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UC Berkeley Business Schoolからの手紙⑦(どのようにして見抜くか)


1. 何を見抜いているのか?

先日私が個人的に開催している勉強会で、以下のようなことを20数名の参加者に尋ねてみました。

会社は何を見抜いて採用可否を決定していくべきだと思いますか?

その答えの中には、働く上での価値観、興味関心、能力、組織文化への適合性、過去の実績などなど様々な答えが出てきます。

そこでもう一つ質問をしてみます。

なぜ、それらを見抜く必要があるのですか?

このような質問に対して、多くの方が回答に困るのです。この点は非常に残念なところです。そして、ブラックボックス化され求職者を悩ませている点でもあると思います。様々なモデルがありますが、ざっと項目とその関係性を整理するとこんな概念でしょうか。

図1

そして、性格的・価値観・意欲動機が人間性として評価され、日本の労働市場における採用活動(特に新卒採用)においては、以下のような考え方で採用がなされます。

図6

そして評価シートにはこんなコメントが残ります。

・理路整然としており、高い将来性を感じる(能力的にはよくわからないが、人間的には素晴らしい)
・優秀な人材だが、自社にはふさわしくない(能力的には素晴らしい実績を持っているが、人間的には魅力的ではない)

この点は、日本の労働環境を勘案すると良い点もあります。配属先が決まっていないことのほうが多い日本の労働環境では、能力評価というものは本当に難しいのです。従って、様々な現場で良い関係性を築き、適合していくという事が求められます。

一方で、ビジネススクールで教わる内容は「選考では、あくまでもパフォーマンスに関係するものを見抜くべき」ということでした。

図7

従って、上記の図だと合格ラインは斜めではなく縦になります。そしてパフォーマンスというものを以下のように定義付けます。


パフォーマンス= 「KSAs」×「モチベーション」


この定義を車に例えれば、モチベーションはガソリンのようなもので増えたり減ったりするもの。一方で「KSAs(※)」はエンジンです。エンジンには性能上の限界があります。そしてある程度誤差が少ない状態で予測できます。だからこそ、「KSAs」にフォーカスするのです。選考の目的は将来を正しく予測することですが、より普遍的な領域にフォーカスを当て、最大限、選考精度を高めていくことが求められます。

また、その人の価値観や性格等に触れることも大事だとされていますが、短い時間の中では本質的に見抜くことが難しい為、加点要素としてチェックするに控えるべき、と整理しています。

※KSAについては前回のブログをご覧ください。

2. 正しい選考とは

測定したいものが明確になった場合、具体的な測定方法を決める必要が出てきます。正しい選考となっているか否かを判断する軸においては、3つのポイントがあります。

図10

信頼性が担保されている選考(何度やっても同じスコアが出る)
有効性が担保されている選考(測りたいものを図っている)
実行後に検証されている選考(測っていたものがパフォーマンスに関係しているかどうかを検証する)

※代表的な検証方法として、Content Validation(コンテンツバリデーション)、Criterion Related Validation (クライリオンリレイテドバリデーション)と言う方法を用います。

ちなみに、日本の採用市場では「適性検査」などが一般的ですが、プライバシーに対する意識の強さからか、選考前に適性検査を実施する企業は多くありません。その理由の一つは、選考前に人物像(性格などのPersonal Data)を理解し、それを選考の意思決定に活用すること自体が「仕事とは関係ないことで判断されている」という応募者満足の低下につながるからです。

逆にエンジニア職では必ずと言っていいほどエンジニアとしてのスキルを測定するコーディングテストがあります。それはインターンであっても同様です。

ちなみに、妥当性を調査した機関のデータによると、以下のようなデータがあります。

図1

※1...アセスメントセンターとは、アセスメントを専門にしている人がその人の能力要件等を評価するテスト機関(ex. インバスケットゲーム等の評価者など)
※2...実技試験は、「実際に業務をしてもらう」というもので、使用期間中のパフォーマンス等を指す
※3...伝統的面接とは、プロセスや質問内容を標準化せず、面接官にゆだねる形で面接を進めるもの

3. 信頼できて、有効で、妥当な選考を目指そう

昨今では、統計的な手法を簡単に駆使することが可能になりました。また、HRとして働く方の中にも統計的な知識を持った方が増えています。平均以外にも分散、標準偏差などを測定しながら結果の妥当性を検証することが可能です。

最もシンプルな検証の仕方は、採用後の評価と入社後の評価の相関関係を分析することです。

図8

もし社内にそういったリソースがあるのであれば有効活用し、なければアウトソースするなどして検証していきましょう。いずれにせよ、無駄なコストを抑えること、また選考期間を短縮すること、最たる効果として入社後のパフォーマンスを上げていくことがこの検証活動によって期待できます。

<具体的な進め方>

① 採用時の評価を5段階評価に分ける(A+、A、B+、Bなどを分解する)
② 入社後の評価を5段階評価に分ける(S、A、B、C、Dなど)
③ 上記を検証する(エクセルで=CORREL(採用時評価,入社後評価))といれる
④ 結果的に、正の相関係数があればOK、それ以外は要改善

図9

従って、面接はあくまでも良い選考を実現するための手段の一つでしかないということをHRは理解すべきなのです。とはいえ、採用選考においては非常に重要度が高いとされているのも事実です。しかもこれは日本に限らず、アメリカでも面接がとても重要な要素となっています。次回はその面接について、ご紹介していきたいと思います。

最後まで読んで頂きありがとうございました!

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