見出し画像

「誰のために働くのか」の個人的考え

先般、大学院のリーダーシップ論のクラスにて、「誰のために働いているのか?」という命題があり、クラス内で色々と意見交換がされました。個人的には面白い命題だなと思って、私なりの考えを整理してみようと思い、つらつら書いている次第です。

ちなみに、なぜこれが個人的に面白い命題と思ったかというと、回答に、その人自身の考え方が色濃く出るからです。大学院のクラス内でも様々な意見が挙がっていて、僕個人としては、考え方の引出しが増えて非常に良い経験でした。

ちなみに、「働いているのか?」は、「事業を営んでいるのか?」「会社を経営しているのか?」と置き換えて良いと思います。結局の所、その回答は全て、抽象化すれば「仕事」の対象者(「For Who?=Target」)を指していることになるわけで、具体化すれば異なりますが、同様の抽象レベルで考えれば、答えは同じになるはずだ、と考えるからです。

私自身の考えは、「自分」のため

結論から言うと、私個人の考えとしては、働いているのは「自分」のため以上でも、以下でもない、という考え方です。なぜなら、仕事は、私の人生の一部であり、私の人生の舵を取っているのは自分である、と考えるからです。
※一応断っておくと、これは、29歳の若造である私の個人的な見解ですので、1つの考え方として捉えてください。

この命題の背景

詳しく考える前に、この命題が出てきた講義内容をざっと整理しておきます。リーダーシップ論の講義で取り上げたのは、2008年スターバックスのCEOの交代劇についてです。(講義で扱ったケース事態は、少し古いものなので、2008年前後の内容となります。)

元CEOのジム・ドナルド氏がスターバックスの経営合理化を進めた結果、ブランドイメージが低下し、マクドナルド等のファストフードのコーヒーと競合する状況となってしまった。すなわち、スタバのコーヒーは、「サード・プレイス」を体験しに来たスタバファン(ロイヤルカスタマー)が期待するスペシャルな一杯ではなく、ちょっと高めの手軽に飲む普通のコーヒー、言い換えれば普通のコーヒー(コモディティ)になってしまっていた。

この状況に陥った際、創業者のハワード・シュルツ氏は、スターバックスを通して提供してきた「サード・プレイス」体験が危機に瀕していることを認識し、自分がCEOに返り咲き、スターバックスブランドを再興させるべく、様々な改革を行った。マーケット関係者は、施策内容を「狂気の沙汰」と批評したが、シュルツ氏は断固改革を進め続けた。さて、この改革が実を結ぶのかどうか、それは顧客が判断するであろう・・・

かなり簡易的にケースをまとめましたが、概ねのストーリーラインはこのような内容です。ここで受講生に様々な問いかけがなされるわけですが、その中の1つとして、「シュルツ氏は、大切なものを忘れていたと思われる。それは何か?」という命題が提示されました。

その回答例は、それは「創業時に考えていた、スターバックスという企業のコンセプトであり、誰のために事業をしているのか?誰のために働いているか?」という事業の根幹になる疑問に対する答えであり、その答えとは「スターバックスというブランドに共感した顧客に対して「サード・プレイス」体験を提供するために、スターバックスは存在している。つまり、顧客のためにこそ、我々は事業を営んでいる」ということでした。

ちなみに、この講義をされている方は、自身もグローバル組織人事コンサルティングファームの日本法人元社長であり、現在は自身の会社を経営されている方です。その方の経験を踏まえて伝えていただいた内容は、非常に説得力があり、私自身も、その場では「確かに」と納得しました。講義中の意見交換でも、賛同する意見の方が多く、私自身も特に違和感を感じていませんでした。

「本当にそうか?」という疑問

しかしながら、帰りの講義が終わり、帰りの電車の中で仕事のメールをチェックしている際、何かモヤモヤを感じました。

そして、それは「果たして、私がこのメールをチェックして、リスクを早期に潰し、次回の会議に向けた資料準備をするのは、本当に顧客のためなのか?」という疑問です。

つまり、私が抱いた疑問は、「「我々は顧客のために働いている。それがリーダーとして、ビジネスマンとして持つべきマインドである」ということを学んだが、それって本当か?」と思ってしまったわけです。

私は、どうやらひねくれ者らしいので、「こうあるべき」という「べき論」や「綺麗事」が基本的に好きじゃありません。というのも、私は実家が自営業を営んでいるのですが、「べき論」や「綺麗事」で事業がうまくいったのを、一度も見たことがないからです。
事業の課題は、現実から得られる地に足の着いた創意工夫から導かれる解決策と、解決策のトライ&エラーを続けることでしか解決できない、というのが私の信条であり、これまでの私が見てきた現実です。そこに、「べき論」「綺麗事」は、一切見たことがないです。
そのため、そういった話に出くわすと、「それって本当?」と聞いてしまいます(周りから見れば面倒くさい奴ですね)。

話を戻すと、確かに、コンサルとして使っていただいているため、顧客が事業で困っていることの解決を支援するという文脈で言えば、間違いなく顧客のためだと思います。しかし、これは客観的な見方で、主観で物事を見たとき、「私は顧客のため、と思って仕事をしているか?」と自問自答した結果、答えは「否」でした。やはり、私はどう考えても、私自身のためにこそ働いている、としか考えられなかったのです。

「誰のために?」の答えの私の原点

ちょうど良い機会だったので、自分自身の考え方を形成する原点は何だろうか?と自問自答してみたところ、間違いなく影響を受け、原点ともいえる考え方を覚えていました。

それは、野球の王貞治氏です。僕がこの話を知ったのは、詳しいことは覚えていませんが、2006年のWBCに際し、イチロー選手が王貞治氏と食事に行った際の会話について話されていたことを、WBC優勝時のテレビのインタビューか何かで聞いたことです。(以下、イチロー選手の質問・王貞治氏の回答)

イチロー選手:
現役時代、選手の時に、自分のためにプレーをしていましたか、それともチームのためにプレーをしていましたか?
王貞治氏:
オレは自分のためだよ。だって、自分のためにやっているからこそ、それがチームのためになるんであって、チームのために、なんていうヤツは言い訳にするからね。オレは監督としても、自分のためにやっている人が結果的にはチームのためになると思うね。自分のためにやれる人がね、一番、自分に厳しいですよ。何々のためにとか言う人は、うまくいかなないときの言い訳がうまれてきちゃうものだからな

http://d-lab.management/?p=8551

この話を聞いて、当時中学生の私は非常に衝撃を受けたんだと思います。なにせ、詳細は分からずとも、この考え方は今になるまでずっと変わらずに持っていたのですから。

私の考えは、ここから全く変わっていません。私は自分のためにこそ働いている。それが、お客様、チームメンバー、会社のためになる。と思っています。自分が面白い経験をするために、新しいことを学ぶために、頑張った結果が、プラスの影響を与え、それが更に面白い・嬉しいから、より頑張るというサイクルで私は成り立っていると思います。

この前提のもと、私は働くことに関して、「自分のやりたい・得意なことを通じて、他者へ貢献することが仕事である」と社会人になる前から思っていました。それは今も変わらず、仕事や大学院で如何に色々な意見を聞こうが、根底の価値観は変わらないと考えています。なぜなら、それが私の人生を通じて培ってきた価値観だからです。

だからこそ、私は自分自身のために働く、と堂々と主張します。自分の人生を生きているのは自分であり、自分人生を面白くすることに1番期待しているのも自分であり、その期待に応えるのも当然自分以外にいないですから。(今思えば、「自分が未知の経験、新しい世界を見る・知るためにこそ生きているから、そのために働きたい」という考え方は、就職活動の時に友人と話した時からも、一切変わりがないですね。これは成長していないということなのでしょうか・・・?)

誰かのために、と言って生きるのは、他人の人生を生きているようで、そして自分が頑張れないことの言い訳をしているようで、僕はどうも好きになれません。

余談ですが、私は価値観を変えることに対して否定的です。特に論文を読んだりして結論を出しているわけではないですが、価値観は個々人が小さい時から培ってきたものであるため、余程の衝撃を受け、自分自身でパラダイム転換が起こらないと変わらないと考えるからです。
故に、(改善マインドがある前提で)業務のHowに対しては意味があると思いますが、個々人の価値観に対して指摘・批評・誹謗中傷はあまり意味が無い(人を傷つけることはできるかもしれせんが)と思っており、私はよっぽどのことがない限り、一切口を出しません。
そもそも、個々人の価値観に対して指摘・批評・誹謗中傷は、それをしている時点で他人の人生を生きている(ズームアウトしてみれば、それは他人の人生のドラマを面白くしているだけだと僕は思っていますが)ようなものですから。

これからの価値観の変化があるのか

さて、「誰のために働くのか?」ということに対して、私の個人的な意見をつらつら書いてきたわけですが、結局の所、「自分のために働く」という考え方は、それを知った中学生のころから全く変わってなかった、ということを再確認できた良い機会でした。

この先、まだまだ新しい経験をしていくことになると思います。その中で、もしかすると、考え方の大転換があり、「顧客のために!」となっているかもしれません。

そういった、途轍もなく面白いパラダイムシフトを期待しながら、今後も働いていきたいと思いました。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?