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〚詩〛白の城

そのあたりの腐葉土を固めて造った
粗悪な住居の少年は 望遠鏡で対岸を眺める
まばゆい白は太陽光を これでもかと撥ね返して
思わず目を細めてしまうほどに煌いている

きらきらした白の城が
うらやましくて うらやましくて
惨めになると知りながらも うらやましかった

日課の望遠鏡が 白の中に 小さな黒を捉えた
たった一粒がすぐに大きな風呂敷のようになって
またたくまに 城は黒に染められていく

少年は 粗末であろうとも 落葉も虫も棲む
自然が薫る土の家で 充分であると知った

対岸の、白くまぶしい砂糖の城は
たちどころに群がる蟻に 喰い尽くされた


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