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最強のベルト、王座陥落!?

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私が開発した【最強ベルト】という商品がある。https://item.rakuten.co.jp/style-equal/th-ta-1-2/ 

従来のベルトの5倍以上の耐久性。文字通り、最強のベルト。素材を探しに探して、表革から芯材、縫製までこだわり、唯一無二のベルトを作り上げた。

…と思っていた。あの電話が来るまでは。

「石澤さん、楽天の他の店で最強ベルトが売られてるで!」

このベルトを共同で開発したベルトメーカーのチーフ八田さんから突然の電話。
実際に楽天を調べてみると、本当に出てきた。

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「えっ?、、、あれ???」

全く同じ。(写真から文言まで同じ・・・苦笑)

そんな馬鹿な。このベルトを作れるのはうちが依頼している工場だけのはず。他に最強仕様で作れる工場があるのか?いや、そんなはずはない。材料を仕入れるだけで2〜3ヶ月かかるのに。こんな面倒なこと誰もやりたがるはずはない。

・・・・もしや生産工場か。

ベルトメーカーのチーフにお願いして、生産工場に聞いてもらうと・・・

やはり。

その工場が他社に出してしまったというのだ。

なんと言うことだ。私も八田さんもこのベルトには思い入れがある。最強ベルトが誕生したきっかけは4〜5年前のお客様の声だった。楽天でベルトを販売していると「まだ耐久性が分からないから★-1で★4。しばらく使ってからまたレビュー書きます」という内容のレビューが何度もあった(そして、レビューが書き直されることはほぼない)。私も八田さんもその度に悔しい思いをし、「それなら購入前から絶対に強いと分かるベルトを作りましょう!」と試行錯誤を始めた。しかし、中々いいアイディアが浮かばない。ベルトを何十年も作り続け、素材に精通している専業メーカーのチーフでも頭を悩ませていた。私もメンズのビジネスアイテムのデザイナーとして知恵を振り絞っていたが全然出ない。どうすればいいかと何カ月も苦しい苦しい時間が流れる・・・・・

そんな時にふと八田さんから提案が。

「野球部のベルトはどうですか!?」

詳しく話を聞くと、野球部が3年間使い倒しても1本で十分持つ、そんな素材があるという。(ちなみにその野球部は大阪の甲子園出場校だ。)強豪野球部なので雨の日も練習する。だから水に濡れても大丈夫な素材じゃないといけない。また、スライディングもする。思いっきり地面と擦れても大丈夫な素材じゃないといけない。そして何より、着用して激しく動き回る。そんな強豪野球部の彼らが痛めつけてもびくともしない素材、それをビジネスベルトに応用し、誕生したのが「最強ベルト」だ。ポールベアというイギリス製の耐水性・耐摩耗性の高い素材を表革に採用した。また、表面だけでは強度は保てないので、左右の引っ張りに強い強固な芯材が要る。(男は芯が肝心ということだ。)そこで採用したのが本革の芯材。通常は不織布を芯材として使用することがほとんどだが、このベルトは『トコ芯』という特別な素材を使用している。トコ芯は非常に手に入りにくく、入荷するまでに2〜3ヶ月かかる。製造の段取りが非常に面倒だが、最強の称号を得るためには仕方ない。素材だけではない。ステッチも通常のベルトよりもほんの少し内側に入れ、糸切れなどが起こらないように工夫している。とことん耐久性にこだわった文字通り「最強」の強度を誇るビジネスベルトが誕生した。ビジネスベルトなんてほぼデスクワークで動きも大人しいのに1年も着け続ければ革がへたってくるがこのベルトはゆうに5年は持つだろう。

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これだけこだわったベルトはほとんど見られないし、そもそもトコ芯は中々手に入らない。そして、メーカーのチーフにも「どこにもないものを作りましょう!」と言っていたので、同じものが世に出るなんて夢にも思っていなかった。それがまさか内部からとは・・・

コロナウイルスの蔓延でファッション、ビジネスアイテムの需要は激減した。家にいるからおしゃれしない。スーツを着ないからビジネスベルトはしない。工場も厳しいのだろう。事情はすぐに察することができた。そして、物は誰かが作れたのなら他の人でも作ることができる。同じものが作れないなどということはない。iPhoneは

世に出た時に世界中を驚かせたが、SAMSUNGがGALAXYですぐに真似してみせた。逆に言えば、モノだけで差別化するということは絶対に無理なのだ。だから、工場を責めても仕方がないし、責めるつもりもない。とは言え、問題なのはその”姿勢”だ。その工場は私とチーフがこれ以上ないくらいどこにもないものを作ることに執心していたことを知っている。その上で他に出してしまったのだ。しかも、「売れているベルトがある」と言って。メーカーのチーフの落胆具合と言ったら、夜も眠れなかったのではないだろうか。その工場が折角長年積み上げてきた信頼が崩れ去ったどころの話ではないだろう。うちはその工場とは直接取引はないが、今回を機にチーフとの信頼関係を再度戻せるよう自分の姿勢に気づいてくれたらいいと思う。

その工場のように、誰にでも魔が差す可能性はある。経理担当者が不正に会社の金を着服していたなんていうニュースがその代表だ。だからこそ、経営者、リーダーはまず自分が魔が差さないようにコントロールする。そして、従業員が魔が差したときに間違いを起こさないように、日ごろから信頼関係を強固なものにし、魔が差しても実行できないよう仕組みを築いて、守らなければならない。そうでなければ自分も会社も信用してもらえないし、信頼になることもない。それは取引先だけではなく、それを使ってもらうユーザーからもだ。だから私は生産してくれるところにまでこだわる。どんな人が作っているのか会いに行き、話を聞く。作り手の心が込められているかを見る。それが大量生産品であろうと、その会社の心、つまり会社の経営者の心が反映される。iPhoneもGALAXYも見た目はほとんど変わらないし、機能もほとんど変わらないのに販売台数が全くことなるのはそこに原因があるのではないだろうか。私は、デザインや機能が模倣されることに腹を立てることはない。むしろ光栄だ。真似したいくらい良いと思ってもらえているということだから。そんなことより、私が本当に大切にしたいのは、心のこもったものを心の通い合う人と作り、それが分かってもらえる人に届けるということ。

最強ベルトは、例え見た目も機能も全く同じものが他店から出たとしても王座陥落はしない。使ってくれる人を一番大切にする気持ち、それだけはうちが最強だから。

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最強ベルト
https://item.rakuten.co.jp/style-equal/th-ta-1-2/ 

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