見出し画像

入学式(付:「法と動物」論評)

 4月29日、慶應義塾大学通信教育課程の入学式に行ってきました。
 写真は、中庭で撮ったものです。お天気にも恵まれ、とても清々しい気持ちで臨みました。
 入学式のあと事務局からの話を聞き、その後約1時間の休憩をはさんで午後は全体オリエンテーションと学部別のオリエンテーションを受けました。「レポートは1回や2回では受からないと思っていてください。」という先生のお言葉に(解ってはいながらも)身の引き締まる思いです。

 さて、私は、現行法で動物が「モノ」扱いであることがゆえに起きている矛盾や、動物愛護法の限界に関心を持っています。「動物法の父」と呼ばれている一橋大学の青木人志教授の本「法と動物ーひとつの法学講義」を読んで論評しました。以下に載せますのでコメントよろしくお願いします。
 (この文章、今回の入学選考に際して大学に提出したものです。コピペはしないでくださいね。)
-------------------------------------------------------------------------------------     この本は、初学者に法律の基本的な考え方を説明することを目的とした書籍である。
 二部構成であり、第一部は動物が登場した16の裁判例を用いて条文解釈、判例の説明を行っている。その過程で、民事責任と刑事責任の違い、刑罰と損害賠償の違い、生活妨害とは何か等、法律基礎を無理なく理解できる工夫がなされている。「損害賠償」の具体例として、動物が被害を受けた場合に人が受けた精神的苦痛に対する「慰藉料」が加えられた判例が興味深い。日本初の動物法(動物保護管理法)成立以前の1961年に、法的に「物」である動物が単なる「物」という範疇を逸脱する潮流が示されている。また、「虐待」に関する1999年施行の動物愛護管理法(以下動愛法)を根拠とした馬の虐待事件の判例紹介では、判旨における虐待の定義について学者から異論が出たことに触れている。日本における動物法の歴史の浅さが伝わる証左であろう。
 第二部は、動愛法の解説・問題点の指摘、更に、今後の動物法について述べている。著者が動愛法に特化したため、本書は著者の言う「初学者向け法律講義」とは言い切れまい。理由は①法律の一般論ではない点、②「動物の権利」議論を法的議論に持ち込むために動物の「法人化」を提案している点、③「動物の権利」論に不可欠な動物倫理について、当時主流のP・シンガーやT・レーガンの説が抜けている点、を挙げる。
 しかし、2013年に動物を「物」の範疇に収めながら一部の動物に固有の権利を認める「ノンヒューマン・パーソンズ」概念が海外で登場している。その点からも動物の法人化論は本書上梓の2004年当時としては画期的であった。 
 動物を法的に論じた書籍としては草分け的な一冊と私は評価する。
--------------------------------------------------------------------------------------

 

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?