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MVV(ミッション・ビジョン・バリュー)の作り方

MVVという言葉はみなさん聞いたことがあるでしょう。それぞれミッション・ビジョン・バリューという言葉を指し、それぞれの言葉は以下のように定義されます

ミッション

企業が果たすべき使命・役割を体現した言葉。国や社会に対して、どのような価値をもたらすのか、その企業の存在意義を表す言葉

ビジョン

ビジョンとはその企業が目指す方針・指針。どんな姿を目指し、なりたいのかを言語化したものです。中長期的にどのような目標を掲げているのか、その指針を定義します

バリュー

バリューは、上記のミッションやビジョンをどのような人たち・どのようなスタイルで経営するのか、事業を行うのか。従業員が指針とする姿勢を表します

ちなみに、必ずしもこのMVVはセットで明示する必要性はありません。いずれも対社会や投資家に対して指し示すために必要な定義ではありますが、企業の方針によってはそれを出さないケースもあります。いずれにしても、「我々はこういうスタンスで経営していますよ」ということをどうメッセージとして伝えたいのか、それをどう表現するかを体系的にまとめたものがMVVです。

事例その1〜TOYOTA〜

いくつか事例をみていきましょう。まずは売上高40兆円以上の巨大自動車企業TOYOTAです。

  • ミッション:わたしたちは、幸せを量産する。

  • ビジョン:可動性(モビリティ)を社会の可能性に変える。

  • バリュー:トヨタウェイ(ソフトとハードを融合し、パートナーとともにトヨタウェイという唯一無二の価値を生み出す)

トヨタ自動車のMVV(ミッション、ビジョン、バリュー)は以下の点で優れています。

  1. 明確な目標と方向性:

    • ミッション「幸せを量産する」は、製品の製造を超えた広範な価値提供を示唆しています。これにより、顧客だけでなく、社会全体に対する幸福の追求を目標に掲げています。

    • ビジョン「可動性を社会の可能性に変える」は、移動手段の提供を超えて、社会の変革を促進することを志向しています。これは、将来的な発展と革新の方向性を示しています。

  2. 独自性と企業文化の反映:

    • 「トヨタウェイ」というバリューは、トヨタの独自の企業文化と価値観を具体化しています。これにより、従業員や関係者が共有する理念として機能し、一貫した行動基準を提供します。

  3. 持続可能性への貢献:

    • MVVは、単に経済的利益を追求するだけでなく、持続可能な社会の実現に貢献することを目指しています。これは、環境問題や社会的責任に対する高い意識を示しており、現代社会における重要な価値です。

  4. 社会的影響力の強化:

    • トヨタはMVVを通じて、製品やサービスだけでなく、社会全体に対してプラスの影響を与えるという強い意志を示しています。これは、企業としての社会的責任を果たすことに重点を置いていることを意味します。

以上の点から、トヨタのMVVは、企業の長期的な成功と社会的な責任を結びつける効果的なフレームワークを提供していると言えます。これにより、顧客や社会からの信頼を獲得し、ブランド価値を高めることが期待されます。

事例その2〜LINEヤフー〜

次の事例はLINEとヤフーの統合によって生まれた日本最大級のテックカンパニー、LINEヤフーです。

  • ミッション:「WOW」なライフプラットフォームを創り、日常に「!」を届ける。

  • バリュー:

    • ユーザーファースト

    • やりぬく

    • 少数精鋭

LINEヤフーのMV(ミッションとバリュー)は以下の点で優れていると評価されます:

  1. 革新的なミッション:

    • ミッション「WOWなライフプラットフォームを創り、日常に「!」を届ける」は、ユーザーに感動を提供することを重視しています。このミッションは、単なるサービス提供を超え、ユーザー体験の向上と日常生活への積極的な貢献を目指しています。

  2. ユーザー中心のバリュー:

    • 「ユーザーファースト」のバリューは、全ての決定と行動がユーザーの利便性と満足度を最優先することを示しています。これにより、顧客満足度の高いサービスを提供することが可能になります。

  3. 課題解決への取り組み:

    • 「やりぬく」のバリューは、困難な課題にも積極的に取り組む姿勢を示しています。これにより、挑戦的な目標の達成やイノベーションの創出が促進されます。

  4. 効率的なチームワーク:

    • 「少数精鋭」のバリューは、最適化されたチーム構成での業務遂行を目指しています。これは、効率的なコミュニケーションと迅速な意思決定を可能にし、柔軟かつ迅速な対応を実現します。

以上の点から、LINEヤフーのMVは、ユーザー中心の姿勢、課題解決への意欲、効率的なチームワークを重視している点が特に優れていると評価できます。これにより、持続可能な成長と市場での競争力を確保する基盤が形成されています。

MVVはどうやって作るのか

ではこのようなMVVはどうやって作ればよいのでしょうか。基本的にはこういうMVVの設計はブランディング戦略の位置付けとして考え、外部の人間に入ってもらいながら客観的な視点も踏まえて作成してくのが望ましいです。

ですが、熱量の高いMVVは、やはり社内の経営陣が自らアイデアを発案していくことが望ましいので、外部も取り入れつつ、積極的に社内からも言語化していくことをおすすめします。具体的には以下のようなステップを踏むとよいでしょう

「何を一番大事にして経営するのか」を徹底的に話し合う

最初は経営陣やチームメンバー間で、それぞれの人生観や仕事観に影響を与えた根本的な経験などを共有します。これにより、お互いの思考の根源を理解することができます。

経営をする上で、何を大事にするのかは人によって価値観が異なります。プロセス重視、先輩後輩の人間関係の重視、実利主義、さまざまなタイプがあるでしょう。こうした原体験を通じて、何をモットーにすべきかを話し合います。

必ず共通項は見出せるはずです。必要であれば従業員にヒアリングをしてみたりアンケートをとることもおすすめします。まずはとにかく「我々は何を大事にして経営するのか」というテーマで共通のテーマを導き出しましょう。

このプロセスで、バリューの指針となるものが出来上がります。

「10年後に何を目指すのか」を徹底的に話し合う

次に、10年後に何を目指すのかを話し合います。3年後では少し短いので、10年、それか5年くらいを目安に考えます。

この時必要なのは、最終的なゴールを描くことです。
ワンピースでルフィが「海賊王になる」と宣言しているのと同じように、最終的に我々は何を目指すのかを言語化していきます。

〜〜業界において国内ナンバーワンになる、でもいいですし、売上100億円を目指す!でもいいですし、とにかく何か具体的な目標を掲げることが重要です。

目指すべき姿があまりにも非現実なものだと、通常は飛躍しすぎているので避けるべきでしょう。ただ、ルフィのように、本当にその姿を心から願っているのであれば宣言してもいいでしょう。いずれにしても、10年後に我々がどうありたいのか、その姿を指し示すことで、目指すべき道を明確にします。

このプロセスによって、ビジョンが固まっていきます。

「なぜ私たちはこの経営をしているのか」を徹底的に話し合う

次にやるべきことは、なぜこの経営をしているのか、その意味を話し合います。非常に哲学的なように思えますが、この思考は最も重要なミッションの設定に通じます。

トヨタのミッションは「わたしたちは、幸せを量産する。」です。車をたくさん量産し、販売していますが、トヨタが売りたいのは車ではなく、車によって得られる人々の幸せをもたらしたいのです。車は、人々のライフスタイルに溶け込んでいます。休みの日に家族と出かけたり、恋人とデートでドライブしたり、あるいは物流を支える重要な配送手段でもあり、その配送の先には人々の生活を豊かにする何かを届けているはずです。

こうしたさまざまな幸せが車という物質によって運ばれている。だからこそ、我々は車という手段を通じて幸せを量産しているのだ、ということでしょう。

このように、自分たちが行なっている事業が社会にとってどんな役割を果たすのか。その最終的なイメージを言語化します。

言語化を繰り返す

上記のステップを通じて、まずはMVVの元となるテーマを洗い出します。次にやるのは言語化です。

ミッション、ビジョン、バリューをそれぞれまずはドラフトを作り、形にしていきます。その際気をつけることは、以下の通りです

  • ミーシーな状態にすること

  • 徹底的に余計な言葉を削ぎ落とすこと

  • MVVすべてが繋がるように何度も書き直す

行動を定める「バリュー」は大抵いくつかの言葉に分かれます。その際、1つ1つの言葉がミーシーな状態であることが必要です。言葉の意味が被っていると、指針としては好ましくなく、言葉の意味をしっかり理解して、一字一句丁寧にその言葉で良いかを検証します。

また、余計な形容詞は付けないように、徹底的に削ぎ落とすことも重要です。LINEヤフーのバリューはとてもシンプルで分かりやすいので良い例です。

LINEヤフーのバリュー

・ユーザーファースト
・やりぬく
・少数精鋭

ちなみに言葉を削ぎ落としていくと、言葉同士がミーシーかどうかがはっきりします。クリアで分かりやすいキャッチコピーにしたほうがスタッフも投資家もクライアントもその言葉がスッと入ってくるので望ましいです。

いったん書いてみたら、あとはその言葉が本当に適切かどうかをひたすら繰り返し検証します。

もちろんそのフェーズでさまざまな人の意見を聞くことは大切なのですが、聞きすぎるのもリスクになります。一人一人の意見は当然異なるので、すべての意見を反映しようとしたら、確実に1つのワードに収まりません。ではどうヒアリングするかというと、「このミッションにしようとおもうんだけどどう思う?」ではなく、そうしようとした理由についての意見を聞くことです。

先ほどのTOYOTAの例でいうと、「今度、わたしたちは、幸せを量産する、というミッションにしようと思うけどどう思うか」と聞くのはナンセンスです。「私たちは車を通じて何をもたらしていると思いますか」や「車を通じて私たちは幸せを運んでいると思うが、どう思うか」という感じでヒアリングします。

MVVは事業を成長させる指針となる

MVVはコーポレートメッセージとしての側面が強く、事業とはあまり関係しないように思えますが、そうではありません。事業とも大きく関係してきます。事業を維持・成長させるために、さまざまな従業員が1つの会社のなかで役割をもって働いていますが、当然、育った環境も思考性も違う大人たちが1つのグループに属するわけなので、その事業に対する考え方や思い入れは人によって全く異なってきます。そうすると、事業そのものの形が、多面的な側面を持ってしまい、大きく成長するための舵取りがしにくくなります。どこを目指すのかもわからぬままとりあえず船を出し、航海をしていては、偶然どこかの島にたどり着くことはできるかもしれないですが、その間に人間関係はギクシャクし、不安だけが残るでしょう。

そうならないようにするためには、誰かひとり、リーダーシップを持った人間が声をあげるか、あるいは乗組員全員が話し合って、何らかの結論を出すはずです。「どこを目指すべきなのか」と。そしてその結論に至ったら、「北に行くのか、東にいくのか」「誰が操縦し、誰が海を監視するのか」というように、より具体的なアクションも定まっていくはずです。

ただ1つの船に一緒に乗っているだけでは、何もチームワークは生まれません。何が得意なのか、何が不得意なのか。一人一人の個性を知り、その個性を生かすために「役割」があり、その役割は、「目的」のために存在します。

つまり、指針が定まっていて、その指針がわかりやすく現実的であるほど、その言葉を理解し、腹落ちさせ、自分自身の価値観と照らし合わせて、協力していこうという流れを作ることができます。

MVVを作ることは、事業を成長させるキードライバーであるわけです。

さいごに

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