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知財情報の検索と探索

本記事は、知財系アドベントカレンダー 12月18日のMasatoshi Adachi ../.. 足立昌聰さんの記事に続いての、12月19日の記事です。(なのでタイトル画像はアド弁当カレンダーです!)

検索型と探索型

2020年に読んだ書籍「ネットビジネス進化論」(尾原和啓著)、情報探しの「検索型」と「探索型」が印象的で、以来、情報入手の場はどちら寄りか気になるようになった。(→僭越ながらの読書メモ

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詳細は書籍をどうぞであるが、簡単には検索型は効率重視、目的物をダイレクトに提示しようとする。ECではamazonがそうで、自動化が進むという。他方の探索型は目的なしで探すプロセスを重視、雑誌のように見る楽しさを提供する。ECでは楽天市場が典型で、エンタメ化するだろうと。

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(迷い込みそうな「アマゾン」がすっきりで楽そうな「楽天」が複雑)

知財情報の検索と探索

知財情報の入手で検索(目的、効率)と探索(非目的、エンタメ)を考えてみる。

知財の調査といえば基本的に「検索」である。探し物が明確で、プロセスは短いほどよく、可能な限り自動化されていくのも違和感がない。例えばクリアランス調査では、結果である特許や出願、またはこれらがないことが出てきさえすればいい。

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では「探索」は? 目的物が不明確で、何があるか探る。カタログを眺めるように探すプロセス自体を楽しむ。フラフラ、ちょっとしたきっかけで逸れたりする。ネットサーフィンみたいな。そんなイメージで考えてみる。

知財の調査でも、業界や技術要素についてなど状況整理したいときは「何があるか探る」がある。出願人や分類で切って見ていくこと、その結果を件数や技術的な関連性などがわかる図にすることはよくされている。しかし調査には予め筋道があり、フラフラ探索しない。

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というわけで、知財情報を調べるときにそのプロセスこそを楽しみたいという需要は想像しにくい。それはそうで、知財の調査には、はっきり目的があり、プロセス自体にのめりこんでは本末転倒である。

……では終わってしまう! 折角なので無理やり「探索・非目的・エンタメ路線」を考えてみる。

率直には、「見たほうがよいがなかなか見ない情報を見る」には使えるかもしれない。例えば、技術や企画といった知財以外の部署の者にとっての自社の特許や競合、協業先の特許だ。知財の部署なら、担当外の事業の関連特許とか。

能動的な調査、見なくてはならない特許は上述のように目的があり、フラフラ探索の入る隙なしだ。また「見てもあまりメリットがない特許」は、目的なしだが、まず探索する気が起きにくかろう。やはりそれなりに読む意味がほしい。この中間の「時間があれば読みたいんだが」な文献たちは、楽しく探索するメリットがあるかもしれない。

ところで、特許等の使用例(未来像を含む)を探す雑誌のようなウェブサイト(株)知財図鑑の「知財図鑑」は、ただ眺めるも楽しく「探索・非目的・エンタメ路線」に当たっている。コンテンツがよければ娯楽として成り立つ。もっと未加工の、特許文献そのものとなると、読む意味が顕在してないと見向きもされなさそうである。

見たほうがよいがなかなか見ない情報を楽しく見る

ここで思い出された取組みをご紹介する。特許に限らず、「見たほうがよいがなかなか見ない情報を(今思えば)楽しく見た」経験である。

以下から、楽しくフラフラ見るためには「コミュニケーション」「余剰」「他の情報に飛ぶ仕組み」がポイントではと思う。

①社内のレポートを見て、社内技術を知る
社内レポートの閲覧サイトで、登録されたレポートにコメントや投票をしあうことをしていた。研究テーマ名、関連の技術、市場などにより関連するレポートに飛んだり、投票結果や季節の(?)ピックアップカテゴリからレポートに飛んだり、「思わぬ出会いがある」「逸れていく」感じがネットサーフィンに近かったように思う。
②他社特許情報を見て、他社特許を知る
SDIで収集された特許情報を、複数部署の特定の社員で受け取り、コメントや強調を入れながらワイワイ共有していたことがある。複数の理由により終了されたが、その理由とは無関係で、「ズレた案件を知財部がはじく」ことをしてワイワイ感が減ったことがあった。余剰がエンタメにつながることを連想させる。

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似たところで③ニュース等を見て、仮説を立てる
メンバで時事情報をシェアし、各自がそこからいくつか選んで外部環境の仮説を立てる取組みをしていた。そこでもばかばかしいニュースや意見もシェアするのが雰囲気をよくしていて、余剰の偉大さを感じた。

(上で触れたとおり、コンテンツ自体を魅力的に加工するのは娯楽的に読ませるに大変有効だが、大変だ。)

この記事は何だったのか

ほしい知財情報をピンポイントで知ろうとする「検索」以外に、だらだら楽しむ「探索」があってもいいのではと思い、ではどんな場面ならあるかを考えてみた。

〈探索〉
目的物が不明確で、カタログを眺めるように探すプロセス自体を楽しむ。フラフラ、ちょっとしたきっかけで逸れたりする。

〈どんな場面〉

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・社内で自社特許を眺めて、応援したい技術や人にいいね、アドバイス。タグ検索やシェア、レコメンドで回遊する。他社特許なら危機感の共有やアイデアの取入れなど。
・社内に限らず、もっとオープンになら応援したい技術、会社にいいねや投げ銭できてもおもしろいやも。特許情報を知ることによるメリットが薄いので、よほどしっかり楽しさを作りこまないと成り立たなかろうが。

最後に

知財系 Advent Calendar 2020 ありがとうございました。他の日の記事は読みごたえあります。ちなみにネットビジネス進化論の著者尾原氏は、16日(澤井 周/SAWAI Shu/One ip (iPLAB Startups)さん)でもそのウェブ記事が登場しています。
知財系 もっと Advent Calendar 2020もあります。



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