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『人生にはやらなくていいことがある』柳美里

苦しんでいる人の苦しみは、その人自身のもので、他者であるわたしに同じ苦しみを苦しむことなんてできっこない。
けれど、その苦しみに向かって自分を開くことはできます。
何故なら、わたしは、苦しみに根を生やすように生きてきたから。少女時代のわたしは、自分の苦しみを親身になって聴いてくれるのは自分しかいないと思い、自分に話聞かせるように書いてきたから――。

「人生にはやらなくていいことがある」p.63


いわた書店さんの一万円選書、五冊目。

最近はめっきり本が読めない。

時間はたくさんあるのに、身体は動かず字も読めないし机にも向かえない。

何に対しても否定から入って、新しいものを受け容れるのも難しい。

そんなときに、何か意味のあることをしなければと本書を手に取った。

柳美里さんのほかの著書は最近読もうとしたけど、途中までしか読めなかった。

誰かに選んでもらった本ならどうにか読めるかもしれないと思ったので読んでみた。


結論からいえば、本書はいまの私の心には入ってこなかった。

本書では柳美里氏のヒストリーが綴られている。

恋愛、金、家族、災害、死…

その人にはその人の苦労がある。他者として他者の苦しみに向き合うにはどうしたらよいか、ということに主軸が置かれている。

柳氏の過去も赤裸々に語られている。その人の経験はその人のものであり不可侵である。

その上で、わたしが本書を通して感じたのは、結局聞こえてくるのは成功者の声だけだなあということだった。

社会的に地位があり、名前が通っている人。

書くことを通じて社会を見通すことができる人。

誰かや何かに影響を与えられる人。

結局そういう力のある人の声しか聞こえてこない。

力のない人は声を上げても通らない。忘れられる。

そもそも声を上げる力さえ湧かない。


他人の痛みは他人のもの。

そう遮断してしまっては何も変えられないことは分かっているけれど、自分の立場?とか、持つ特権?とかそういうものには意識的である必要があると思う。しんどいなあ。

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