UC Berkeley Business Schoolからの手紙⑭(Job型キャリアマネジメントの原則)
今回はキャリアマネジメントです。
「日本という国の雇用・人材育成に関する仕組みは、その当時本当に誰もが驚き、感銘を受けたのよ!」
このブログのコンテンツに協力してくれているUCバークレーの教授PhD Cristina G. Banksが私に語ってくれたことを今でも思い出します。
1958年に発刊された「日本の経営(ジェームス・C・アベグレン)」や1979年の「ジャパンアズナンバーワン Japan as No.1(エズラ・F.ヴォーゲル)」など。高度成長時代の日本は、長期的な目線に立って人を育てる仕組みが優れていると評価されていました。
アメリカは、そこから再度立ち上がり、GAFAなど最先端テクノロジーを中心としたビジネスモデルで成長しています。その基本は「Job型」と呼ばれる仕組みで、スペシャリストを養成する仕組みにあります。
日本においても、複数の大手企業がJob型での採用に手を伸ばしており、これからのホットキーワードになるかと思います。
人材開発・育成に関しては以下のブログで纏めておりますが、キャリアマネジメントとは何なのか、何が必要なのかを書いてまいりたいと思います。
1. キャリアマネジメントとは
まず、キャリアマネジメントとは組織的なプロセスや仕組みを指します。
上述の通り、従業員が自分のキャリアに対して客観的な視点を持ちつつ、企業と協力し合いながら高めあっていく、という事を指しています。
抽象的な言葉で表現すれば、「個人の方向性」と「会社の方向性」を擦り合わせる、ということになります。この考え方を最初に発信したのは、Linkedin創設者のリード・ホフマンではないでしょうか。
ざっくり本をまとめるとこんな感じです。
・仕事は、あくまでも期間の決まった契約(長くても5年)と捉える
・尊敬する人物の要素などからキャリアプランを考える
・本人のキャリアプランに会社がどのように貢献できるかを考える
「信頼・共感」というものを切り口に、個人の方向性と会社の方向性のすり合わせを短期的に図っていきましょう。そしてそれを積み重ねていきましょう、という話をしています。
2. キャリアプランニングとは
キャリアプランニングとは、従業員が組織内の潜在的なキャリアパス、および希望するキャリアパス内での異動の要件に関する情報、および要件を満たすための追加のスキルと経験の取得に関する情報を収集するプロセス。
さて、続いてキャリアプランニングですが、こちらは組織的なプロセスというよりは、個人のアクティビティになります。
キャリアプランニングとは、キャリアマネジメントのような総合的な概念ではなく、従業員個人が組織の中にどんな機会があるのか、またその機会にチャレンジするためにはどんなスキルを身に着けたらよいのかを明確にするものであり、「入社後3年後のイメージを作りましょう、そのために必要なスキルや経験を明確にしましょう」ということになります。
その前提は、キャリアラダーと呼ばれる「職務内容の体系的分類」がなくてはいけません。従業員はこの表を見ながら、自分の今の仕事が将来何に繋がっているのかを判断するのです。
従って、HRとしては「キャリアマネジメント」という目線を持ち、一個人としては「キャリアプランニング」という目線が必要なのです。
3. また戻ってくる機会を与える
それでは、HRとして「キャリアマネジメント」を実行していくにあたり、どのようなポイントを押さえておくべきなのかを書いていきます。
ポイント① 法律への対応と多様性の推進
・データを記録し、最悪と最高のケースを期待し、そして見続ける
・常に機会に対してチャレンジできる機会を開いておく
・パフォーマンスを真剣に評価する(行き詰まらないようににする)
・また戻ってくる機会を与える
「法律に違反することなく」というのはアメリカ特有かもしれませんが、アメリカでは昇進昇格に差別や訴訟というものがつきものです。従って、それらに対応するためにもデータを記録することが必要不可欠なのです。
それを除けば上記からもわかる通り、①誰がいつどんな成果を上げたのかという事をHRがきちんと記録し、②組織内の異動を”当たり前”にし、③再チャレンジの機会を与えるという事が必要になります。
日本でも外資系やIT企業では多く取り入れられていますが、また戻ってくる機会を与えることは、チャレンジを促進する意味でも重要なことかと思います。
ポイント② 社員との心理的契約(目に見えない暗黙知)を大事にする
- 「ポジティブ」な感情的な気分になりたい(楽しい、楽しむ、驚き、達成)
- 「安心」して「安定」していたい(心理的安全性)
- 将来に向けて「前向き」な経験をしたい
従業員がそもそもキャリア教授が示す内容としては、上記の3要素でした。当然それ以外にもいくつかの要素があるかもしれませんが、この考え方に加えるとすれば「モチベーション革命」に記載があるような達成・快楽・意味合い・良好な人間関係・没頭などなど、一時的な現象である”感情”や、「Well-being」などマーティン・セリグマンが提唱する深層的かつ継続的な感覚、双方の視点から考えてよいのではないかと思います。
(3)組織は従業員とどのような心理的契約を結ぶべきか?
・キャリアを発展させる機会を約束する
・成果に関わらず、プロセスを約束する(異動後にうまくいかないときも当然ある)
・一貫している(鶴の一声でプロセスを変えない)
心理的契約というものは、「相互に期待しあう暗黙の了解」を指します。従って、社員にとってどんな暗黙の了解が存在しているかが大事なポイントです。それは「認知」を指しており、仕組みとしてどうあるかではありません。「社員が仕組みをどう認知しているか」が重要な点だという事です。
4. キャリアは個人のもの。
「キャリア」に対して、日本人は(一般的に)あまり強い拘りを持つ事がないかもしれません。アメリカで知り合った友人は、建築学部を卒業し、建築会社でデザイナーとして勤める一方、効率的に仕事したい!という事でプログラミングをブートキャンプのようなもので学んでいました。
「だってユニークになりたいですよね!」
そんなことをサラッと言います。参加するのは自由ですが、何かと言い訳をして何もしないより、100倍素敵だと思います。
① 日々の仕事でも、デザインソフトを使っているという”親和性”
② プログラミングスキルを学ぶ事が確実に仕事に生きるという”現実性”
③ スキルを向上させるために自ら時間を確保したいと申し出る勇気、それを承認してもらえる”会社や上司との関係性”
がその友人を動かしているのではないでしょうか。そういったケースはアメリカではごく一般的で、「会社の意思決定に依存してしまうキャリア」は少数派ではないかと思います。
少なくとも、私たちは自分がどんな「仕事」に対して興味があるかないかを考えてみる事は大切です。そして、「興味ないわ」というものに対して我慢せずに自分で探し、自分で辿り着こうとすることが大切です。会社の決定に依存せず、「ちょっと本気で」考えてみる事が大切だなと思います。
Stay hungry, stay foolish - Steve Jobs
Derived from 計画的偶発性理論(Planned happenstance theory)
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