうか。
西村:プロジェクト成功のためには実践の中で学び、その学びを次の実践へと生かしていくことが大事だと思っています。この学びは、成功だけではなく、失敗から得られるものも大きい。だから、いかに小さい失敗をたくさん経験できるか。それができる体制を作れるかということは意識しています。
坂田:失敗経験を積むことができる体制とは、どのようなものなのでしょうか。
西村:まずはアジャイル的に立ち上げるということでしょうか。立ち上げ当初から大きく予算を張って、人員も大人数アサインしてという形で始めてしまうと、失敗した時のリスクが大きくなりすぎてしまう。最初から失敗をある程度前提にしながら、それでも修正が効くような予算感や規模感で始めることが大事かなと思っています。
坂田:たしかに企業規模が大きくてリソースが豊富な企業ほど、プロジェクトを成功させたい気持ちが先走り、いきなり大きく始めようとしてしまう企業が多い印象はありますね。
岡崎:そうなってしまう大きな理由に、プロジェクトの目的が明確に定めきれていないということも挙げられると思います。DXという言葉がバズワード化しすぎてしまっていて、「どうやら、DXした方が良さそうだぞ」という理由でなんとなく始めてしまう企業も多いように感じます。
坂田:新聞やネットニュースでもDXという言葉を見ない日はないのではと思うほど、大きなムーブメントになっていますよね。
岡崎:ただ、DXと一口に言っても、新規事業の柱を作ってトップラインを上げていくのか、既存システムのレガシー化に伴う負債やコストを一掃して財務体質を正常化していくのか。目指すべきアウトカムは企業によりけりだと思うんです。そこを定義せずに走り出してしまうと、とにかく予算と人を張ればうまくいくだろうと思い込んでしまい、結局は道を見失ってしまうことになる。目的を明確化するなんてことは当たり前だと思われるかもしれませんが、意外とそこを疎かにしてしまって躓くケースが多いように思いますね。
坂田:なるほど。目的を明確に定め、トライアンドエラーを前提とした体制を構築することで実践の中で学びを得られる状態を作っていくことが重要なんですね。
顧客担当者の熱量を広げることで、プロジェクトに推進力を
西村:今までどんな体制を作っていくべきかというお話をしてきましたが、やはり最後は人。どんな戦略を立て、どんな体制を作ろうとも、プロジェクトを推進していくのは現場の担当者です。彼らがどれだけプロジェクトに対して熱量を持てるのか。それ次第で動かせる物事の範囲が大きく変わってきますし、自走へ移行する難易度も変わる。プロジェクトの成否を左右するといってもいいのではないかと思います。
坂田:どれだけ素晴らしい仕組みを作っても、担当者にやる気がなければ絵に描いた餅で終わってしまいますからね。そのキードライバーである担当者の熱量を上げるには、どんな方法が考えられると思いますか。
西村:明確で強い目的意識を持ってもらうことかなと思います。何のためにプロジェクトを進めていくのか、その先でどんなことを実現したいのか。そこがぼやけていては、熱量も上がりません。だから、デザイナーが壁打ち役となって、担当者の頭の中にある漠然とした目的や理想をビジュアライズしてあげる。そして、その目的を現場に濃く共有する為にも、冒頭話したように人数を絞ってアジャイル的に始めるのが大事なんです。
坂田:なるほど。先程のアジャイル的にプロジェクトを始めるということも、ここにつながってくるわけですね。
岡崎:そういう意味で言えば、コミュニケーションの効率化という話も、西村さんがおっしゃってくれた部分に通じているように思います。クライアント内で上司への報告や相談、部署間の連絡等、本質的でない情報共有があまりにも多いと、必然的に現場の熱量も下がってしまう。それを避けるためにも、先ほど話したように上層部を巻き込んだり、あとは報告の際に説明資料を作成しなくても済むようにして、無用な連絡工数を下げることは熱量の維持に繋がると思っています。
坂田:お二人が今日お話しいただいた内容は、全て有機的につながっているんですね。どれか一つを実施すればいいというわけではなく、これらを複合的に実施していくことで好循環を回し、プロジェクトを軌道に乗せていく。そのサポートをしていくということが大切なのだとわかりました。お二人とも、本日はお忙しい中、本当にありがとうございました。
まとめ
rootの担っている役割は、顧客起点での事業開発体制構築を支援し、実践と学習のサイクルを回しながら自走へと導くこと。
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組織を拡大、成長させるフェーズでもありますので、組織づくりにチャレンジしたい方は是非エントリーください。
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