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伝統産業を継承する方法

高岡銅器の着色とは
富山県高岡市は、全国の生産量の9割を占めると言われる鋳物の町だ。その歴史は古く、江戸時代初めに加賀前田藩が高岡城を開城し、城下の繁栄を図る産業振興策として、鋳物発祥の地である大阪から7人の職人を招いたところまで遡る。仏像や梵鐘、全国の観光地で見かけるアニメキャラクターの銅像も、そのほとんどが高岡で作られており、今もなお鋳物や漆芸などの伝統産業が息づく工芸の街である。
「銅器は錆を鑑賞する工芸」と言われるほどで「着色」はその表情を決定づけ、保存性を高める最終工程である。着色という文字から誤解されるが、概念としては色彩を引き出す「発色」である。上から塗料を重ねて色を着けるわけで無く、素材に薬品や熱で化学変化を発生させ、内側から色を引き出す技法である。表れる色も、それを引き出す職人の技術も、全ては素材次第であることが「発色」の奥深さである。

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モメンタムファクトリー・Oriiの歩み
歴史を感じさせる風情漂うこの街で2008年、モメンタムファクトリー・Oriiは始動する。同社の前身である折井着色所は現社長の折井宏司氏の祖父である折井竹次郎氏が1950年に創業し、皇居の照明灯や長野・善光寺の大香炉やお寺の仏像を手掛けるほどに。しかしながら、バブル崩壊後、あくまでも下請け工場だった折井着色所の仕事は次第に減少の一途をたどる。その状況を打破するために、折井宏司氏は新たな着色技法に試行錯誤。数年にわたる研究の末、それまで困難とされていた厚さ1mm以下の銅板に着色を施す独自の技法を確立することに。

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三代目・折井宏司氏は折井着色所時代から続く「煮色」「糠焼き(こうじやき)」「鉄漿(おはぐろ)」などの伝統的な着色技法を継承しながらも、それらを進化させた様々な技法で独自の色彩と模様を具現化。最初に開発した、孔雀の羽のように複雑な色合いが特徴の「斑紋孔雀色」やOrii Blueとまで言われブランドの代表色となった「斑紋ガス青銅色」をはじめ、全ての色彩が今までに存在しなかった。これらの色を厚さ1mm以下の銅板上で表現することで折井宏司の世界観が創造されていく。

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新技法の確立以降、自らのブランドを立ち上げてインテリアや建築業界へ名乗りを上げる、自ら手掛けるブランド「momentum」、柔らかで独特な色彩をデザインした「tone」、プロダクトに留まらず、個性的なサインや表札、壁材やなど新しい商品や価値を生み続けている。
特に建材分野では個人宅から商業施設まで幅広く手がけ、今や日本国内の業界内では一目置かれた存在である。中でも六本木ヒルズ展望台フロア壁面や南青山のBaxter Tokyo壁面などは圧巻である。加えて装飾用パネル「ORII MARBLE」が2017年「グッドデザイン賞」、2018年「金點設計獎(台湾)」を受賞したことを切欠に、海外市場開拓へ本格的に舵を切ることとなる。

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