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【書評】『金利を見れば投資はうまくいく』長短金利差と社債利回りで景気を先読み

投資を成功させるには経済の先読みが必須。

ではどうやって将来の予測を立てればいいのでしょうか?経済指標を見れば十分なのか?

いや金利を見なければいけない

こう主張するのが『金利を見れば投資はうまくいく』。今売ってるのは2022年に発売された改訂版です。

著者は先進国債券ファンド「グローバルソブリンファンド」の元運用者。3つの金利を活用して投資を成功させるすべを教えてくれます。

金利といってもいろいろあります。本書が参照する金利は次の3つ。

・政策金利(短期金利)
・10年国債利回り(長期金利)
・社債利回り(社債スプレッドともいう)


長短金利差は景気の先行指標

本書における短期金利とは政策金利のこと。日銀が景気を読みながら上げたり下げたりするアレです。

また本書で長期金利といったら10年国債利回りのこと。短期金利とは違って、長期金利は資金需要などを反映して自然に動きます(ただし2023年現在の日本は例外的な状況)。

なぜこの長期金利が10年国債利回りで代表されるのでしょうか?…これを考え出すとややこしくなるので、ここではそういうものだと思っておいたほうがいいでしょう。本書でもそのへんのくわしい説明はありません。

ここで重要なのは長期金利と短期金利の差に注目すること。これで景気の先読みができます。

金利は先に長期金利が動きます。

長期金利は景気を反映するのでした。景気が良くなれば長期金利は上昇を始め(要するに資金需要が増えてお金の値段が上がる)、逆に景気が悪くなれば長期金利は下落します(資金需要が減ってお金の値段が下がる)。

そして短期金利はこの長期金利を追いかけます。なぜそうなるかというと、中央銀行が景気の極端なブレを防ごうとするからですね。

景気が加熱しすぎてインフレがヤバいとなったら政策金利を上げて景気を冷まそうとします。この場合、上がりすぎた長期金利を後から短期金利が追いかける形になり、景気が冷えてくると長期金利の下降が始まります。

そして短期金利が長期金利を上回るような異常事態にでもなれば、それは景気後退のサインです。これはいわば中央銀行のブレーキが強烈に作動している証拠ですからね。後から追いかけてきた短期金利が長期金利を追い越すほどに強烈にブレーキがかかっているわけです。

実際、2019年には長短金利の逆転が発生し話題になっていました。コロナショックでこの現象は忘れられてしまった感がありますが、金利に着目している人からすれば、パンデミックがあろうとなかろうと景気後退は時間の問題だったわけですね。

長短金利差が1%を割ったら注意が必要、0%を割ったら警報が鳴り響いている状態だと本書では強調されています。


社債スプレッドを見れば長期の下降局面を事前に察知できる

10年単位の長期的な景気は次のようなサイクルで循環しています。

1. リスクオン局面
2. レバレッジ局面
3. リスクオフ局面
4. 財務緊縮局面

1と2は景気好長期。3と4が不長期です。

3になってから対応したのでは遅いと著者は言います。2に突入した時点でそれを見極め、冬支度の開始をしなくてはいけないと。

ではどうやったらそれを感知できるのでしょうか?

株価を見ていただけではわかりません。1と2どちらの局面でも株価は似たような動き(上昇)をしますから。

ここで登場するのが社債スプレッドというわけです。

社債スプレッドは1のリスクオン局面では順調に縮小します(社債利回りはリスクの上乗せぶんですから、これが縮小するということは万事好調ということ)。しかし2のレバレッジ局面に入ると、そのまま上昇を続ける株価とは裏腹に、社債スプレッドは拡大を始めるのです。

このように株価が上昇しているにもかかわらず社債スプレッドが拡大しはじめたら危険信号だと、本書では注意されています。

本書の後半は時事的な内容になっています。新興国、アメリカ、欧州、日本の現状把握をし、将来を予測する内容。

・ユーロ圏の景気を知りたいならまずドイツを見る
・ドイツの景気はアメリカに追随する
・銀行株はその国の体温計
・日銀は国債からの利息と当座預金に支払う利息との差額で儲けている(逆ザヤが発生するから利上げができない)
・海外の機関投資家は通貨スワップを活用して日本国債への投資で儲けている

…などなど。

『金利を見れば投資はうまくいく』、内容はやや難しめだと思います。基本的な部分の解説は駆け足気味で、金利入門書としては使えないかも。

金利の基礎知識に自信がない人は、先に金利入門書を読んでおいたほうがいいでしょう。


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