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仲條正義 88歳

私の中で服部一成がグラフィックデザイナーの父ならば仲條正義は祖父。

毎月刊行されていた頃の雑誌花椿や資生堂パーラーのパッケージ、定価よりもうんと高くなった絶版本、中国人の同僚にわざわざ取り寄せてもらった海外の作品集など、ありとあらゆる手段を使って仲條デザインを集めた。

デザイナーにとって深層であるコンセプトは重要ではあるが、仕上がった表層が何も心に引っ掛からないものは大きな欠点。
いつも心を鷲掴みにされる痛快なデザインと年齢を重ねれば重ねるほど自由になっていく生き様を見ていつしか憧れから目標に変わった。

発売延期の8年の時を経て今年の2月に仕上がった集大成の一冊『仲條 NAKAJO』。
ページを捲るたびに圧倒的な造形力を目の当たりにするのが怖くてまだ真正面から向き合えていないが、これから何年もかけてゆっくりと対峙していきたい。

はじめはデザインは詩だと思った。中年で移ろいと思い、今は妄想である。
生きてきてデザインは最高のものであった。

いくつになってもひたむきにデザインを愛していた。これからも色々な本や展覧会で仲條デザインに出会えるだろう。
享年88歳。仲條正義は∞になった。