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【科学的に立証】 どうすれば学力が上がるのか?

【前提】

・日本の教育政策では、科学的根拠の活用/政策効果の検証が行われておらず、世界的にも遅れている。
・アメリカでは「落ちこぼれ防止法」の学習効果証明のために、科学的根拠に基づく教育政策展開 (evidence-based policy) が行われるようになった。

【結論】経済学的根拠から分かっていること

・「親の学歴・所得」と「子どもの学力」は相関する。以下、影響因子(by Yamagata教授)
 ・遺伝(35%)
 ・家庭環境(34%)
 ・その他(30%)


・学力向上にご褒美は有効(by ローランド・フライヤー教授)
 ・子どもの場合は、アウトプットよりインプットに与える方が有効
 ・小学生以下にはトロフィーなどのモノが、中学生には現金に近いものが有効


・自尊心が学力に影響を与えるのではなく、学力が自尊心に影響を与える(by  心理学者 ロイ・バウマイスター教授)
 ・高1で成績が高い → 高3で自尊心が高い
 ・高1で自尊心が高い → 高3で成績が良いわけではない


・能力(頭がいいね)ではなく、過程(頑張ったね)を褒めると成績が上がる(by コロンビア大学のミューラー教授)
 ・子どものもともとの能力(=頭のよさ)を褒めると、子どもたちは意欲を失い、成績が低下する
 ・子どもの努力を褒めると、子どもたちは意欲高めを、成績が向上する
 ・出典


・テレビやゲームは、学力に悪影響があるが、そのインパクトは少ない(by 慶応義塾大学 中室教授)
 ・テレビやゲームの時間が1日1時間程度であれば、まったく見ない場合に比べ、悪影響はほぼない
 ・テレビやゲームの時間が1日2時間を超えると、学習への負の効果がある


・親から子どもへの声かけは効果なし。横について勉強を見る場合は効果あり(by シカゴ大学 ヘックマン教授)
 ・ちなみに、同性の組み合わせの方が有効
 ・勉強を見るのに、親である必要はない


・ピアエフェクト効果は大きい
→ (ⅰ)習熟度別クラスは有効
(by デュフロ教授)
→ (ⅱ)MTO施策は有効(by チェティ教授)
 ・学力の良い友人は、元々学力の高い友人にはポジ影響、学力の低い友人にはネガ影響を与える (学力の低い友人は自信を失うため)
 ・習熟度別学級の場合、特に学力が低い層でポジ効果大
 ・但し、子どもの月齢が低い場合、習熟度別クラスが格差拡大へ影響を与える結果が得られた根拠も存在

・将来の収入を最大化するためには、就学前教育投資が最も有効/ROIが高い(by ヘックマン教授)
 ・「ペリー就学前プログラム」の分析結果が主たる根拠

・将来の収入へインパクトが大きいのは、認知能力<非認知能力(by ヘックマン教授)
 ・自制心(マシュマロ実験)
 ・やり抜く力がある(GRID、「ダックワーク教授 成功のカギはやり抜く力」
 → ネガティブなステレオタイプは「やり抜く力」を低くする罠
    →「成長的思考態度(知能は伸ばすことができる)」は、「やり抜く力」を高くするマインド

【参考】教育経済学で成果のある教授/論文例

・シカゴ大学 ゲーリー・ベッカー教授(1992年ノーベル経済学賞を受賞)
 ・功績説明リンク

人的資本と呼ばれる分野を開拓し、学校教育や職業訓練などの教育活動が人々の所得や生活、社会に与える影響を多面的に明らかにし、それが人口構成や経済成長に対しても最大の影響を与える要因であることを解明し、教育問題を理論的・実証的に分析する教育経済学分野を確立した。
次に、従来、金銭や経済的問題にだけを分析してきた経済学の適用範囲を、人間行動のあらゆる側面を合理的選択の結果と解釈することで、人間行動のあらゆる側面の説明を可能にした。教育、職場訓練、人材育成・労務管理、人口問題、差別、結婚、離婚、虐待、信仰、犯罪、麻薬、など、家計内の役割分担、人間行動の様々な問題を理論的・実証的に分析して、現実の社会を変える発見を数多く行ってきた。

・シカゴ大学 ジェームズ・ヘックマン教授(2000年 ノーベル経済学賞を受賞)
 ・功績説明リンク

1960年代にアメリカで行われたペリー就学前計画の実験結果を根拠に、就学前の子どもに対する教育投資効果に着目し、「就学後の教育前の子どもに対する教育投資効果に着目し、「就学後の教育の効率性を決めるのは、就学前の教育にある」とする論文を、科学雑誌『Science』で発表。彼はまた「恵まれない家庭に育ってきた子どもたちの経済状態や生活の質を高め
るには、幼少期の教育が重要である」と主張し。

・マサチューセッツ工科大学 エスター・デュフロ教授(2010年 ジョン・ベーツ・クラーク賞、2019年 ノーベル経済学賞)
 ・功績説明リンク

受賞理由は、世界的な貧困の緩和を目指し、経済学の考え方に基づき、RCT(ランダム化比較実験)という現場主義の実験的なアプローチを応用したことである。

・ハーバード大学 Raj Chetty教授
 ・功績説明リンク
   ・リンク②

チェティ教授らは、MTOの成果についても分析を試みている [2] 。Chetty et al(2015)では、MTOによって移住した家庭の子は、一般的な支援金を利用して移住した家庭や、移住しなかった家庭の子と比較して、成人時の年収が高くなっていることが示された

・ハーバード大学のローランド・フライヤー教授(2015年 ジョン・ベーツ・クラーク賞)
 ・功績説明リンク

米国ではさらに、子供の学力がインセンティブによってどう影響されるかを調べる実験も行われています。なかでも有名なのは、約3万6000人もの児童・生徒が参加した、米ハーバード大学のローランド・フライヤー教授による大規模実験です。フライヤー教授の実験には、大きく分けると2つのタイプがありました。一つは「学力テストや通知表の成績がよくなったら報奨金を出す」というもの。つまり「いい成績」というアウトプット(成果)に対して報酬を出したのです。結果を簡単にまとめると、大人に対する実験ではアウトプットにインセンティブを与えることで禁煙や運動を習慣化することに成功したものが多いのに対して、子供の学力を上げるためには、インプットにインセンティブを与えることが有効だということがわかりました。

【出典】

「学力」の経済学 単行本
その他、文章中の挿入リンク

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