私とクモとナメクジと
たま~に、「私なんて世界にたった一人だ」と感じることがありますね。いいしれない孤独と恐怖が我が身を襲うときがある。
でもね。あなたの家の中には、たくさん虫がいるんですよ。
だからあなたは独りじゃない!!!!
……………。
日記です。
クモ。雲ではなく、蜘蛛。
うちの中には蜘蛛がいるんですよ。外に逃がすでも殺すでもなく。のんびりとそこらへんを這いまわっています。もちろんそんなデカい蜘蛛ではなくちっちゃいやつですが。
昔は殺してたんですけど、最近はそうしていない。なんでかっていうと、理由があります。それについて書く。
私、猫を飼ってたんですよ。ハチワレの。
その子が半年くらい前に死んじゃったんですね。死に方はすごく綺麗な死に方だったんですけど、ふだん元気に暴れ回ってたような子だったので、弱っていったときに私自身もすごく動揺してしまった。で、これじゃだめだ、私が弱気でいるとこの子によくないってなって、ある漫画を読んでいたんですよ。
『くるねこ』。
アニメ化もしている。
で、この、主人公はこの真ん中の人間なんですけど、主人公の膝のうえにハチワレの猫がぐで~んとなってますね。この子はトメちゃっていいます。アニメでは諏訪彩花さんが声あててますねー。
この子、漫画読んでいくと亡くなっちゃうんですけど(だいぶ長寿連載なのでここに映ってる子はけっこう亡くなっちゃっている)、この子が死んだあとの短篇で、「家に出てくる蜘蛛がどんくさくてトメちゃみたい」っていう話があるんですねー。つまり、「蜘蛛はトメちゃの生まれ変わり」っていう話。
これいいなーと思ったんですよ。私、自分が生まれ変われるとは思ってないですが、死んだひとが何かに生まれ変わるっていうのは素敵だなーとおもって積極的に信じているんです。だから、今衰弱しているこの子も生まれ変わって蜘蛛になって、のんびり静かに豊かにしあわせに過ごしてほしいなー、と思ったんです。
だから、家に出る蜘蛛は、それ以降は殺していません。
まだしばらくは生まれ変わりなおさずに家の中を這いまわっていてほしいな、と思うので。
ナメクジ。
ナメクジはなにかっていうと、これはまずひとつのゲームの紹介をする必要があります。
『アイドルマスターシャイニーカラーズ』。
アイドルもののゲームなんですけど、この作品の中に「幽谷霧子」っていう子がいるんですね。
この子はすごく心優しい子で、すべての生命あるもの、生命なきものを平等に愛しているんですが、公式四コマでこういうのがあります。
アジサイに乗っていたカタツムリを見つけた幽谷霧子さんが、白瀬咲耶という子の手のひらにカタツムリを乗せてそれを慈しむ……という四コマです。
「いやカタツムリはねえわ」と私思ってたんですが、でもなんか、幽谷霧子さんが愛しているものを私が否定する権利もないな、とこの四コマと読んだとき私は感じたのです。だからこそ白瀬咲耶さんも大声を上げて抗議したりはしないわけですから。
で、そんなことを考えていたのも忘れたころ。
こないだ、家の中にナメクジが出ました。食卓の上をのそのそ歩いていました。
今までだったら「うおおおおおおお~~~ッッッ!!!!! オレのそばに近寄るなああーーーーーッッ!!!!」になっていたんですが、そのナメクジを視界に据えたふと私はある感情を抱きました。
「慈愛」。
圧倒的な慈愛の感情が、私の中に生まれていました。
「幽谷霧子さんがああ言っていたから私も従おう」とかそういう感情ではなく。
私の心の奥底から、まるで最初からそこにあったかのように、溢れ出る生命への愛。
それが私の全身を包んでいました。
すべては幽谷霧子さんのおかげだなあと思うんですが、ともあれ、それはすごく心地よい感覚でした。
何者かを何の見返りも求めずに愛するという感覚は……しかも、それがこの世に溢れているすべてのものに向けられるということは……とても幸せなことなのではないかと、そのとき気づいたのでした。
ナメクジで思い出しましたが、手塚治虫氏の『火の鳥 未来編』では人間が滅びたあとの世界でナメクジが人間に成り代わって世界を支配するという話がありましたね。彼らはけっきょく人間と同じ悲惨な結末を辿ることとなるんですが、やっぱりあのナメクジたちの中にも、私たちと同じように何かを愛し、何かに愛されたナメクジがいたんだろうな……。
だから、もしかすると……私がナメクジを愛したのと同じように、ナメクジも私を愛してくれていたり、するかもしれませんね……。
………………。
なんの話でしたっけ……。
あ、そうか……
そのナメクジはけっきょくうちのそとに逃がしてあげました。
さすがにうちの中では過ごせませんからね。
とにかく、そうですね……
「恐怖」が「愛」に変わる、というのはすごく不思議な感覚で……
そして、それは心地よいものである……
という感じですかね……
幽谷霧子さんのような「愛」の視線を、私もいつか、手に入れたいな……
おわり……
……………。
【白・白・白・祈】のTrueコミュ、どうにかして全人類に読ませる方法、ねえかな……。