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Rie fu「London」:ロンドンの思い出を散りばめ、終わりと始まりを織り込んだ歌

Rie fuは日本での音楽活動を続けながら、ロンドンで絵画を学びました。留学を終えた2007年にリリースされた作品が『Tobira Album』です。アルバムには「London」という曲が収録されています。曲名や歌詞はもちろんのこと、音からもロンドンの空気が感じられそうな曲です。

歌い始めは思い出をそっと手繰るかのようです。街で見たもの聞いたものを思い浮かべ、メロディと言葉に変えて綴る。やがてリズム・セクションをはじめとしたバンドの演奏が加わります。曲が膨らみ、歌にも音にも開放的な空気が満ちる。まるで友人たちと門出を祝う卒業パーティーです。

歌詞はすべて英語で書かれ、ロンドンの光景がぎゅっと詰め込まれています。乾いた空気、Holborn行きのバス、行き交う車、タクシー。街を歩き、地下鉄に乗る。駅から駅へ。鳩がぱたぱたと飛び去り、くしゃくしゃの新聞が風に吹かれてどこかに飛ばされる。言葉は絵筆となり、ロンドンの情景が一枚のカンヴァスに立ち上がります。

個人的にRie fuのライブと「London」は密接に結びついています。というのも、僕がRie fuの生演奏を初めて聴いた曲が「London」だからです。2007年に神宮外苑で催されたイベントにRie fuが出演し、ギターの弾き語りで「London」を披露しました。素晴らしい歌と音は、秋晴れと秋風の心地よい記憶とともに心に残っています。ワンマンライブでも何度か演奏され、メロディや音の良さを噛みしめながら聴いていました。ライブ・レコーディングをまとめた『Rie fu Classics London/Tokyo Sessions』では、ロンドンで歌う「London」を通してライブの雰囲気が味わえます。


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