【短歌一首】 人に寄る子ガメを噛みて連れ去りし母の躾ける野生の掟
先日、池で野生の亀を見つけた。しかも、日本の固有種である「クサガメ」。
最近はどこの池や沼でも見かけるのは外来種のミシシッピ・アカミミガメ(通称「ミドリガメ」)だあった。自宅の2匹の亀も24年前にペットショップで一匹200円で購入したミドリガメ。
しかし、2023年に法令により、生態系への影響が深刻なミドリガメとアメリカザリガニは条件付きの「特定外来生物」に指定され、新たな個体の輸入や販売、池などに放すことは禁止されるようになった。
それにより、今はペットショップでもミドリガメは一切売っておらず、ほとんどが日本固有の種であるクサガメかイシガメとなっている。
池のほとりを歩いていると、水面に泡が出たり水草が揺れているところを発見。近づいて覗くと、まだ小さいクサガメの子供の黄緑色の甲羅の線が目に入った。
最初は子亀の鮮やかな甲羅のラインしか見えなかったが、注意深く観察していると、甲羅が黒く大きいクサガメが二匹近寄ってくるのが見えた。この三匹はファミリーの可能性が高い。
成人の亀二匹の甲羅は色も黒っぽく、苔もこびりついてよく目を凝らさないとすぐに水の中で見えなくなってしまう。それに比べて子亀は鮮やかな黄緑色のラインを見せながら、親亀たちよりも水面付近をちょこまかと泳いでいる。
どうも親亀は子亀の行動が気に入らないようだ。子亀が動くたびにそれを妨害するように立ちはだかる。そうこうするうちにいきなり親亀が子亀に噛みつき、何回か噛み付いた後に、引っ張るようにして子亀を促し、その後三匹とも水の中に消えていった。
まるで親亀が子亀に人間の危険性を諭し、噛み付いて叱り、危ない場所から子亀を連れ去っていったように見える一連の行動だった。
そういえば、4歳頃に、外出先で大通りを全く無警戒に渡ろうとして、ダンプカーがかなり接近してきたことがあった。通りを渡り切った自分のあとを追いかけてきた今は亡き母親の鬼のような形相と叫ぶような叱責、そしてその後に背中と尻を何回も思い切り叩かれて泣かされたことを今でも鮮明に思い出せる。ありゃ、マジで心底怖かった、ダンプじゃなくて母親が。 自分ではダンプカーを認識して多分大丈だと思って渡ったのだが。
人も亀も生命・身体の安全に関わることについては、体と経験と躾でしっかり覚えないといけないのだろう。特に野生の生き物の親子を見ているといつもそう思う。野生における生き物の母親はその辺り、とても厳しい。
猫間英介
生き物の短歌を集めました。