【書肆残影】阿佐ヶ谷駅前・書楽(しょがく)

 先日、友人との会食のため、はじめて阿佐ヶ谷駅を利用した。この日は特に予定を入れていなかったので、少し早めに行き、駅北口から至近の千章堂書店を皮切りに、古書コンコ堂、銀星舎と数軒の古書店を訪ねて歩いた。中央線沿線には、駅近くに新刊書店だけでなく古書店が多くあることが知られていたので、わたしは吉祥寺や西荻などに用があるときは必ず少し余裕をもって出かけるようにしていた。
 阿佐ヶ谷といえば駅南口近くにある書楽(しょがく)が新刊書店の老舗として有名だ。西荻窪の今野書店と同様、街の本屋さんとして地元にしっかり根付いている店である。
 先日、たまたま目にした報道でこの書店が閉店すると聞いた。わたしの地元では全くないのだが、また一つ「中央線文化」を担う定評ある書店が失われていくのを残念に思っていた。
 しかし、実際、阿佐ヶ谷に行ってみると、驚いたことに書楽は八重洲ブックセンターに名を変えて存続していた。
 閉店報道後の動きは、まったくフォローしていなかったのだが、あとで確認してみると、当初、2024年1月8日に閉店の予定が1月31日まで延長され、2月1日付で事業は八重洲ブックセンターに譲渡されたとのことだった。店頭で配られていたチラシ入りのテッシュによれば、八重洲ブックセンター阿佐ヶ谷店として2月10日に開店とある。これで阿佐ヶ谷の新刊書店の命脈はなんとか保たれたのであった(店長も従業員もそのまま残るらしい)。
 わたしは、小学館や角川などから贈られた胡蝶蘭が店頭に飾られ、すこし華やいだ雰囲気の店内を見てまわり、新刊の文庫を2冊購入し、書店を後にした(2024年2月16日記)。

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