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たまにはゆるふわな話でも。

 相変わらず書きたいものが多い。多すぎる。

 鋭意構想中のお仕事ミステリィもの以外に、文学フリマ向けの短編集、それ以外にも数作品ある。
 しかし本業も多忙を極める中、それらの執筆候補をいっぺんに書けるはずもなく、ここのところやきもきする毎日を過ごしている。

 さて、いきなりだが、私は空耳をすることがたまにある。
 人の話をちゃんと聞いていないわけではない。
 むしろ意識的に耳を傾けようとしているのだが、それでも空耳をすることがある。

 先日、コンビニへ向かう途中で、1人の欧米系男性とすれ違った。
 少し肌寒い早朝のことである。
 年のころは30歳前後であろうか……その男性とは知り合いというわけではなく、正真正銘ただの通りすがりだ。
 彼との距離が狭まるにつれて、何かつぶやいてるな、ということに私は気づいた。
 そして、すれ違いざまに彼の声が耳に入ってきた。

「あざぁす……あざぁす……」

 すれ違ったあと、私は思わず振り返って彼の後ろ姿を見つめた。
 私の視線に気づくことはなく、彼は少し前かがみの姿勢で去っていった。

 ――勘違い?
 いや、私の耳にはたしかに「あざぁす……あざぁす……」と聞こえたのだ。
 彼は誰かと一緒に歩いているわけではなかった。
 イヤホンなどを付けて電話をしている様子でもなかった。
 彼は、虚空に向かって御礼を言っていたのだ。
 どう考えても「あざぁす……」なのだが、もしかしたら「さむぅ……」などの空耳だったのかもしれない。

 彼が一体何に対して御礼を言っていたのか、いまだに謎である。
 それとも、遥か遠くの故郷で彼のことを待っている恋人『アザース』へと想いを馳せていたのだろうか(?)。
 それはまた、別のお話――。

 あ、オチは特にない。
 たまにはゆるっとふわっとした話でも、ね。


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