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桜の不思議 (シロクマ文芸部、エッセイ)

桜色と言われると、鮮やかなピンク色がイメージされがちだという。

しかし、実際に桜の花びらを見てみると、思っているほど濃いピンクのものは、さほど見当たらない。
もう咲いた、あるいはこれから咲き始める桜を見れば、おわかりいただけるかもしれない。

これは、色を正確に覚えにくいという人間の性質と
それによってか、様々な商品が色鮮やかに作られている実情
などが影響していると考えられている。


私は桜色は好きだが、ピンク色は少々苦手で自分には選ばない色の一つである。
ただ、桜関連のものとなると、ピンク色でもつい手に取ってしまう。

これまた、他の形や、花は花でも違う花となると話は別だ。


花には全く詳しくないのに、なぜ桜だけは…?と考えていると、思い当たる節があった。


絵本や小説、ドラマなどの入園・入学のシーン
そして、受験合格の「サクラサク」のフレーズだ。


お祝い事や大切な節目など、人生において重要な場面で意味をなす花は、他にもたくさんあると思う。

ただ、桜が咲くと聞くと、他の花よりも深く、強い意味をもつように感じる。
また、季節が訪れ蕾が開いて綺麗!というのみならず
一層の嬉しさ・おめでたさ・喜ばしさを思わせるのだ。

「サクラサク」の由来が、元々は電報メッセージだというのは、お恥ずかしながらこのたび知ったけれども。


そういうわけで、桜は私にとって特別な存在になっているらしい。



そんな私には、忘れられない2つの桜がある。
花の桜にも思い出深いものはあるが、散らない、本当の花ではない方の桜だ。


1つ目は、大学受験前に高校のY先生からいただいたもの。
桜色かピンク色の桜を形どった紙を、ノートの真ん中に貼ってくださった。
B5ノート1ページの4割ほどを占めるほど大きく、そこには激励メッセージも記されていた。


Y先生の授業は、選択科目の都合で高校1年のときしか受けていなかったが、とてもわかりやすかった。
担任代行であった以上に、よく気のつく方で、授業以外の場面で本当にお世話になった。

1番覚えているのは、ハンドクリームの話しだ。
受験前、霜焼で紫色になった私の手を心配し
「お湯の中で揉み込んだら効くよ。
特に、お風呂に入っているときがいい。」
と、教えてくださった。
その日の夜から実践すると、たちまち治っていった。

ちなみに、Y先生は人間の面倒見はとても素晴らしいが、植物を育てるのはどうにも苦手だったと記憶している。
色々試して失敗を重ねた後、サボテンをも枯らしたと聞いたことがある
(お水をやりすぎてしまったのか?)。



2つ目は、これも大学受験前のもので、H先生へ贈った桜型のクリップだ。
デザインフィル製ディークリップスシリーズであることはたしかなため、おそらくこの類のものだ。

H先生は、下記記事に登場するH先生。
他学年の担任、部活動の副顧問で、受験に際して国語をみていただいていた方だ。

当時、H先生の息子さんもちょうど中学受験だった。
合格されたと聞き、お祝いと日頃のお礼を兼ねて、課題の提出か添削の折に気持ちだけですがと渡した。


H先生は男性で、クリップやケースはピンク色だった。

ただ、桜モチーフ且つ主張しすぎない文房具でもあったゆえ、プレゼントしやすかったし、受け取りやすかったと思われる
(たしか、形が変わっていることに驚くとともに、柔らかな笑顔を見せてくださった覚えがある)。


高校を卒業し、気づけば10年以上経っている。
Y先生とH先生は、変わらずお元気だろうか。
まだ蕾ばかりの桜を見上げながら、思いを馳せる自分がいる。


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