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舞台「ムーラン・ルージュ!ザ・ミュージカル」|感想(映画比較も)

Moulin Rouge! The Musical

⚠️これから観劇される方へ⚠️
音に弱い方には耳栓の使用をおすすめします!!!
持参し忘れた場合でも、正面入口から入ってすぐ左手にある受付でお願いすれば無料でもらえます。
席にもよりますが、爆音・ビート音がとてもきついので、心配な方はご準備を!

ライブ等で耳をおかしくしてしまう人も実際にいますからね。音はバカにできないので一応注意喚起しておきました。


さて、気を取り直して。


クリスチャン・・・甲斐翔真さん
サティーン・・・平原綾香さん
公爵・・・伊礼彼方さん

の上演回を観てきました!キャストはミュージカル好きの友人おすすめの組み合わせです。

私はミュージカルには全然詳しくなく、友人に誘ってもらってたまに行くくらいです。ちなみにこれまで観劇したものは、
「オペラ座の怪人」
「レ・ミゼラブル」
「マイ・フェア・レディ」
「メリー・ポピンズ」
「千と千尋の神隠し」(ミュージカルではないけど)
で全部かな、多分。

個人的には地味で静かなものが好みなので、決して舞台作品と相性が良いわけではないです。
それでも、生のミュージカルを見ると毎回感銘を受けます。躍動するキャストさんたちのエネルギーのほとばしりに圧倒されて、自動的に涙が出てくるんですよね。舞台に近い席だとなおさらです。

今回も前方下手(左側)の席で、なんとなんとキャストさんが何度も目の前に来る場所でした!甲斐くん、平原さん、伊礼さん、それからジドラー役の橋本さとしさんなどを間近で見ることができ、とても興奮しました。
音響装置のど真ん前でもあったので耳栓必須でしたが。。


ネタバレ含む感想

全体的に、映画より話が分かりやすくなっていると感じました。映画版で冗長だったところは省かれ、逆に説明不足だったところはエピソードが追加されるなど、工夫が凝らされていました。

特に明快になっていたのが、公爵のキャラクター設定
サティーンに上流階級の服を着させ「私に見合った女になれ」(ニュアンス)と言うシーンが挿入されたことで(映画版にはなかったはず......)、公爵はサティーンを美しいアクセサリーのようにしか思っていないことが読み取れました。お金持ちで、自分の地位にプライドを持ち、無意識のうちに他人を見下すキャラクターです。朝ドラ「らんまん」の高藤さんそのまんま。笑
文無しだけど若くて夢と愛だけはあるクリスチャンとの対比が綺麗にできあがっていました。
映画では公爵の描写が薄く、「執着心とライバル心を謎に燃やしているお金持ち」みたいな印象しかなかったので、ミュージカル版の脚色は効果的だったと思います。
伊礼さんの気品、余裕、色気が公爵にピッタリなのも良かったです!

また、クリスチャンとサティーンの心情変化を映画より丁寧に追っているので、共感しやすかったです。
映画だと唐突で話についていけない部分が多く、「え?なんで好きになったの?」「え?今どういう気持ちなの?」と疑問が湧きに湧いてしまい、私はあまり集中できませんでした。
でもミュージカル版では豊富な楽曲を駆使しながら段階を追って心情描写をしているため、気持ちにシンクロしやすく、より楽しむことができると思います。


ここからは私が好きだった場面をふたつ紹介します。どちらもミュージカル版オリジナルのシーンです。
Your Songも曲は大好きなんですがこの記事ではカットします。。


Firework

まずはサティーンのFirework

もともとケイティ・ペリーの原曲が大好きなので、イントロでもう興奮しました。

原曲はエネルギッシュな応援歌ですが、ムーラン・ルージュ版では無力感に悩みながらも自分を鼓舞するような歌に聞こえました。平原綾香さんの深みのある声によって、切なさと奥行きが加わっていた感じがします。

訳詞がとっても素敵だったのでそこにも注目していただきたいです!
細かいところはあまり覚えてないのですが、Do you ever feel like a plastic bag?をバッサリ切り捨てて、paper-thin(紙切れ)のほうを採用していたのがセンスあるな〜と思いました。
like the Fourth of Julyを「祝祭の」としていたのもすごい!アメリカ独立記念日の"祝い"のエッセンスだけを抜き出して、かつリズムに合う単語を持ってくるのがすごすぎました。
原曲のメロディも世界観も損なわず、でもムーラン・ルージュ風味にしていくその技術の高さに舌を巻いてしまいます。
訳詞は歌手のUAさんが担当されています。JR東海のCM「会いにいこう」を歌っている方ですね。


Chandelier

そして何を隠そう、私が一番泣きそうになったのがChandelierでした。これめっちゃ好きだった〜!

これもね、シーアの原曲大好きなんです。あの有名なナタリー・ポートマンのMiss DiorのCMソングでもあります。一般的に広く知られてるのはDiorの方かもしれないですね。

私はシーアには詳しくないのですが、調べてみると、若い頃に恋人の死がきっかけでアルコール・薬物依存症、うつ病になり、その後もバセドウ病を患ったそうです。その辛さを思うととても苦しくなります。Chandelierは自身のアルコール依存症を歌った曲だとか。

私としてはムーラン・ルージュにChandelierを組み込んだ脚本家さん(編曲担当さん?)にお礼を言いたいです。とても大事なシーンだと思うんですよ。
映画版だとChandelierはなく、すぐEl Tango de Roxanneになります。サティーン大好き愛してる!からのいきなりの嫉妬の炎!で、なかなかに落差が激しくてついていけなかった覚えがあります。
ですがミュージカル版ではChandelierにより「一度忘れようとしたけど忘れられなかった」というエピソードが加えられます。これこれ。この気持ちの変化がリアルで良い!
クリスチャンはサティーンへの思いを断ち切ろうと、緑に光る悪魔のお酒アブサンを飲みます。アルコール度数が非常に高く、幻覚作用もあるというアブサンを飲んで、はっちゃけて全部忘れちゃおうというわけです。でもね、、こともあろうに幻覚として現れたのはサティーンだったんです。忘れようにも忘れられず、夢うつつのなかでも彼女の面影を追い求めてしまうクリスチャン、、悲痛な魂の叫びがChandelierにとってもマッチしてました。
El Tango de Roxanneに向かうまでの心情変化の過程が丁寧に描かれた脚本、とても好みです。


クリスチャン像の比較 〜ユアン・マクレガーと甲斐翔真〜

終演後、友人と盛り上がったのがクリスチャン像についての話でした。

映画でクリスチャンを演じたのはユアン・マクレガー
有名な出演作といえば、やはり映画「スター・ウォーズ」シリーズになるんでしょうかね?エピソード1〜3のオビ=ワン・ケノービ役です。それから実写版「美女と野獣」のルミエール役らしい。見たけど気がつかなかった。笑
マイナーなもので私が好きなのは、ピーター・ラビットの原作者ビアトリクス・ポターの半生を描いた映画「ミス・ポター」です。ビアトリクスと恋に落ちるノーマン・ウォーン役で出演しています。

ここからは個人の見解ですが、ユアン・マクレガーはね、陰キャか陽キャかでいったら陰キャが似合うんですよ。大人しくて真面目で、ちょっと不憫な雰囲気を出すのが得意な俳優さん。そしてユアン・マクレガーは存在自体が優しい。これが一番大事です。存在がもう慈愛。
なぜかというと。「スター・ウォーズ」でアナキンにI HATE YOU!って憎しみを込めて言われてもYou were my brother, Anakin. I loved you!って言うからなんですよユアン・マクレガーは(ユアンではない)。。ダークサイドに堕ちて、たくさんのジェダイとパダワンを殺して、妻であり妊娠中のパドメの首をも絞めたアナキンに、とどめを刺せなかったんだよユアン・マクレガーは(だからユアンではない)。。
オビ=ワンはあくまで役だったとはいえ、ユアン・マクレガー自身そんな優しさと愛をその身に湛(たた)えている人です。実際どんな人かは知らないですが。笑

そんな彼が演じるクリスチャンはどこか自信なさげで、純朴で、恋とか愛に夢を見過ぎている感じのかわいいキャラクターです。年下感が強かった。オトナなお姉さんの色香にやられてしまって、クラクラしながら必死で背伸びする姿は子羊のよう。自分の恋心に振り回されて、うまく制御できてません。
サティーンはそんなかわいいクリスチャンに心をほぐされ、癒されているはずです。力関係はサティーン>>>クリスチャンかな。
そしてきっとユアンのクリスチャンはサティーンの死から立ち直れない。サティーンをずっと心に抱いてひとりで生きていきそうな感じがする。。
この雰囲気は、ユアン・マクレガーだからこそ醸し出せるものだと思います。


ミュージカル版のクリスチャンはダブルキャストですが、私が見たのは甲斐翔真くんです。
彼はミュージカルデビューしたのが2020年だそうです。まだ若手ながら帝国劇場で主役を張っているので、素人からしてもすごいことが分かります。
実際、ベテランキャストに引けを取らない堂々たる姿はとても頼もしかったです。そして何よりも楽しそうに演じていて、見ていて爽快感がありました。
若々しく伸びやかな歌声がとても素敵で、すらっと背が高くて手足も長くて、私にはファンが増える音が聞こえました。笑

そんな甲斐くんクリスチャンは、ユアンクリスチャンとは対照的に、陽キャです!笑
あふれる若さ。あふれる情熱。あふれる自信。故郷で甲斐クリスチャンの帰りを待ってる女の子が数人はいそうなモテ男って感じがします。なので、サティーンに一目惚れしちゃって後先考えずに猛アタックしちゃうのも頷ける。甲斐くんクリスチャンはグイグイいってなんぼです。なんというか、激しい恋心に自分から飛び込みに行ってる感じなんですよ。でも決してチャラチャラしてるわけではなく。単純に、ひねくれていなくて自分の心に正直なんだな、というような印象を受けます。要するに裏表のない真っ直ぐな好青年なんです。
サティーンはそんな年下の彼の熱量と頼もしさにほろっときちゃったんでしょうね。僕と恋しようよ!と言われて、なんか楽しそうだしついて行っちゃおうかな、みたいな。力関係は映画とは違ってクリスチャン≧サティーンという印象がありました。
ミュージカルオタク界隈では、甲斐くんクリスチャンはサティーンが死んでもすぐ立ち直れそうだと言われてるらしいです。なんか分かります笑。どんな恋でも栄養にして成長できるタイプね。サティーンのぶんまで僕は生きてみせるよ!と強く明るく過ごしてそうな気がします。笑


映画とミュージカルどっちがいいかという話ではなく、どちらにも面白さがあるし、自分なりに比較して見てみるのも楽しいと思いました。



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