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ストックフォトの功罪

「ミニマル/フラットデザインは終わる、またスキュアモーフィズムが来る」というような趣旨の記事をちょっと前に目にしました。どうやら「ミニマルデザインは個性が出しづらい」というのがその論拠のようですが、ちょっと待てよ、と思いました。
無駄な装飾に逃げず、写真とテキストを巧みにレイアウトしていくデザインは、あのこってりとしたスキュアモーフィズム時代への強烈なカウンターとなったのは事実です。もともとミニマルな国際様式と呼ばれるモダンデザインに傾倒していたわたくしは「いい時代になった」と思っていて、それはUIデザインのひとつの成熟だと考えています。
フラットでミニマルなUIが主流になってから、イメージ(画像)とタイポグラフィ、カウンタースペースの関係性がより重要となり、特にアートディレクションの能力がよいUIを作る大きな技能となる、と思っていました。

しかし、実際のところ、イメージメイキングをゼロから行うのではなく、いかにストックフォトから使えるものを見つけて来るか、ということになってしまっているのを何度か目撃しました。そういえば「おれはいくつものストックフォトのアカウントを持っているのでデザインの引き出しは無限だ」と露骨に自慢する人に会ったことがあります。ふーん。また、以前デザインしていたサイトで、お客さんの実績ページに使った写真の中にストックフォトが混ざっているのに気づいて「えっ?」となったことがあります。ダメだろそれ...。ストックフォトを何枚も購入するよりも、プロのカメラマンにきちんと撮影してもらったほうがどう考えてもいいですし、予算的にもそう変わらないんじゃないかと思います。

そりゃ、イメージを大胆に使おうとしても、それがストックフォトであればおそらくカブることもあるでしょう。また、ストックフォトを使えばいいというワークフローしかないのであれば、早晩行き詰まるでしょう。そりゃそうだ。
だから、ゼロからのイメージメイキングやアートディレクションの鍛錬をやるべきだと常々言っているのですが、わたくしの作ったイメージを見て「どこの素材集を使ったんですか?」なんていうトンチンカンな質問がたまに来るのでイラッとします。そういうご時世なのでしょうか。ちょっと汚い言葉を使います。アホかと。

それと、フラットな引き算のデザインで重要となるのがカウンタスペースです。「余白空けとけばいいんでしょ」というものではなく、高い平面構成能力に基づいたスキルなしには、画面の均衡は保てません。できているようで、カウンタースペースをいまいち活かせていないデザイン、割と見かけます。そもそも平面構成のスキルは、どんなトレンドが来ようと必要不可欠で、今だけのものではありません。

それと、最初の記事の内容に立ち戻ると、スキュアモーフィズムの方が、よほど個性を出しづらいと思うんですが、皆さんはどうお考えでしょうか?

Webフォントサービスを片っ端から試してみたいですし、オンスクリーン組版ももっと探求していきたいです。もしサポートいただけるのでしたら、主にそのための費用とさせていただくつもりです。