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〚詩〛時計

黄ばんだ壁に掛かる酸化の進んだ時計は
耳障りな音を立てて動きつづける

最近では、どこに居ても音がする
ずっと耳珠に手を掛けて
奥に向かって リズムよく囁きつづけるように

もっと最近では、この時計に
目があるような気さえしてきた
一分一秒観察し つまらない記録を取りつづける

いっそ蔑まれたほうがマシなほどに
形のない痛みを与える憐れみの目は
導火線の近くで
  火をゆらゆらと焦らされているようで

我慢できずに 時計の
錆の目立つ秒針を 指で止めようとした

耳障りな一定のリズムを崩さず
指の肉を切り裂いて そ知らぬ顔で
時計の針は通り過ぎた

この時計が
先に止まることはない 
おそらくそろそろ止まる頃合だとしても
止まったところを見られることはない


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