ちゅうしゃに負けんな! −4歳の予防接種
“予防接種の為、お迎えは3時半にうかがいます”と連絡帳に書いた。
園に着くなり、オレ今日ちゅうしゃなんだと担任の先生に話す息子。そうなんだ、余裕でしょ!がんばれ!と明るく鼓舞してくれる先生の横を通り過ぎるとき、かすかに聞き取れるくらいの声でよゆーじゃないよとこぼして、教室に消えていった。4歳児にとって予防接種の注射は、そんなのへっちゃらと笑い飛ばすことはできないセンシティブな問題であろう。
夕方迎えに行くと、園児たちは園庭で遊んでいた。お母さんお迎えにきたよーと促され、園舎へもどる息子。先生と今日の様子を立ち話しながら待っていると帰りの荷物をまとめて下駄箱へ出てきた。やはり少々メソメソしながら車に乗り込んでいると、
たか、ちゅうしゃがんばれ!
泣くなよ!がんばれーー!
ちゅうしゃに負けんなー!
10人近く車に寄ってきて見送ってくれたのだ。
ありがとう!行ってくる!バイバイ!
息子も後部座席の半分開いた窓の隙間から手を振って返す。
なにか大きな手術でも受けるんだったっけ?と勘違いしそうな、それはそれは盛大な見送りだった。やはり子どもにとって注射というのは、もうとにかく気合いで立ち向かわなければならない相手なのだ。仲間が予防接種に行くなんて日は、最大限のエールで送り出すってもんだろ?ってなムードだった。
いい友だちがたくさんできたんだなぁ… ホヤホヤだった息子を初めて予防接種に連れて行った日を思い出した。わたしも母になって間もなく、右も左もわからない毎日に不安だらけだったころ。
接種票に必要事項を記入し一番最後の枠に来たとき、手が止まった。ワクチン接種による副作用の可能性に承諾する欄だった。親であることの重責を初めて感じた瞬間だったかもしれない。生まれて3ヶ月のぷにぷにの腕に、一度にこんなに何本もワクチンを打つ?この世の終わりみたいに泣いて暴れて嫌がってるのに?と、結構メンタルをやられたものだ。
待ち時間に退屈をしない工夫(基本タブレット頼み)や、今回のように夕方ならお腹減ったと騒がないように車内で軽く何か食べさたせりと、子連れで病院に行くというのは相当な段取りが必要で、母業5年目でも育児レベル3程度のわたしにはとにかく気が重い所業なのだけど、園児たちの声援はわたしの力にもなって、病院へ向かうハンドルも軽快だった。
息子は直前に泣いたけれどみんなの声援を力に変えて乗り切った。あの頃みたいに大暴れしなかっただけ大成長だった。0歳次男もこの日が予防接種デビュー。一度に3本よく耐えた。
わたしも強くなった。
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