見出し画像

厄落とし

最後の出勤をした後、髪の毛を切りに行った。

元々切りたいなと思っていたのだけど、タイミングとかお金の問題もあり中々行けなかった。
いつ行こうかなーと思い過ごしていたのだが、辞めると決め、最後の出勤も決まり、給料も入り‥全ての条件が揃ったのが最終出勤日だったのだ。
その日は晩ご飯も夫が特製唐揚げを作ってくれる事になっていて、晩ご飯の心配が要らないのも理由の一つ。

無事に次の仕事も決まったので、心機一転新しい自分で仕事をしよう。そう思いサッサと予約。最後に切ったのは去年の8月だった。
その後面倒でずっと伸ばしっぱなしだったけれど、これからは頑張ってショートヘアをキープするぞ。と意気込み美容院へ。

初めてのところで緊張しつつなんとか入店。
**時に予約した○○です〜と伝え少し待つ。こじんまりとした店内で意外とお客さんも入っているらしい。店員さんがバタバタしているのが印象的だ。
私を担当してくれたのは女性で少しサバサバとした人だった。好き嫌いが分かれる接客というか話し方ではあるものの、こちらとしてはカットが上手ければ何でも良い。希望通りに切ってくれれば良いのだ。

そんな美容師さんから、今日髪を切るって何かあるんですか?旅行に行くとか?と聞かれた。
適当に嘘を吐いても良かったけれど、そんな事をする理由もないし正直に仕事を辞めるので厄落としも兼ねて‥と伝えた。
すると美容師さんからこんな話が。

髪を切って厄落としって案外昔からあるらしいですよ。
平安時代とかって大晦日に髪の毛先を研いで鋭くした石なんかで切って、その年の厄落としをしたんですって。
そして新年を迎えたそうですよ。
だから厄落としって理にかなってるんです、意外と。
なので凄く良いと思いますよ!


そんな昔から髪を切って厄落としなんてあるとは知らなかった。昔も今も人間のやる事って変わらないんだなと思いながらそんな話を聞いた。それからも面白い話をしてくれたり、こちらの話を聞いてくれたり。切りながら話をするなんて美容師さんは器用で凄い。プロだ。
インスタの画像を見せただけで理想というか、思った通りの髪型になるのかと不安だったけれど、全然問題なかった。かなり理想通りだし、スッキリとしたショートヘアになった。
足元に転がるたくさんの髪の毛たち。
私の一部だったそれらは、きっと今までの厄を持って行ってくれるだろう。
今までありがとう、お疲れ様。と箒で掃除されちりとりの中へ消えていく髪の毛たちを見送った。
昔もショートヘアにしていた期間があったけれど、昔よりも今の方が似合う気がする。
今は逆にロングヘアだと重く感じてしまう。
歳をとると似合うものが変わると言うけれど、これがそうなのかもしれない。
歳をとって顔の肉が減ったのもあるが。


今はショートヘアの自分が好きだ。
鏡を見て、うん、可愛い。と思う今の自分が好きだし、少し大きめのピアス、ネックレスが映えるのも好き。
こんな服も似合うかなと考えるのも楽しい。
似合う服とがガラッと変わって迷走しているけど、それもまた良い。
こうやって好きな自分でいる為に生きていきたい。楽しい。
こう思えるのも、厄落としのおかげかもしれない。髪を切っただけで毎日が楽しい。


美容師さん、ありがとう。
また伸びたらお世話になります。


めちゃくちゃバッサリ。
ここまで短いのは10年近くぶり。



サポート費用は美味しいスイーツに充てたいと思います。