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宝塚大劇場でやさしさに救われた

曽祖母、祖母、母そして私と、脈々と受け継がれてきた宝塚歌劇団愛。生い立ちや世情も影響し、観劇回数は私が最も多いかもしれない

(といっても、生観劇できるのは各演目1回あるかないかだが、遠征組且つ幼い子どもがいるなど諸事情を考慮すれば、大変贅沢をさせていただいていると思う)。


宝塚歌劇団の公演は様々なところで行われているが、本拠地は宝塚大劇場。そこで受けた沢山の親切のうち、特に印象的だった2つについて書きたいと思う。

※なお、2つ目については、宝塚関連でなくとも何らかの"推し"がいらっしゃる方のほうが、共感いただけるかもしれない。

相席のお誘い

花組公演 ミュージカル『巡礼の年〜リスト・フェレンツ、魂の彷徨〜』/ショー グルーヴ『Fashionable Empire』を観劇した日のこと。

観劇前後は、劇場内あるいは周辺の飲食店で食事やお茶を楽しむことが多々ある。劇場内の各店舗では各公演期間中の限定メニューも販売されるため、毎回確認している。

大抵1人もしくは家族との観劇というのもあり、そのときの気分でどこへ行くかを決める。
その日は劇場内のカフェテリア「フルール」の限定メニューを食べられたらなと思い、終演後に向かった。


カフェ形式ゆえ、先に自分で席を確保しなければならない。その日の1回目の公演終了後、且つ2回目の公演をひかえるタイミングのため、混雑しており席も空きが出なさそうだった。

急いでいないし気長に…と思いつつきょろきょろしていると、ショートヘアのご婦人から声をかけられた。

「席探してます?よかったら!私もうすぐ出るので!」


なんとありがたきお心遣いだろうか。
それに、1人で席を探す人が他にいなかったのかもしれないが、私を見て相席をしてもよいと思っていただけたのもとても嬉しかった。

荷物も見ておきますしとのことで、身軽になっていそいそとお目当てのメニューを買いに行った。

購入した
スターバスケット~FLOWER~


席へ戻ると、ご婦人との束の間のお喋りが始まった。食べて食べて!と気を遣ってくださったので、恐れ多くもこちらは食べながらだったのだが。

ご婦人はこれから観劇で、私と同じバスケットを召し上がられた。私の子どもと同じぐらいのお孫さんがいらっしゃる…など、ほんの数分だったが、久しぶりに家族や親戚以外の方との会話を楽しませていただいた。

その後、ご婦人は観劇のために「それでは…。」と足取り軽く去っていかれた。

バスケットを食べ終えた後、同じお店でおやつセットを買い、観劇日記を書きながらゆったりとすごした。

おやつセット


おやつ拡大!


他のお店へ行くことも考えたが、その頃にはお店も空いていたし、何よりその席の居心地が良かったのだ。


もし自分がご婦人の立場だったら、同じように声をかけられるだろうか。電車で席を譲ったことはあるが、それよりもはるかにハードルが高い気がするのは私だけだろうか。

大好きな方からの、ちょっとしたイタズラ

初めて生で観たときに、一目惚れ、一耳惚れした望海風斗さん。この方と同じ時代に生きられたこと、一観客として出逢えたことを心から幸せに思う。

そんな方の宝塚歌劇団退団公演 ミュージカル・シンフォニア『f f f -フォルティッシッシモ-』~歓喜に歌え!~/レビュー・アラベスク『シルクロード~盗賊と宝石~』は、私の臨月あたりから始まった。

ただでさえ遠出は控えるべき時期に、コロナウイルスの流行。運良くチケットは入手できたものの、いつ産まれても、感染しても、公演が中止になってもおかしくないという状況だった。


ありがたいことに、すべてがうまくいった。観劇当日、チケットを発券したときまでは。


当時は既に、劇場内へ入る際に会員証を出すのみで、チケットを発券できるようになっていた(いわゆる入場認証)。
しかし、何かの不手際で発券できなかったら?と妙な不安を覚え、それまでと同様、発券機を使い自分で発券した。

ただ、いつもと違ったのは使った発券機だ。チケットカウンター前のものを毎回利用していたが、インフォメーションあたりにもあるのに今更ながら気づき、そこで発券した。

インフォメーションには、愛してやまない望海さんが表紙のフリーペーパーが置かれていた。うっとりしながら、今から貴方を拝みにまいりますと心の中で呟き、ありがたく頂いた。


少し劇場内をうろうろした後。さて、プログラムを買って予習するぞ!チケットをしまって…と、気づく。


ない。チケットがない。


鞄やエコバッグの中、劇場で入手した煌びやかなものたちの間をくまなく探す。自分が通ったであろうところも歩いてみる。しかし、どこにもない。
そうこうしている間に開場となり、開演時間は刻々と近づいてくる。


私は今日、何を1番の目的にここまで来たんだろう。
いつもなら、発券したチケットはすぐ財布にしまうのに…。

そうか。初めてインフォメーション前で発券して、財布にしまう前に望海さんのフリーペーパーに見惚れてしまったんだ…。


さよなら皆様。
さよなら生男役望海風斗様。


と、絶望の淵に立たされるやいなや思いついた。

ダメ元で、インフォメーションに行ってみよう。

もしかしたら、届いているかもしれない。

もし届いていなくとも、考えられることはいくつかある。

仮に私が座るはずの席に他の誰かが座り間違いでなく座っているとなれば、その人は私のチケットを持っていることになる。全席指定且つ記名チケットゆえ、その人はなりすましとなる。

また、最悪開演後に誰も座っていないとなれば、チケット抽選当選メールの画面、会員証、免許証を見せて、入れていただけないか交渉してみよう…と、これは無茶か。


最後の望海…望みを胸に、インフォメーションのスタッフの方に、恐るおそる尋ねた。

「すみません。今からの公演のチケットって、落とし物で届いてます…?」
「本日の〇〇時公演のチケットですね。少々お待ちください。」

数秒後、スタッフの方が戻ってこられた。

「お待たせいたしました。お名前をお伺いしてもよろしいでしょうか。」
「虹風 想蒔です。」
「こちらでお間違いないでしょうか。」

すっと出されたチケットには、紛れもなく虹風 想蒔(の本名。誤解のないよう念のため…)と、メールでも確認した席番号が記載されていた。

金券扱いゆえに免許証の提示と名前等の記入は必要だったが、チケットは戻ってきた。
急いで公演プログラムを購入し、開演5分前ぐらいに着席した。


拾ったチケットをインフォメーションへ届けてくださった方には、なんとお礼したらよいだろうか。その方のおかげで、望海さんの宝塚歌劇団サヨナラ公演を生で見納めできたのだから。


そして、これは望海さんからのメッセージにも思われた。
大切なものを見失わないようにね、と。


実家へ戻ってこの話をすると、新事実が発覚した。
同じフリーペーパーを既に母が入手していて、私にあげようとしてくれていたという。

もし、先に渡してくれていたら、開演前をずっと優雅にすごせていただろうに。チケットを落として危うく観れないところだった!という事件も発生しなかっただろうに。

ただ、愛する望海さん絡みのネタが増えたし、チケットは入場認証で発券して財布にすぐ入れるというクセもつけられたという点では、良かったのかもしれない。


おわりに

宝塚大劇場では上記以外にも、フォトスポットで写真を撮ってくださった、トイレへ置き忘れた傘を届けてくださっていた…など、数々のやさしさに救われたことがある。

観劇は、私を幸せにしてくれる。そこへもって、劇場スタッフの皆様や同日に劇場にいらした方々のこうしたお心遣いを受ける…。
そんな日は、一層素敵な日になったなぁと嬉しくなる。それを日記に記しているときも、後日そのページを見返したときも温かい気持ちになる。

今は難しいが、かつては観劇予定なしに宝塚大劇場まで行ったこともある。
マルーンカラーの電車に乗って宝塚駅で降りるなり胸が弾みだし、劇場へ足を踏み入れると心が満たされていくのを感じる。
これは人々の温かさに満ちた空間が、そうさせているに違いない。

宝塚歌劇団が大好きだ。
宝塚歌劇団をご卒業された望海風斗さんが大好きだ。
そして。宝塚大劇場が大好きだ。

#やさしさに救われて

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