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朝帰り、でも相手は宗教勧誘者

漫画家になるために上京したての頃、私は、アシスタントとネーム持ち込みに明け暮れ忙しい毎日を送っていました。

だけど知らない土地で初めての一人暮らしはやっぱり寂しいもので、ふとした瞬間に、心細くなってしまい、寂しさを埋めてくれる誰かを探してしまうのでした。

そんなある日、目があったのはある女性。
ショートカットで真面目そうな、水筒には紅茶を入れて持ち歩いていそうな、化粧っ気のない、とても感じの良い女性でした。
思ってたのと違う。でも、何日も人と話をしていなかった私は、もーこれでいいや、と、話を聞いてみる事にしました。

すると彼女、
あなた今寂しい日々を送っているでしょう?と。
はい、私今とっても寂しいです。
幸せになりたくはありませんか?と。
なりたいです、幸せに!!
ではついて来てください、はいー!!!
と、私はその人について行ってみる事にしたのです。

私だってめちゃくちゃ怪しい事くらい分かっております。きっと宗教的勧誘的なやつです。
でも、怖いもの見たさで面白くなってきたので、ついて行ってみる事にしたのです。大丈夫!

彼女が言うには、夕方に先生とアポが取れたので、お話を聞くために5000円用意してください、とのこと。
夕方までの間、このことは誰にも言ってはいけません、運が逃げてしまうのです、とのこと。
怪しいやつ、いらっしゃいませー!!
だけど、運が逃げるといけないので、私誰にも言いませんでした。
お話を聞いてみたいので、5000円も用意しました。
まあこれくらいなら、体験費として考えても悪くはないです。大丈夫!!

そしてお約束の時間がやってきて、私は彼女と一緒にどこかへ行きました。例の、先生とお話しするために。

まず、事務所みたいな場所の、個室へ通されました。
そこへ先生ご登場!!

おかっぱ姿の、とても神経質そうな、赤い口紅が印象的なタイトスカートの女性が、とてつもなく素敵笑顔で私に微笑んでいます。
眩しい。
そして私に、幸せになりたければ愛を学べとおっしゃるのです。
愛ってなんだよ。

聞いても教えてくれなくって、愛を知るにはセミナーに通わなければならないそうな。70000円のセミナーです。
彼女達、5000円ぽっちじゃ足りないご様子。

そんな時間なんてとても取れそうにないので、私は無理ですといいました。
だけども彼女たち全く引かず、何故それが必要かを淡々と語り始めます。
だからあなたは今一人ぼっちで寂しいのだ、と。

いや、知ってる人がいない場所に一人で上京して来て、寂しくならない方がすごいと思うけど。
例え寂しくても、わたし、決して不幸なんかじゃないもん!
と思いながらも、いつのまにかもう夜遅い時間。
私はお腹も空いてきたので、そろそろ帰らなくちゃ、と言いましました。
そしたらついに先生、しぶしぶだけどそのセミナーの映像を少しだけ見せてくれるとの話を持ち出します。思った以上に落ちないものだから、痺れをきたしたのでしょう。
素晴らしいセミナーだから、是非一度見てみてください!!と。
それは、興味ある。是非みたい!!と思い、じゃあ少しだけ、、と、また別のお部屋へ通されました。
どんなすごい映像が待ってるんだろうとドキドキしながら映像ドーン!!

するとそこには、誰かに何かをお話ししているちっちゃいおじさんが。
なんなのでしょう。
全く興味も持てません。というか、声がよく聞こえないので、いいも悪いもわかりません。
なに、これ??

何故こんな映像見せたんだろうか、そこが一番疑問ではありましたが、最後の一押し映像をみた私はさっさと我に返ってしまいました。
外はもう明るくなっています。
私は仕事もありますので、もう帰りますと言うと、彼女達はやっと諦めて、はい。ではまた、と言ってお家へ返してくださいました。
あなた方のセミナーに貢献できなくってごめんなさい、だって、そのセミナーどうしてもいいと思えなかったんだもん。

おもしろ体験出来たからよかったじゃないか、、と自分を宥めようとしたのですが、何だか納得いきません。

だって私、幸せになりたかったんですもの。全然納得いきません。


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