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友だちと一切会う予定のない帰省を綴る。

 尾崎世界観の「苦渋100% 濃縮還元」が面白かったのです。エッセイというか、尾崎世界観から見える世界を日記という形で綴られている一冊。彼の文章に引き込まれる上に、さらに好きになってしまいます。どこか尾崎世界観みを感じると言われたことがある私ですが(多分、それは軽音サークルでコピーしてちょっとうまいこと行っただけ)、ちょっとインスパイアを受けて日記を書いてみようと思ったわけです。

 今回の帰省は友人と会う予定がゼロでした。最終的に家族と過ごすだけ。それも悪くないです。何も考えなくていい。だからこそ色々考えちゃうんですけど、それも人間の性でしょう。

8月15日(月)

 実家で目覚める。私の部屋はもうなくて、帰省するたびにリビングのソファで寝させられる。将来残業とかするとこうなるのか?とか思いながら、悔しいが寝心地はいいので、ちゃんと眠れてしまった。そして、12時〆切の未提出のエントリーシートがあることに気づき、書いて無事提出。ほっとするとお腹が鳴った。
 朝は何も食べず、11時家を出発。人生で初めて焼き肉キングに行く。私は食べ放題となると、腹11分目まで食べて、後悔するのが通例だ。ちょっとでも得したいと、高そうなお肉をたくさん注文。無限に食べられる「韓国のり」をこれでもかと注文。そして、スイーツも別腹なのでたくさん注文。気づけば、腹13分目になっていて体調が悪い。なのに、バカな俺が数分前に頼んだ「ひとくち冷麺」が届いた。食えるかよ、と思いながら残せないのでなんとか完食。車に戻るとすぐ爆睡。なに、運転までしてもらって、寝てるんだよ、実家に帰って親孝行しろよ、俺。
 夜は、何をしていたかあんまり覚えていないが、母と2人で近くのスーパーで酒のおつまみを買いに行った。そのスーパーでの小噺を披露してくれた。仕上がっていた。手を叩いてわらってしまった。スーパーに入ると、「亀田の柿の種 ピーナッツだけ」という商品があった。こんなの誰が買うんだと思っていたら、「私のためのものやな」と笑っていた母。「そういえば、そうだね」と微笑む息子。

8月16日(火)

 朝から母のお手製のハッシュドポテトを食べる。多分、母は私が帰省するといつもより力の入った料理を作っている。美味しいです、と伝えることしかできないから、それだけ精一杯伝えている。美味しいです。めちゃめちゃ美味しいです。ぼーっとして祖母の家へ。
 祖母の家の神棚を見つめるたびに「今の彼女と長く続きますように」と願っていたことを思いだす。「今の彼女」がいた以来に祖母の家に来たかと思うと、あまりの久しぶりさに祖母孝行できてないなぁと不甲斐なくなる。
 祖母と父とお墓参りに行き、蕎麦屋さんで食事。そういえば今夏は、畑を耕している祖母からのオクラもらってないなぁと話すと、今年は雨があまり降らないし、暑すぎるしで、形が変わり、いいものが採れないらしいと話してくれる。おい、酷暑。お前のせいで誰も得してないぞ、いい加減にしろ。と改めて酷暑に怒りを覚える。その後、祖母の家に戻り、昼寝。
 目覚めると甲子園がテレビで流れていた。全員ちゃんと年下。あんなお兄ちゃんかっこいいなぁと思っていたのが昨日のようで、今では、「よし、いったれ!」と完全に年上としての応援をしている。ただ、あまりにもかっこいいのと真っ直ぐな目をしているので、年上として応援する資格があるのか、なんて考えるとちょっとしんどくなって、もう一回寝た。
 帰りの車中、甲子園の青年たちはカッコよかった、私はやりたいこと何かに言い訳してできてない、悔しいとぶつけた。父に「やりたいことをするのにおいて、1番いいのは10年前、2番目にいいのは今だ」と言われる。あんなにお腹がでていて寝転びながらお菓子を食っている父だが、たまにかっこいいことを言って私を鼓舞しようとしてくる。そして、それできっちりと鼓舞される私。自分で言うのは恥ずかしいが、いい親子関係だと思う。こんな父になってみたい(お腹でてるのは嫌なので反面教師にします)。
 あんなに晴れていたのに、急激な殴り雨。異常気象で腹を立てそうになるが、これでいいオクラが育つならーと心を宥める。来年こそ、いいオクラが育つこと願ってます。おばあちゃん、どうか元気でいてください。
 サークルのライブが近く、ギターを持って帰省したせいで、夜20時半ごろにギターと鞄を背負い無人駅で電車を待つ。その姿は、音楽で世界を変えるんだ!という夢を持つ青年そのもの。残念ながら、私は音楽で世界を変えようとは思わないけど(そんなに才能がない)、何かを変えたいなぁと思うことはしばしばある。テレビの中の甲子園球児もきっとそれくらいの熱があったのだろう。いや、今も思い続けているのかもしれない。もう年齢なんかではなく、先輩だ。意志が強く人生を変えたいう点では大先輩だ。目の前に甲子園球児が現れたら、敬語で喋らせていただきます。そして、質問攻めにさせていただきます。
 帰りの電車。読みたかった「苦渋100% 濃縮還元」を読み終える。とてつもなく面白かったし、何よりも文章に「人」が現れていた。こんなものを書いてみたい。久しぶりにやりたいことを見つけた。やってみよう。

(冒頭に続く)

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