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「夏休み」から日本のアジャイルを考えてみる

こんにちは、日本IBMの守谷です。ここでの記事は2回目となります。前回の記事もよかったらご覧ください。
私はIBM内ではPMCoE(Project Management Center of Excellence)というIBM内の分科会でAgileの推進を行うタスクチームに所属し活動をしています。その中では、アジャイル資格の取得の推進や社内向けのアジャイルスキルアップなどを進めています。
資格の取得推進などを考える時に、各資格の取得率や状況を調査するのですが、最近思うのは、日本の中でのアジャイル資格の取得数は確かに向上しているものの、言われているほどアジャイルって根付いていないのではないか?ということです。

日本でのアジャイル資格の取得者は、数ではある程度の数があるものの、人口割合などからみると、他国に大きく水をあけられているという情報もあるようです。近年では特に、シンガポールやベトナム、香港、台湾といったアジア圏の国々がアジャイル資格取得者数を引き上げているのに対して、割合的には日本が全然追いついていないようなのです。これだけをとって日本でアジャイルが根付いていないというつもりはないのですが、やはり近年アジャイルを強く推進できている他国に比べると、どうしても見劣りする感が出ています。

そんななか、以前に私の経験したことが上記を考える上で少し関連するかもしれないと思い、書いてみることにしました。失敗談なのであまり話したくないものですが・・・

以前の記事「Scrum at Home〜スクラムは我々の生活を良くしてくれるのか〜」でも子供にアジャイルをさせてすごい!と言う話をしていますが、うまくいった話はよく聞くのですが、失敗から学ぶのもアジャイル、ということで、失敗の経験から何を学んだか?何を考えたか?と言う点に焦点を当ててみようと思いました。

我が家のお休みの計画は

我が家では、毎年夏休み、冬休みには、宿題や習い事、ラジオ体操や出かける予定といったものをスケジュール化し、スケジュールをもとに宿題の進捗確認も行うといった活動を行なっていました。
ちょっとウォーターフォールっぽい感じの進め方です。

  1. 宿題は、何ページずつ進めれば終わるか確認して毎日の進めるべきページ数を定義する

  2. 自由研究はお題の検討、調査、実験、まとめに分けて、それをどの程度の日数で実施するか定義する

  3. 毎日のランニングや縄跳びなどはいつ実施するか

  4. 風呂に入る時間はいつにするか

  5. 長期間のお出かけについてはあらかじめ予定に組み込みそこでは何か実施するか、しないのであればそこには勉強などの予定は入れない

  6. 読書は毎日何ページくらい読めば良いか定義する

などを行い、毎日どの程度できているか確認しながらできなかったらどの日のタスクを増やすか(リカバリープランですね)を考えるといった進め方をしていました。

これらは、ある程度うまく行くこともありますが、まぁ完全に予定通りとはいかないもので、予定に合わない時にスケジュールをもとに話をしようとするとプレッシャーから逆に進捗が落ちるなどもありました。
ただ、終わるべき日程は見えているので、渋々進めていく感じではありました。

アジャイルみたいに進めてみたら?

そして数年前、一度アジャイル的なやり方に変えてみてはどうか?と思い立ち、カンバンボードを作成し、タスクをポストイットで作成しました。

  1. 毎日やるべきタスクを確認しポストイットに起こす

  2. 予定・やること・実施中・完了 の4つに分けたタスクボードを作成する

  3. ポストイットを「予定」にはる

  4. 毎日朝に、その日にやることを「やること」に移し、実施前に「実施」に移動、完了したら「完了」に移動、繰り返し実施は翌日の朝に、「予定」に戻すか「やること」に戻す

  5. 新しいタスクが出てきたら、「予定」に追加

  6. 毎朝、昨日やれたこと、やれなかったこと、今日やることを確認し、タスクを「予定」から「やること」に移すようにしました

  7. 2、3日に一度は、できたことはなにか、良かった点は何か、うまくいかなかったことは何か、どうすれば次回うまくいくかを考えるようにしました(本来1週間にしたいところですが、夏休みは5週間なので、最初はとにかく早めのサイクルで回すようにしてみました)

といった流れを用意し、最初の1日は、一緒にタスクを動かし、翌日から子供に実施させるようにしました。(6,7あたりは一緒に実施しています)
すると、3日くらいまではなんとか進めていたポストイットが、徐々に動かなくなり、結果としては完全に停止してしまったのです。

な、なぜ???

という疑問はあるものの、当時は、宿題や自由研究などやらないといけないことが溜まる一方。出かける日程もあったし、休みの終わりも決まっている、どうしたものか?と言うことで、結局スケジュールを引き直すことに。そして、いつものスケジュールパターンに戻すも、浪費した時間が戻ってくることはなく、後半が大変なことになる夏休みとなってしまいました。なんとか学校開始に間に合わせることが・・・・できず・・・・一部遅れて提出という惨事となってしまいました。(TT)
カンバンボードは連絡ボードに変わり、お知らせを貼るだけの板になってしまいました。

では、なぜ、失敗したのか?

当時は、どうやったらできるようになるか?やどうすればやってくれるかな?などを考え、手を替え品を替え、いろいろ話をしてみたものの、うまくいかず断念するに至りました。
振り返って考えてみると

  1. チームではなかった(作業は子供だけ、ScrumMaster的に私が入る感じ)ので、どうしてもやりたくないことには着手しづらい

  2. 休憩はタスクになっていないので、やらなければいけないことは決まっていても、休憩時間を多く摂ってしまい結果として実施できない(スケジュール管理の時には、休憩時間も時間ベースで定義しているので、その通りに動けば良かった)

  3. タスクを親がある程度作ってしまったので、どうしてもやらされている感が出てしまった

  4. 振り返る時に、あまりにもできていないので、つい、どうしてできなかった?から聞いてしまい、子供がやる気を失っていった(もともとやる気があったかも疑問ですが)

  5. 今までスケジュールを引いてそれに沿って進めていたものが、急に自分で考えて進めてみてと言われ、開放的になってやらなくなった

あたりが原因ではなかったかと考えられます。

どうすれば良かったか?

  1. 友達と一緒の環境で勉強できるようにする

  2. まずはやりたい、やろうという気持ちが出てこないことには始められないので、これをどうするか子供と話をして考える(楽しく取り組める方法を考える)

  3. タスクの作成から子供に考えさせる

  4. できたところを見つけてそこからできなかったところを少しだけフォローする

  5. 夏休みだからということで急激な対応にならざるを得なかった部分はあるもののもう少しソフトランディングを目指すべきだったかなと思います

などができる対応なのかもしれないと思いました。

1についてはどうやって?という疑問があるかもしれませんが、最近はLINEで友達に勉強を教えたり教わったり、会話しながら進めたりしているので実は家で勉強していても友達と一緒にと言うことも可能になりそうです。
数人で話しながら勉強をすると勉強が進むのだといっていましたので、そんな対応も考慮に入れていくと一緒に進めるといった感覚が持てて進みやすいのかもしれないと思いました。

2については、今の所特に良い案はないのですが、この気持ちを作るのは、仕事においても子供の勉強においてもとても重要なのだと実感しました。

3は2の気持ちを作るのに必要な手段かと思います。

4はこれも仕事も大事な感覚で、できない部分を問いただしてどうすべきかを考えてしまいがちですが、良かった点からなんとか広げていけるようにしていくことが大事だと感じました。

5は通常の開発現場でももしかしたら同様のことが起きているのかもしれないなと思いました。今までスケジュールをPMに管理されそれに沿ってやってきたメンバーがアジャイルだからと自律的に動くようにと言われ戸惑っていたりするのかななどと思いました。

ここまで書いていて、失敗の原因の一つは、親目線だとどうしてもやりなさい!が先に立ち、できなければなぜできないのか?と問い詰めてしまうところが出てきてしまう部分はあったのかなと思います。
一方で、物事に対する考え方(失敗を改善してできないことを減らしていく)がうまくいかなかった原因になっているのかもとも思いました。これは日本人には割とありがちな考えなのではないでしょうか。

そして、何よりも自主性を重んじるアジャイルでは、開発者となるべきチームのメンバー(ここではうちの子たち)が、やりたいと思えるような環境づくりが大事なのではないかということに改めて気付かされた出来事でした。

実際の開発では?日本だと?

1については、実際の開発ではチームメンバーもいて割と実現できているものであり、今回の夏休み特有の課題なのかなと思います。

2については、やりたい、やろうという気持ちが出てこないとどうしても自主的に進めるというところに至らないという点では社会での業務や開発作業でも同じことだと思います。ただ、社会で活動する上では責任感というものも関係してくるため、かろうじて責任感で自信を奮い立たせて仕事を進めているという人は多くいるかと思います。しかし、海外のアジャイルチームの話を見たり聞いたりする限りでは、責任感に依存するよりも楽しく進められる環境を作っているように見えるため、日本でももう少し楽しく作業ができる環境が作れれば良いのかなと思いました。
WFの場合は期限があり、そこへのコミットが重要となるため、責任感の方が重要になってくる一方、アジャイルで進める上では楽しく快適に作業ができることも重要な要素になるのだと思います。

3については最初のタスクについてはやはり親が作る必要があるが、それでも一緒に考えたり、もっと子供に考えさせることができれば、2の解消にもつながったかと思います。このためにはVisionの共有が必要であり、共有されたVisionを持てれば一緒にタスクを考えることも可能になってくると思われます。タスクを共同で作成するということは、開発作業でも同様で開発者がタスクを自分のものとして考えられるようになるためには自分で考えタスクを用意することが必要となってくるのではないでしょうか。またはそのタスクを自分のものと考えられるようなVisionの共有が重要となるかと思います。ただ、実社会では、ステークホルダーの意見が強く、どうしても押し付けられたタスクという感覚が多くなり、モチベーションの低下につながってしまいがちかなと思っています。

4は、私が親だったからこう考えたという以外にも、日本人は特にやってしまいがちなのではないでしょうか。品質を上げるために不良品を取り除き不良の発生原因を特定し、とにかく不良率を下げることを是としてきた社会であるだけに、どうしても考えが間違いの原因を探すところによりがちなのかなと思います。実際に研修などを実施した際に、レトロスペクティブを実施しても、良くなかった部分とその改善点などの話が多くでてくる、あるいは最初に出てくることが多く、なかなか良かった点、伸ばしたい点を話すことができないチームが多いのです。

5は、いきなりの環境変化に対応しきれなかったという点で、実際の開発現場でも少なくない数発生しているかなと思います。

いろいろ上げてきましたが、日本と括ってしまうと、そんなことないという方もいるかと思いますが、依然としてこのあたりの感覚を持っている人が多いことも事実で、この辺りの感覚を変えていかないと、アジャイルの定着というのはなかなか難しいのかもしれないのではないでしょうか。


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