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日々の生活にスパイスを

人間はストレスを快楽に変えることができる唯一の生き物である。とある人が昔いってた。


何年か経って唯一ではないことを調べて知ったが、唯一でないことがどうということはない。


例えば、ホラー映画を好きになった人はどんどん背筋が凍るような映画を求める。


高いところが昔苦手だったはずなのに、気付けばジェットコースターやバンジージャンプ、果てはスカイダイビングに挑戦する人もいる。


僕はというと、辛いものが好きだ。とりわけカレーが大好物である。スパイスカレーにスープカレー、タイカレー、欧風カレー……とかくカレーにジャンルは問わない。


僕はカレー屋さんでカレーを食べる時にもう8年ほど続けてるマイルールがある。


辛さを選べるお店では、中辛から食べてもう一度そのお店に出向いた時に辛さを1段階ずつ上げるのだ。


そうして、それぞれのお店の最大の辛さを味わった時、なんだか山を登頂したような気持ちになる。


マジックスパイスという有名なスープカレー屋さんでは辛さが7段階あるのだけどもその表現が面白い。


辛さ
1. 覚醒 awakning
2. 瞑想 meditation
3. 悶絶 ecstasy
4. 涅槃 nirvana
5. 極楽 paradise
6. 天空 raputa
7. 虚空 aumair



登頂どころか飛ぶのである。笑
ちなみにここはまだ"天空"までしか食べていない。
飛ばねば。虚空の彼方まで。



関西にいた頃は毎週のようにカレー屋さんを巡っていたものだけど、関東に来てからはあまり高頻度でカレーは食べに行けていない。


しかし、最近とても美味しいスープカレー屋さんを横浜に見つけたのだ。しかもここはなんとカレーの辛さは15段階!


勘違いしないでほしいのだが、ただ辛ければいいというものではない。僕の中で某カップ麺の獄激辛のような化学調味料で辛さだけ追求して旨さを置いてけぼりにしたり、調和しないのは食べ物に対してちょっと失礼だというきらいもある。


そのお店のスープカレーはしかし、辛い。だが旨い!笑 3辛の時点で、一般的な中辛よりもしっかり辛口。辛いのが苦手な人は2辛か1辛、それでもだめなら0もあるのでご安心を。


僕はカレー界の中でもスープカレーというジャンルはまだあまり多く食べ歩いてない方だけど、スープカレー界では個人的な一番に今輝いている。


そして15段階の辛さときたら登るしかない。いや飛ぶしかない。メニューを開いた僕は目を爛々と輝かせた。


しかし、僕は最近あまりカレー屋さんに通えてない。横浜を訪れることはちょこちょこあるが、駅から少し離れてもいるのでそう通えるものでもない。


そこで僕はちょっとズルをする。2回目の訪問で7辛を頼んだのだ。これがすでに僕が今まで食べてきたお店の中でも辛さはトップクラスであった。だが旨い。汗だくになりながらも綺麗に完食。


そしてこの上はいまだかつて見たことのない未知である…


僕は3回目の来店にして15辛を頼むという暴挙にでた。マイルールどこいった。知るもんか。



目の前に用意されたお皿からスープをひとすくいして口に運ぶと、舌が雷に打たれたように痺れた。そうして舌を感電させながら喉を焼きつくし、胃に落ちても存在を主張する。あまりの辛さに衝撃を受けつつも後から濃厚な旨味が口に広がる。素晴らしい。


しかし4口目ほどで異変が起きる。スープが喉を通らない……喉が激痛を訴え、脳に赤信号を送りつづける。額からは脂汗が滲み出る。これは比喩ではなくてもう本当に。。。



なんとか口にスープを運んで少しずつライスと一緒に食べようとするも、途中から手も震えだした。額どころか体中汗が止まらない。暑すぎて逆に寒い。いや、だから比喩ではなくもう本当に。。。



そして完全に手が止まってしまう。僕はとても焦った。カレーは4分の1どころか5分の1も食べれてない。


自分で注文した皿を食べきれずに残すことは僕の中でお店に対する一番の失礼だと思っている。尚且つ自分の中でスープカレー界の一番に輝いているお店である。店主さんにこれはもうとても申し訳が立たない。



背筋が凍る。僕の中では下手なホラー映画より恐ろしい気持ちになった。


恐る、恐る、店主さんに声をかける。


「すいません。残りをお持ち帰りすることって可能ですか?」


「ええ、それは全然構いませんよ」


「本当に申し訳ありません……前回7辛を食べたんですが、調子に乗って15を頼んだら全然食べれなくって……持ち帰って食べたいと思ってるんですが何か辛さを落ち着かせるいいアレンジとかないでしょうか?」



「ありきたりですがバターとか、牛乳、チーズなんか入れると少しは……でもそれでもきっと食べれないと思いますよ?」



「いえ、なんとしても食べ切ります!包んでください!」



と、こんなやりとりがあった。店主さん曰く
「15辛はね危険なんです、僕でさえ10辛までしか食べれないんです 笑」とのこと。


なんでも元々10辛までしか作ってなかったのを辛さを追求する猛者たちに熱烈に乞われて15辛まで作ったのだという。


トイレから出られなくなる人も続出なのだとか。かくいう僕もその後、トイレとお友達になった。腹を抱えてのたうち周り、トイレさんと幾度となく顔を合わせた。そして結局僕はそのあと1日寝込んだ。恐るべし15辛。



そして例の持ち帰ったカレーだが。ちゃんと完食した。



小さなタッパー10個くらいに小分けして、バターやチーズ、牛乳色々と試した。辿りついたのは切った食パンにカレーを薄く広げて塗って、その上にバターと卵を乗せて焼いて食べるというのがベストだった。


もはや完全にスープカレーではなくなってしまったが、ちゃんと美味しく、そして"ほぼ"安全にいただけた。


今思えば店主さんは食べられない15辛のカレーをどうやって味付けしていたのだろう……あれを本当の調和といえるのかどうかはきっとあの極みに達した猛者達にしかわからない。。。


今回の事から得られた教訓は、ちゃんと段階を踏んで己の限界を見極めることが大切ということだ。たったレベル5のピカチュウ1匹連れて、四天王を倒してチャンピオンになどなれる訳がないのだ。


ストレスを快楽に変えることができる人間という生き物は、つまり苦難に立ち向かう力を備えており、きっと誰しもドMになる資質がある。



しかし、乗り越えたくない壁は無理に乗り越えなくてよろしい。



僕はマイルールを封印し、これからは素直に美味しくカレーをいただこうと思ったのだった。



ここまで読んでくださりありがとうございます。ありがとう、なんていいながら差し出がましいとは思いますが、




美味しいカレー情報求ム!笑

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