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20210604 富山・魚津

こんにちは。今日から2週間ほど旅行をするので、自分自身の備忘録を兼ねて旅行記を書こうと思います。

本来ならば4月から社会人だったものの、会社の都合で始業が10月に延期され、どこかで1ヶ月くらい京都に住みたいな、と思っていました。が、始業が6月21日となったため、滑り込みで2週間旅行をすることにしました。

目的地は、富山、名古屋、京都。京都は前述の通り住みたいという思いがあって、関西のスポットも色々回ってみたいなということで10日間の長期滞在。富山はここ3年くらいずっと興味があり、名古屋は友人に会いに行くといったところです。富山って言うと黒部ダムとか五箇山とかが有名ですが、そのあたりには行きません。

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富山駅北口。

昨晩24:25、バスタ新宿から夜行バスに乗ってやってきたのは朝6時半の富山駅。夜行バスは久々でしたが、全然眠れなかった。乗務員さんが毎回「とっとやま」って言ってて鳥取に連れて行かれるかと思いましたが無事富山につきました。前日は東京都現代美術館に行ってたということもあり、足がけっこう痛い。荷物もスーツケースを厭うあまりめちゃビッグなリュックに詰め込んだらはちゃめちゃに重くなり、すでにからだが痛い。さらに大雨ということで、せっかくの旅行の初日なのにという感じですが、がんばりましょう。

お手洗いで支度をして、朝ごはんでも食べます。商業的な中心地は富山駅から南方面に15分程歩いたエリアということもあり、朝からやってるお店はそんなに多くありません。

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7時から開いている駅前の立山そばでかき揚げそばを食べます。一口目から口の内側を盛大に噛みまして、夜の今でも痛いです。そばはふつうに美味しい。出汁が関西風で良いですね、私は関東風のより関西風のほうが好きです。

早朝の見知らぬ街ということで、ふつうだったら散歩をしているところなのですが、いかんせん結構な雨。風も強く、傘を差していてもけっこう濡れてしまいます。どうしようかな。

富山には路面電車、LRTがあります。富山の中心部のコンパクトシティ政策、特にモビリティでの施策は有名で、市が一大プロジェクトとしてここ10年ほど推し進めているものになります。富山市街中心部では富山地方鉄道という私鉄が長年路面電車を運行してきたのですが、それにくわえてもともとJR線だった富山港線という路線を路面電車化(=駅数の増加、本数の増加)し、その他にもバスやJR高山本線なども本数を増やしたりして、近年の地方都市の政策としては珍しく成功を収めたケースとしてよく紹介されます。2020年の2月にはJR駅によって南北に分断されていた路面電車網がJR駅の高架下でつながり、更に利便性が向上しました。

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富山地方鉄道軌道線の富山駅電停。

ただ、このモビリティに関する政策がなぜ富山で進められたのかというと、元々の背景として富山市の市街地が47都道府県の県庁所在地の中で最も集積度が低いということがあったためです。市街地が遠くまで広がっている一方で、密度が低い、建物の高さが低い、ということですね。移動には車が必須、中心市街地は過疎化…というとよくある地方都市といったところですが、特に富山では道路整備率が全国1位であるという地理的な要因や、戸建志向みたいな県民性の要因もあったりして、特に大きな問題になっていたと。そこで路面電車や鉄道路線、バスなどを使って中心市街地の活性化を図ろうという政策になったようです。

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富山駅南口からの光景。左手には富山地方鉄道の電鉄富山駅がある。

で、実際来てみると、たしかに路面電車はひっきりなしに発車しています。富山〜南富山は5分に1本と、東京の地下鉄レベル。が、たしかになんとなく建物は低い気はする。北陸新幹線が2015年に開業して以来駅が新しくなり、駅前広場が工事中ということで全体的に目下再開発中なのかもしれませんが、人口42万人を擁する市(これは関東だと横須賀市、柏市、藤沢市、町田市と同じくらい)の中心部として考えるとあんまりぱっとしないかも。地方中核都市ではJR駅が中心市街地から離れていることが多いので、駅前はまあこんなものかもしれません。ところでさっきからJR駅と言っていますが、北陸新幹線が開業したせいで並行在来線となった北陸本線はJRから分離され、自治体などが運営する第3セクターとして運行されておりm富山県内は「あいの風とやま鉄道」になっています。そのほか、もちろん新幹線と、あとJR高山本線があるので、一応JR駅ではありますが、ああ並行在来線問題よ…となっていました(?)

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路面電車越しの立山連峰。

あとはやはり立山連峰が異常に近い。富山市街地はかなり平らで標高も低いのですが、かなり近くに3000m級の山々が見えていて、とても不思議な感覚。もっとも今日は朝だけちらりと見えましたが、昼間以降は天気が崩れて一切見えませんでした。

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さっそく長々とオタクトークを繰り広げましたが、15分ほど歩いて富岩運河環水公園にやってきました。富山の中心地が若干海から離れているために富山湾から開削された運河となりますが、現在では市民や観光客の憩いの場として賑わって…はないです、今は雨なので誰もいません。鴨しかいません。

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8時の開店と同時にスターバックス富山環水公園店に入店。ここは世界一美しいスターバックスにも選ばれたという店で、運河を望む斜面からせり出す形で建てられています。見た目も黒を基調に落ち着いた感じで良い。世界一、と銘打たれちゃうとどうなのって気持ちも湧いてきますが、きれいです。雨なのもありますが。

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キャラメルマキアートを飲みつつ時間を潰し終えたら、同じく富岩運河環水公園内にある富山県美術館に向かいます。富山県美術館は2017年に開館した新しい公立美術館です。老朽化により閉館した富山県立近代美術館(1981年開館)の収蔵品を引き継いでおり、そのコレクションは現在愛知県美術館で開催中のトライアローグ展でも見られるように、20世紀の西洋絵画を中心にけっこうちゃんとしたもの。また、「富山県美術館 アート&デザイン」という副名称にある通りアートとデザインを結ぶ場としての位置づけがあり、1985年より日本唯一のポスターの国際公募展である「世界ポスタートリエンナーレトヤマ」を3年に1回開催しているほか、屋上にはグラフィックデザイナーの佐藤卓がデザインした「オノマトペの屋上」もあり、子どもたちで賑わって…はないです、今は雨なので誰もいません。

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企画展はポーラ美術館展。箱根にあるポーラ美術館は今まで3回くらい行っているので富山まで来てポーラかよといった感じですが、案外見たことないものも多くてまあまあよかった。眠すぎてモネ見ながら寝落ちしそうになってた(立ってるのに、、)のは内緒です。

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シスレー《ロワン河畔、朝》

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ルノワール《アネモネ》

ただ、当たり前ですがポーラ美術館のものを展示しているわけでして、普通に主催はTBSテレビ、にも巡回する展示ですので、富山県美術館の本領を見れたわけではないな、という感想でした。今まで富山県美術館では「アートとデザインをつなげる」という前述のテーマのもと琳派や浮世絵とデザインをつなげた展示とか、サインデザインの展示とか、あともちろんポスタートリエンナーレの展示とかもやっていたわけなので、今度はそういうときに来たいですね。

常設展は、通常のコレクション展と、近現代の椅子、亀倉雄策のポスター、瀧口修造のコレクション、シモン・ゴールドベルク&山根美代子コレクション。通常のコレクション展は入ってすぐに磯部行久の作品がなんの解説もなくドドンと置いてあっておお〜となりましたが、部屋も狭く解説もほとんどなく、あんまり印象に残らず終了。李禹煥にだけ解説をつけるのはうーん。それ以外のにつけてくれよ。

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磯部行久《Work65》

亀倉雄策のポスターは予想通りに大変良かったですね。

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瀧口修造のコレクション、というか所有していたあれこれの展示も良かった。瀧口修造は富山県出身の美術評論家・詩人で、日本のシュルレアリスムの軸となる存在。宮永愛子からブルーノ・ムナーリ、磯崎新までいろいろな人からもらったものが展示されています、交友関係が広いってこういうことを言うんだろうなあ。

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ブルーノ・ムナーリの灰皿

ということで展示はまあわりとふつう、また今度来ようかなという感じだったのですが、一つ大きな不満として、富山県美術館、まじでサインシステムがダメです。どこに何があり、どこの展示室から企画展が始まるのかがまったくもってわからない。他の来場客にも困惑している人を見かけました。国立新美術館って若干分かりづらいじゃないですか、あそこのわかりづらさを倍増させて、吹き抜けをなくした=見づらくなったって感じ。新しい建築で見た目はきれいなのですが、せっかくサインデザインの展示とかやってたのにこれではダメです。

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富山県美術館には2時間くらい滞在。駅に戻ります。

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駅まで歩いている途中に北陸電力の大きなビルが。どうやら本店のよう。北陸の中心地と言うと金沢とばかり思っていましたが、富山が中心なものもあるんですね。他には北陸銀行や北陸コカ・コーラなども富山にある。関係ないですが富山が発祥の会社というと、YKK(ファスナーの会社)、池田模範堂(ムヒの会社)、ショウワノートなど。地味〜に絶対みんな一度は使ったあるものって感じ。

駅に戻ってきたのでお昼ご飯を食べます。駅ナカの商業施設のなかのすし玉さんで寿司。行列店!とか食べログには書いてありましたが、雨の平日なのでスカスカでした。

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めちゃめちゃうまい。かわはぎ(左から3番目)、白エビ(一番右)が特に良かった。白エビ、すごくねっとりなめらかな舌触りで、これ以外では味わえない食感。

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追加でサストロの炙り、白魚を注文。サスとはカジキマグロのこと。これがめちゃくちゃよかった。とろけるなかにも歯ごたえがあり、まるで牛肉のような味でありながら、やっぱり魚なのでさっぱり。無限に食べれるけどお金もないのでお会計。

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路面電車に乗って西町電停へ。西町は「にしまち」かと思ってたら「にしちょう」で、しかもアクセントが「に」にある。「じゃがビー」のアクセントです。

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ハンノ"メってなんだとおもったらハシヅメでした。

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「高橋禎彦 Playtime展」より

富山市ガラス美術館に来ました。富山市は「ガラスの街とやま」として美術館、研究教育施設、体験施設の3つの施設を軸に文化振興が行われています。もともとは富山の地場産業である薬を入れるための瓶として作られ始めたのだそう。

私はあんまりガラス作品に馴染みがないのですが、こちらはかなり良かった。工芸的なものを美術館で見るのがあんまり好きじゃないのですが、こちらは彫刻というか、現代美術として造形美を追求した作品が多く、新たな感動がありました。素材としてのガラス、形を持っていながら向こう側を見通すことができ、表面の凹凸に応じて光を反射し、固体のように見えながらも実は液体である、といったことに思いを馳せてみると、なかなか興味深い素材だなあと思いました。めちゃくちゃインスタ映えっぽい展示室(グラスアートガーデン)もあったのですが、そこでは写真撮影はOKなのにSNS投稿がダメという珍しいルールが布かれていたので、各自ホームページで見てください。

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富山市ガラス美術館は富山市立図書館と一緒に複合施設「TOYAMA キラリ」に入っており、建築は隈研吾。隈建築特有の木材を多用した空間に斜めに大きな吹き抜けがあり、シームレスに図書館と美術館が繋がっています。素敵な空間でしたが、あまりに人がいなくて大丈夫かなという気持ち。

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トイレの洗面台までシームレス。排水口じゃなく排水溝になっていますね。これはすごい。

今度は歩いて駅まで戻ります。ガラス美術館がある辺りが富山の中心市街地となっており、その名も「総曲輪」。「そうがわ」と読みます。

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大きなアーケードがあり、地元の店もありつつ、チェーン店もありつつといったところ。ただ、全体的に人が少なく、さっきも言った中心市街地の人の少なさがなんとなく感じられました。みんなどこに行ってるんですかね、やっぱりファボーレ

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わかりやすい写真が撮れなかったのでWikipediaより引用。 -Rebirth10による作品

中心となっているのが大和富山店という百貨店。どうやら前までTOYAMAキラリの場所にあったのを2007年に移転、路面電車からのアクセスを良くしたそうで、百貨店の移転ってなかなかすごいですね。富山市唯一の百貨店ということで売上は悪くないようですが、今日はあんまり人がいなかった。というかめちゃくちゃ大丸に見えますね。

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こういうの好き。

ということで富山駅に戻ってきて、鉄道に乗ります。

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一応JR(高山本線)の乗り場でもあるのだけど、JRのロゴはない。あいの風とやま鉄道は普通にICカードが使える。

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あいの風とやま鉄道泊行きに揺られ25分ほど、魚津駅へ。車窓には水田が多く、のどかな感じでした。

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一気に街が平らになりました、魚津駅です。魚津は北陸新幹線こそ止まらないものの、富山県東部、新川地方の中心都市ということになっており、信用金庫の本店などがあります(信用金庫の本店がある場所を中心地だと思っている人)。逆に言うと、新幹線が止まらなかったことで今後がやばそうな都市です。パッと見なんもないし実際あんまりなにもないのですが()、駅前にはアパホテルなどもあり、ホテルは割とたくさんある印象。私も今日は魚津に泊まります。ホテルに荷物を置きに行き、海の方へと歩いていきます。雨強くなってきた。

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これは魚津の最高なスポットです。魚津の本気を見ました。

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魚津でチェーンの飲食店、道とん堀しか見てないかもしれない。

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歩くこと20分ほど、魚津埋没林博物館にやってきました。タイポグラフィがかわいい。

魚津というと、蜃気楼と埋没林という2つの自然が有名です。蜃気楼は富山湾、特に魚津の名物で、海の上の大気の温度に差が生まれ、屈折することで海の向こうの建物や船などが伸びたり浮き上がったり反転したり見えることを差します。とはいえいつでも見れるわけではなく、春の晴れた日、運が良ければ見れるといった感じ。

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見づらいですが、蜃気楼の写真。四角い太陽とかまじですごい。

埋没林はその名の通り埋まっていた林のことで、ここ魚津では2000年前くらいの杉の木が地中に埋まっていたのが昭和になって発掘され、現在では特別天然記念物にも指定されています。どんなものかというと…

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まあ、木の根っこなので、大変地味です。人もほとんどいない。

ただ、埋没林が生じたメカニズムとかはわりとおもしろい。ここは海のすぐ横、何なら海抜もマイナスなんですが、そもそも海岸に杉の林なんて無いじゃないですか、ふつう。ただ、ここでは湧水が豊かで、海岸であっても塩害を受けずにすくすくと杉が育っていたと。で、川の氾濫によって土砂が流れ込んできて、杉の根っこが埋められると。で、地殻変動だか海面上昇だか(まだわかってないらしい)でその根っこが海の下になり、でも湧水が豊かだから傷まずに綺麗なまま残っていた、というプロセスで今に至っています。様々な偶然が重なって生まれたことであると思うと、地球の長年の歩みを感じて感動させられます。メカニズムをよく考えると1枚目の「水に沈められた根っこ」っていうタイミングは歴史上ほぼ存在しない気もするのですが、まあ水があったほうがなんとなく感動しやすいので良いと思います。

そしてこの地味〜な博物館のエントランスホールにあるのがKININALというカフェ。

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パッと見ただのフルーツに見えるものの、中にはクリームやフルーツソースが入っているという珍しいスイーツが名物です。店名の由来は「フルーツなのかケーキなのかキニナル」というところから来ているらしい。いちじくを頼みましたが、とても美味しい。いちじくの甘みや風味も活かしつつ、中のカスタードやベリーのソースがそれぞれ個性を持ち、下のクッキーも甘さ控えめで箸休めになる(箸使ってないけど箸休めで良いのか?)。クオリティがとても高い。880円、高いという意見も口コミでは見かけましたが東京だとこれで1300円はすると思います。個人的にはフルーツなのかケーキなのかっていうところはどうでもよくて、なんでこんなところにあるのかがキニナリます。

雨も止んできたので、海沿いを歩いてホテルに戻ります。

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富山湾。日本海に馴染みがないので向かいには大陸が…!と思いを馳せていましたが、ここから正面に行っても全然能登半島でした。

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と。

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ああ、たしかにホットケーキも鉄板焼きだなと思わせてくれるメンツ。

夜ご飯を食べる場所はあるにはあるのですが、昼の寿司やら入場料やらでわりとお金を使ってしまったので、スーパーでお刺身やお酒を購入。

割と早く、18時前にチェックインしたのですが、あまりの疲れにそのまま眠りこけてしまい起きたら21時すぎ。

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食べました。富山、スーパーの刺身でも美味しくてすごい。でも醤油がなくて素材の味を楽しみました……。かまぼこも魚津の名産らしい。お酒は銀盤大吟醸と富山加積りんごチューハイをいただきました。どちらもうまい。

そして旅行記を書いていたら3時間くらい経ってしまった。時間の使い方が下手くそである。こんな調子で(本当はもう少し短くしたいが)今後も書いていきますので、お楽しみいただけましたら幸いです。

アートボード 1

それでは。

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