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小林ユミヲ – にがくてあまい 12

小林ユミヲさんの漫画『にがくてあまい』が、12巻をもって完結しました。「レシピ69 ビーツのリゾットとビーツとバナナの豆乳ジュース」から「レシピ75 アボカドと納豆のそば粉ガレット」まで、7つの話が収録されています。ラスト・シーンに向けて、徐々に物語を畳んでいきます。

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連載は約6年にわたり、さまざまなテーマを盛り込んで展開しました。僕はレシピ56から読み始めて、遡って最初から読んだのですが、読みながらいろいろなことを考えました。物語をきっかけに思考が旅をし始めたという感じですね。もちろんさらりと読むこともできますが、その陰影を感じながらじっくり読むこともできる物語だったと思います。

物語の舞台となった長屋について、あとがきで小林さんは「空地にある秘密基地」というイメージで描き、それは「いりくんでいて、人も車もめったにこない、フリーダムな場所」だと語ります。僕の中でもこの長屋は、不思議な趣きで存在し続けました。本当に存在して、本当にマキも渚もそこで暮らして、そして本当にどこかですれ違ったことがあるような気がしていました。もちろんフィクションなのですが、フィクションらしくない肌ざわりを感じていたのだろうと思います。

小林さんのTumblrでは、これまでの単行本で使われたおまけペーパーのイラストが公開されています。Twitterでも落書きと称してマキや渚、ばばっち、ミナミ、豊が好き勝手に話しているイラストがアップされていましたね。そういうところも、自分にとってあまりフィクションっぽさを感じなかった理由ですね。いろいろな日常があちこちに転がっていたから。たくさん楽しめました。感謝です。

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そして9月10日から、ついに実写映画が公開されます。マキを川口春奈、渚を林遣都が演じます。物語のどのエピソードをピックアップして、どのようなテイストで描くのでしょうか。実写ならではの描き方を存分に楽しみたいと思います。

My notes:
レシピ69 ビーツのリゾットとビーツとバナナの豆乳ジュース
レシピ70 いちじくと大根の天ぷら
レシピ71 カリフラワーと干し椎茸のじゃーじゃーうどん
レシピ72 あまからみぞれ餅
レシピ73 パクチーとトマトの塩焼きそば
レシピ74 ポパイの蒸しケーキ
レシピ75 アボカドと納豆のそば粉ガレット


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