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ビューティフル・ドリーマー

 どこを見ているか分からない目は疲れと余裕のなさを感じさせ、手入れを怠っている眉毛と長年の不摂生によりだらけきった頬肉で実年齢より老けて見える。それでいて、顔全体には幼さやあどけなさが残り、人生における苦労や努力、成功体験が他人よりもはるかに少なかったことを如実に物語っている。そんな男たちが世の中に存在し、うち一人は多分、私なんだと洗面をするたびによく思う。

「私たち、マブダチですからね」

 仰向けになった私の上に乗った赤いネグリジェ姿の後輩は、確かにそう言っていた。後ですぐにこの状況はすべて夢だったと判明するのですが、この手の夢としてはどこか印象に残ったので記録します。

 「マブダチ」というのはあくまでも友達だから最後まではしないということなのかな〜とか思いながら、私はひたすら尻だけを揉んでいた。何だかめちゃくちゃザラザラした尻だったので、少し怖かった。部屋に誘ってきたのは相手の方だった。最近会ったり話したりはしていないが、唐突に目の前に現れた。「何故今さら?」とは思わなかった。
 肥った中国人の彼氏が戻ってきて、何かを叫んだ。こいつに限らずどうして俺の後輩はどいつもこいつもデブの中国人と付き合うんだろうかと、現実とは明らかに異なる後輩の恋愛状況に、疑問を抱いた。
 この中国人をこの時間に部屋に呼んだのはどうやら私のようだった。LINEに履歴があった。意図的だったかどうかまでは分からないが、とにかくそのことを彼に詫びた。そして本来であればこの不貞行為はバレなかったということでお咎めはなく、それでは、と行為に戻ろうとしたら、覚醒した。

 何だ夢かよ、と素朴に思った。

 耳をそばだてるまでもなく情事の音が聞こえてくるシェアハウスで寝たからなのかは分からない。単に普段から蓄積しているフラストレーションによるものなのかもしれない。とにかく今は朝早いのに私が寝ている2階にまで届いてくる近所のババアたちの話し声と高笑いが、ただただ不快だった。