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Shorai Sans by Monotype

2022年2月に、Monotype社が新作の書体「Shorai Sans」(ショウライ・サンズ)を発表しました。特設サイトで見たShorai Sansのフォルムに惹かれ、吸い込まれるように購入を決めました。Variable(太さなどを数値でコントロールできる形式)を買い、noteやMediumに書いた自分の文章をマテリアルにしてデザインを試しています。

自然と書体に注目して印刷物やWebを見ているためか、内容と書体が結びついて記憶に残りやすく、特に顕著なのが音楽です。CDの歌詞カードに印刷された歌詞やクレジットなどの書体を見るのが好きなので、気に入った書体を挙げるとき、その書体が使われている作品も思い浮かべます。Gill Sansは『EXPO』、Futuraは『RHYTHM RED』、Garamondは『CAROL』といったように(いずれもTM NETWORKのアルバム)。

自分が使う側になると、「美しい」や「格好良い」といった直感的な評価に加え、サイズやウェイト、濁点やアポストロフィなどの位置、文字間や行間などの観点で、主に長文に適用したときのバランスを見ます。手間をかけて作られた書体からは細かく調整されたであろうことが分かるし、開発背景や設計思想といった物語(ナラティブ)を知る楽しみも得られます。優れたデザインの書体をイメージすると、文章を書く手にも力が入ろうというものです。

Shorai Sansに惹かれた最大のポイントは和欧混植のバランスです。和文は良いのに欧文の形が好みではなかったり、欧文が小さくなったりと、ひとつの書体で理想的な和欧混植が実現できるものになかなか巡り合えません。InDesignなどアプリケーションの設定で調整できるものの、もともとバランスの良いものがあれば個人的に購入したいと思っていました。その穴を埋めるかのようにShorai Sansが登場します。

半角英数字には欧文書体の「Avenir Next」が使われています。そもそもShorai Sansの和文はAvenir Nextとのバランスを考えて開発されていて、具体的には「Avenir Nextの幾何学的な特徴を活かし、文字の線を均一に保ちました。骨格を極限まで単純化し、すっきりとした形にまとめています」とのことです。さらにAvenir Nextもオリジナルのままではなく、和文とバランスがとれるように微調整されているそうな。

成り立ちの違う和欧の文字を互いに馴染ませ、ひとつにまとめるのは難しかったと推察できます。けれども、こうした難題を解決するのもまた書体デザインの醍醐味なのでしょう。素晴らしい成果を享受できることを嬉しく思いながら、存分にShorai Sansを使っていきます。


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