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世界で紛争や戦争が起きている時の子どもとの関わり

ウクライナ・ロシア情勢が刻々と変化する中で、子どもたちもニュースでそのことを目にする機会や、大人が話すことを耳にする機会が増えているかもしれません。

私たちが自分なりに社会で起きていることを受け取っているように、子どももその子なりに起こっていることを受け取っています。受け取ったことをどのように認識するか、どのように対処するかは年齢や発達により、そして一人一人違います。

いつもと違う状況やニュースなどで知ったことに関しての疑問や不安を、「大人に何度も聞く」といった形で表現する子もいれば、遊びで表現する子やもいます。大人から見ると「困ったなあ」と感じる行動や、「赤ちゃん返り」しているように見えるような、いつもと違う様子に見える状態が、その子なりのサインである場合もあります。

大きな危機が起きた時、私たちの心身は、その危機に対応しようとします。そのサインとして、さまざまなサインがみられます。それはとても自然なことで私たちの力でもあります。

このような時に子どもに起こること、そのことに対して子どもと共にできる共有します。

1、子どもは、どんな時に社会の危機を受け取るの?

・自分の生活がいつもとは変わる                      ・戦争のニュースでの生々しい映像など、強く印象に残るいつもと違うニュースが流れる。そのことに対して大人の様子もいつもと違う                   ・過去怖かったことを思い出すようなニュースや話題が身近で話される、流れている                               ・見通しがつかない 
・ルーティンでやっていたことが変わる
・突然イベントがなくなる
・いつもいっていた場所にいけなくなる
・周りの雰囲気がいつもと違う。     
など(今回はウクライナ・ロシアの影響においてを念頭に記載していますが、一般的に不安を感じる時は、ここに書いているものだけではありません)


今回のような状況で、お子さんが「何かいつもと違うことが起きている」と感じるのはとても自然なことです。

2、危機をしったり体験した時は子どもにどんな変化があるの?

子どもたちは、言葉で伝えてくれる以外に、行動や身体、心を通して様々な形でサインを出してくれていることがあります。これらはその子なりに今起こっていることに対処しようとしているその子の力でもあります。

・いつもできていたことをやらなくなる
・ぼーっとする
・おねしょが増える、頻尿になるなど
・ご飯の量が減る/寝つきが悪い、途中で目が覚めるなど
・腹痛などの身体の症状
・いつもより甘える、一人でいるのを怖がる
・会話が減った、なにか言いかけてやめるなど
・いつもよりこだわりが強くなる、なんども同じことを聞く、やる
・いつもより落ち着きがなくなる、そわそわする、イライラしやすい
・兄弟などとの揉め事や喧嘩が増えた、何かや誰かに当たる
・勉強に集中できない 
など(ここに書かれているものだけではなく、様々な形でサインを出しています。是非子どもの調子がいつもと比べてどうかを丁寧にみてください)
        

危機に対応するために過覚醒になることもあります。  

低年齢であればあるほど、言葉以外で表現する頻度が多いかもしれません。また、周りの状況を繊細に見て、自分の不安や悲しさ、恐怖、疑問などを表出せずに、我慢しているお子さんもいます。一見何もないように見えるからといって、何も感じていないというわけではないこともあります。

また、子どもは遊びの中で様々なことを表現します。見たニュースを「爆弾ごっこ」「ミサイルごっこ」のようにあそびで再現することもあります。

保護者も新型コロナウイルスに関しての対応、新年度が始まるにあたっての準備など、戦争のことも気にしながらも日々さまざまなことに対応しており、保護者だけでお子さんに気を配るのは物理的にハードルがあります。
なので、保護者の方だけが頑張るのではなく、複数の大人の目で子さんに関心を向けていける環境を周囲が一緒につくっていくことも大事なことの一つです。

3、子どもにどんな関わりをしたらいいの?

①心と身体の変化に目を向ける
・いつもと違う状態や行動に気を配る
・子ども自身、自分でもどうして良いかわからないと感じていることも。大人からみたらいつもよりできないことが増えたように見えても、急かさず、子どもが何に困っているのか丁寧に観察する
・子どもなりに対応していること、やっていること(子どものレジリエンス)にも目を向ける。
②子どもに対する声がけ
・子どもの感情を言葉にして受け止めてみる
(例:悲しかったんだね。嫌だったね。嬉しかったね。楽しかったねなど。)  
・自分の感情に自分で気づくことが難しいこともあります。子どもの身体の状態を手がかりに気持ちを探ってみるのも一つの方法です。
(例:「顔があついね」「いつもよりドキドキしてるんだね」「いつもより身体がかたくなってるかな」など。「怖かったね。心配になったね」など感情を共有する)。
・できるだけ肯定的な言葉がけを心がける。大人からみたら当たり前だと思うことでも、子どもにとってはとても頑張ってやっていることも。
(例:「歯を磨いたんだね」「着替えたんだね」と当たり前に目を向けて言葉にして伝える)
③生活の工夫
・可能な限りで子ども自身が日常で選択できる余地を作り、選択をまずは受け止める。(その上でもしその選択が叶わない場合は違う方法を提案したり一緒に考えたりする)。
※子どもにとって自分の意思ではどうにもならないことが続く時は、子どもが小さくても決められることをつくってみるのも大切なことの一つです。
・日々の中に、小さな楽しみや、ほっとできる時間をつくってみる
・身体をケアし、リラックスする時間をつくる
(例:深呼吸をする、手をぎゅっと握って開く、触られるのが嫌でなければ背中をマッサージするなど)
・大人と一緒に情報から離れて、違うことをする時間をつくる。好きなことを大事にする。
・普段と変わらずにできることは、可能な限り無理がない範囲で続ける
※規則正しい生活(いつもと同じように同じ時間に寝る、ご飯を食べるなど)は安心感につながります。
・遊ぶことや身体を動かせることはとても大切なことなので、可能な範囲で取り入れてみてください。
④遊びに対して
・まずは無理に止めずに見守りましょう。苦しそうに同じ遊びを何度も何度も繰り返す場合、遊びが何度も悲しい結果に帰結する場合、良い形で遊びを終えられるように一緒にサポートしてみてください。

いつもより保護者に「見て見て」と共有することが多かったりするかもしれません。体験を共有し、感情を受け止めらることは、子どもが危機を乗り越える上でとても大事な体験です。

ただ、「見てみて」に対してその体験や感情を受け止め共有することがすぐに叶わないこともあります。そんな時は、「見せてくれて嬉しいな。ありがとう。〇〇時になったら(時計の針がここまでいったら)見るね。」と声をかけて、一緒に体験や感情を共有し受け止める時間をつくったり、子どもと一緒に「みて欲しいもの」を置いておく宝箱や、秘密の場所などを考えて、その箱を開ける時間を決める、なども一つの方法です。

4、起こっていることについて子どもに伝える時

大人にとっても予測が難しいことも多いかと思いますが、今起こっている事実を子どもの年齢に合わせた言葉で丁寧に伝えてみてください。

・もし、わからないことがあった場合も、ごまかしたり、嘘をついたりせずに、「自分もわからないこと」を伝え、「もしわかったら伝えること」を丁寧に伝えてください。
・見通しがつかないと、なんども同じことを聞いてくるかもしれません。そんな時は、できる限りで同じことを繰り返し丁寧に、穏やかに伝えてください。

繰り返し聞かれることに対応する時間や気持ちの余裕がないことがあるのも自然なことです。そんな時は、「言ってくれてありがとう。」と伝えた上で、気になることを聞く時間を決めて、「その時間を気になること言ってね時間」にする/もし文字が書けるお子さんであれば、「気になることノート」や、「気になることボックス」を作って、ノートに書く、ボックスに気になることを書いた紙を入れるなどして、書いたものに答える時間を作る、あるいは書いたものに言葉で返信するなどをしてみてください。

子どもへの対応や関わり、話の伝え方については、セーブザチルドレンが出されているこちらもぜひ参考にしてみてください。

5、最後に

子どもに関わる大人自身も、気づかないうちに疲れていることが少なくありません。

過去の体験をニュースの映像で思い出し、苦しくなったり涙が出たり、呼吸が浅くなることもあるかもしれません。それもとても自然なことです。ぜひ情報から離れて、深呼吸したりストレッチをしたりとリラックスする時間を数分つくってみてください。(できる範囲で、無理をせず)

また、子どもも子どもに関わる大人も、このような状況でもできていることがたくさんあります。ぜひ当たり前にやっていることやできていることに目を向けてください。そして、自分の中にある感情を大切に受け取ってください。



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