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【読書紹介】アンデシュ・ハンセン著『スマホ脳』

今日で2024年が1/3過ぎるという事実を受け入れられません。あと、毎年この時期に似たようなこと言ってる気がします。やべえ、進歩がねえ。

前から気になっていたけど触れずにいた、アンデシュ・ハンセン著の『スマホ脳』。累計発行部数は60万部越えとなり、”2021年最も売れた本”として話題にもなった本です。

触れてこなかったのは、『退屈すれば脳はひらめく』『限りある時間の使い方』などで、スマホのデメリットはそれなりに知っていたからなんですよね。知ってる内容ばかりだったら要らないんじゃないか?とも思ったのですが、結局、後ろ髪を引かれて読むことに。

本書は、進化論的な面から脳の機能とそれを獲得するに至った経緯を解説し、スマホやSNSが、いかに脳を”ハッキングする”かを説いた内容となってます。ただ、スマホの問題点だけを挙げるのではなく、研究の難点や人の特性についても取り上げ、本書の内容そのものが完全ではないことも踏まえた上で書かれているのが、好印象でした。

たとえば、以前ではデジタル学習で効果が!みたいな記事もありましたが、今ではアナログの学習を推奨したり、デジタル学習についての慎重論が出るなど、研究というものは時間経過とともにいろいろ変わっていきます。

検索していく中で知ったのですが、時代を先どってデジタル学習を推進していたスウェーデンは、紙とペンに戻そうとしているそうな。

実は近年、特に2016年から2021年にかけてスウェーデンの児童の読解力は低下している。小学4年生の読解力に関する国際的な評価である「国際読解力調査(PIRLS)」において、ヨーロッパ平均は上回っているものの、毎年ポイントを下げているのだ。

上記リンクより引用

これから先、もっと時間が経つと同時に、デジタルの光と影にどんどん焦点が当てられ、良い面と悪い面が明らかになっていくと思われます。なので、「あくまで今わかっていること」を本書『スマホ脳』で取り上げている、ということには注意が必要かな、と。

ただ、同時に、うわー!分かる!となった点もありまして。2012年から精神科を受診する若者が急増していることが述べられているところなんですが。

2011年に、米国の若者は以前より孤独を感じるようになり、眠りも悪くなった。以前のようには友達と会わなくなり、デートもせず、アルコールの量も減り、運転免許を取ることにも関心が無くなった。同じ年にiPhoneが高級なガジェットから、年間売り上げ1億2000万台を超える存在になった。この歳だけで2007年~2010年と同じ台数が売れたのだ。また、スマホからつながるインターネットが本格的に普及し、突如として若者のほとんどがスマホを手にするようになった。
ここまでの研究結果から、「多くの若者が精神状態が悪くなって受診した原因はスマホにある」と推測することはできる。一方で、過剰に反応しすぎなのではという感覚もぬぐえない。……
(中略)
……だが、なぜ2012年に急増したのか。精神的な問題を口にしたり、精神科を受診したりするのは、何年もかけて徐々に変わってきたことだ。それに、アンケート調査では精神的な問題を隠す理由はないはずだ。なのに、匿名のアンケートから若者の精神状態がどんどん悪くなるのが伝わってきているのだ。

第7章 バカになっていく子供たち 192~194ページより

今の家に引っ越して、今年で14年になるのですが。自分の部屋を持つようになってから、しっかりとした睡眠がそこまでとれなくなりまして。引っ越した当初、自分は浪人していたのもあり、社会と隔絶された感覚があったことが、不眠の原因だと思います。
その後。なんだかんだで通信制の大学で学ぶことになったのですが、入学した2012年に、太っ腹な高校生時代の友達から、iPhone4Sを譲り受けまして。その時が20歳。たしかにそこから、それまで以上に不眠症に悩まされたことを、強烈に思い出しました。
特に、早く寝ても3~4時間で起きてしまう”中途覚醒”という症状に、何度もイヤな思いをしました。眠たくなって22時にベッドに入っても、翌1~2時くらいには、目がさえてしまう。眠れないので、親に迷惑をかけないようこっそり動きながら、夜間に勉強したりTwitterやってたなぁ……。
また、いわゆる”ツイ廃”になり、RTした数も含めると、総ツイート数が10数万になってたこともありました。思い返せば、1日6~8時間はTwitterやら、YouTubeやニコニコの動画サイトに触れていて、勉強や運動から遠ざかっていましたね。もし今、昔に戻れるなら、過去の自分をぶん殴って、筋トレとウォーキングと勉強とバイトをめちゃくちゃやらせると思います。

一応、Twitterは2017年にアカウントを削除し、YouTubeも何度か見ない期間を作ったりして、何とか距離を取ろうとするようになりましたが。たしかにあの頃、いろいろ困りましたね。不眠もそうだし、自信というものが本当になくなって、バイトもしなきゃいけないのにしなかったり。当時は体力に自信もなかったので、「こんな自分に、働ける仕事なんてあるのだろうか?宝くじで高額当選して、社会の隅でおとなしくしていたい……」と本気で思っていました。まぁ、宝くじの高額当選は、今でも思ってますけど。
ちょうどスマホを手に入れた期間、ネットにほぼ全身ズブズブに入り込んでいたこと、それらによってか不眠を含めた健康問題に悩まされたこと。本書を読んで、強烈によみがえりましたね。たしかにあの時期、黒歴史だなぁ。今も軽く寝れなくなったりしますけど、自信喪失していたあの頃よりは、まだマシ……かも。正直いろいろあちこちガタが来てるので、割といい勝負してるかもしれませんが。まぁ、お金は以前より持てるようになったし、体力的な不安はかなり解消されたのは、前進してる証拠かな、と。

まだまだデジタル技術の発展のまっただ中であり、人の脳には可塑性というものもあるので、何世代か先に、デジタルの難点を克服した人類になっている可能性もあります。
ただ、現状の研究結果では、まだまだ問題点の方が多いようです。学習効果の低下、不眠、精神的な問題を訴える若い世代の増加。国全体として、一個人として、どう立ち向かえばいいのか?スマホを手放せばいいのか、それとも持ちながらうまく制御できるやり方があるのか?まだしばらくの間は、試行錯誤が必要なのかもしれません。


最後に、いろいろスマホ断ちをして失敗しまくっている人間の、「これはやめとけ」と「これは効果があった!」を書いていきます。

スマホを触ってしまうそもそもの原因は、本書の第3章にも掲載されているように、脳内物質ドーパミンの働きと、各種サービスによる”不確かさ”によるものです。「もしかしたら、いいねがついてるかもしれない」「きっと、あの人が新しい作品を投稿しているかもしれない」という不確実さが、ドーパミンと合わさることで、依存に切り替わっていく。SNSや動画サイトは、この「もしかしたら……」という気持ちにさせるのがとても上手いので、意志の力だけで立ち向かうのは、まず無理ゲーです。
なので、「自分は絶対に触らないぞ!」と決めるのは、やめましょう。高確率で、3日も経たずに元に戻ります。また、アプリを消すというのも、有効ではありますが、オススメできません。結局、サービスそのものに夢中になっている限りは、他の方法でアクセスするようになるだけです。

自分の中で有効だなと思ったものは、

・代替する
 →たとえばYouTubeにハマってしまうなら、登録しているチャンネルをすべて消して(可能ならアプリも消して)、別の動画サイトを見たり、自分でいろいろ撮影するなどして、代替してしまう。以前、1日8時間以上YouTubeを見ていましたが、チャンネル削除をし、ニコニコ動画の視聴をOKにすることで、3か月以上が経過した今でも、YouTubeの利用時間はほぼ0です。見ないといけない場面があったので視聴したこともありましたが、それでも合計しても5分もありません。もちろん、代替したものに依存するリスクもあるので、そこも注意する必要があります。

・スマホと物理的に距離を取る
 
→できれば別室だったり、玄関の下駄箱の上に置いておくなどした方が、効果が高い。自室でも、可能な限りスマホと物理的な距離を取ると、スマホを意識しづらくなります。部屋の反対側に置いておく、と思ってもらえると分かりやすいです。

・データを取る
 
→自分が何時間、スマホやSNSを利用しているか?というデータを収集する。最近のスマホなら、利用時間がアプリ別で確認できます。以前、10時間使っていることが分かった時は、心にきましたね……。客観的な数字を認識するだけでも、「これをどう減らしたらいいか?」という方向に考えられるようになるのでオススメ。

・夢中になれるものを見つける
 
→やりたいことに時間をできるだけ注ぎこむことで、スマホを触る時間を最小化する。一番難しいですが、一番効果的な手段だと思っています。自分の場合、サイクリングやゲームをすることで、可能な限りスマホに意識を向けないようにしています。

・料金プランのギガを少なくする
 →家のインターネット環境が人によりけりなので難しいところですが、定額制で使い放題にしたり大容量プランにするのではなく、できるだけギガを少なくすることで、使用頻度を減らさざるを得なくなります。自分は1GBのうちに収めないと料金が上がる仕組みになっているので、腐心して超えないように努めています(それでも超えるときはある)。

・ご褒美を用意する
 
→「1ヶ月間、スマホの利用時間を〇〇時間にする!」と決めて、それが達成できたら、自分の好きなものを買ったり、体験したりする。これも結構、効果がある。自分の場合、今年の2月で102時間ほどだったので、3月は100時間に設定。無事に87時間までに抑えられたため、『ジョジョの奇妙な冒険第5部』の文庫本全巻を買いました。

・運動習慣を持つ
 
→本書でも運動が推進されており、「6ヵ月間に最低52時間身体を動かすことだ」と述べられています。実際、筋トレやサイクリングなどを日常的に行っていますが、昔に比べてタフになった気がします。きついことがあってもへこたれなくなり、計画立てて考えられるようになったし、ある程度は我慢できるようにもなりました。どんな運動でも効果があり、なおかつ心拍数を上げたほうがさらに効果が高まるそうなので、たとえば通学通勤時に少し早歩きしてみる、というようなところから始めてみてはいかがでしょうか。


LINEが連絡手段としてデフォルトの状態になり、誰しもがXやInstagramを利用し、ゲームをしたり動画を見たり……というのが当たり前になった時代。スマホそのものを手放すのは、そう容易なことではありません。マジで投げ捨ててやろうかと思ったことは何度もありましたが、結局ダメでしたね。
ただ、当たり前のことではありますが、スマホを利用しようが、他のことをしていようが、平等に時間というものは過ぎ去っていきます。そして、永久に戻ってくることはありません。時間は有効に使わなければならない、ということではなく。スマホ以外にも楽しい世界はあって、そこを知らないまま年を重ねるのは、ちょっともったいないんじゃないか?と思っています。
付き合い方は、人それぞれです。また、嬉しい効果も、人によってはあるはずです。それを見つけていくことが、大事なのではないでしょうか。

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