「神石師」お薦めレビュー 本当に怖いゲームでできる本当の「祈り」「呪い」「祓い」
今回紹介する作品はフリーのオカルトホラーアドベンチャー「神石師」となります。思い出すと怖さがぶり返しますが、とても作者様の力を感じる良い作品なのでレビューします!
あらすじ
ゲーム概要
実世界と異界を行き来しながら霊的な事件の解決や異界からの脱出を目指すアドベンチャーゲームとなっています。主に主人公の「一 崇」を操作し、知識やアイテムを集め、それらを利用して死者の霊を成仏させたり怪異の謎を解明したりします。
探索パート以外にも時間制限のあるイベントや逃亡イベントなどもあります。物語は4話構成となっていて、それぞれにゲーム性に違いがあり、多様なゲームプレイを楽しめるのも特徴となっています。
注意点として、初見殺し的なところがあったり、ゲームオーバーやバッドエンドになる要素が多いので、細かいセーブをすることをお薦めいたします。
3つのおすすめポイント
1:「それは反則だろ!」と本当に叫んだホラー演出
このゲーム、本当に怖かったです。
ここでどんなホラー演出があったかを説明するのは興を削いでしまうのでもちろんしませんが、プレイしている間手に少しを汗をかいているのを感じていました。光と闇の使い方、水、特に汚れた水の表現など非常にJホラー的な湿っぽい恐怖に溢れた作品です。またびっくり演出もかなり強烈かつ効果的で、様々な方向から恐怖を感じることができる作品です。ホラーは単純に怖いものを出すだけではなく、演出の工夫がとても重要なのですが、本作はその演出がかなり強烈なので非常に怖かったです。
その最たるものとして、ある音の演出について、初めてそれを聴いた時素直に「それは反則だろ…!」と言ってしまいました。あれは本当に嫌だった…(誉め言葉)なので皆様もこのゲームをプレイする時はぜひイヤホンかヘッドホンをつけて、しっかり音を聴いていただきたいと思います(にっこり)
また、このゲームは見下ろし視点の2D画面で展開されるのですが、そのタイプのゲームにどうしても必要になるマップの切り替えを恐怖演出に使っているのも印象深かったです。切り替えた瞬間襲われたり、突然前触れもなく異界に飛び込んでしまったりするというものがありました。そのため常に画面移動をする時に緊張感を抱くことになります。「大丈夫かな、その際何か起きるんじゃないかな、行きたくないな」と思いながら部屋を移動したことを覚えています。「見えない」ということの恐怖を表現した演出であり、ツクールホラーにおいてとても有効な演出なのだと思います!その演出のせいで学校めっちゃ怖かったけどね!!
2:「段取り」を大事にしたことで実現する実際に祓った感覚
このゲーム、非常に「段取り」が大事になっています。
例えば捜査の過程で色々な場所を探索するのですが、その際に「特定のポイントを先に調べることで初めて調べることができるようになる場所」が少なくありません。また、先に違う場所の探索を済ませていないと入れない場所もかなり多く、攻略においてかなりの部分を順番を正確に踏んで進めていく必要があります。また、これは感覚的なのですが、一つの怪異を解決するのに必要な「段取り」が一般的なホラーゲームより一つか二つ多いように感じました。必要なフラグが結構遠い場所にあることもあったと思います。
正直、もっと自由だったり手軽に探索ができてもいいのではと思うこともあったのですが、最初の事件の結末でその理由を自分なりに解釈することができました。
事件を解決する際に実際に儀式を行うイベントがあるのですが、その際にどの順番で何をするかがとても大事になってきます。儀式を成功させるにはそこまでに資料や本を読んでしっかり祝詞や儀式の言葉や順番を覚えて、それを完全に再現する必要があります。間違えればあっけなくゲームオーバーになるのです。なのでこのイベントの際はセーブ推奨です。
しかし、これは考えてみれば当たり前のことです。
オカルトやホラーの文脈において「呪い」や「祓い」というのは、その順番や方法を厳守しなければならないというのはよく言われることです。ホラー作品で、呪いの順番や方法を間違えたことによって呪いが自分に返ってきてしまうという話はよく見ます。お祓いや除霊をする時に「一言一句間違えず唱えなければならない」というのも常識でしょう。
この作品の「段取り」「順番」を大切にするシステムが「呪い」とそれに対する「祓い」の作品内リアリティを体現しているのだと思います。単純に呪文を唱えればいいとか、アイテムを手に入れてどこかで掲げればいいとか、鳥居で祈ればいいとかではなく、しっかり順番と過程を重ねることでやっと重大な怪異を退けることができるのです。
このような工夫の結果として、事件を解決した際に「実際に祓えた!!自分が祓った!!!」と、強いカタルシスを得ることができます。最近話題の桜井政博さんのYoutubeチャンネルでゲームの面白さとして「ストレスをかけられてそれを解消することで楽しさが得られる」ということが挙げられていましたが、まさにこの作品は強いストレスと、その解消の喜びがある作品だと思います。
また、作者様はオカルトや民俗学をかなり学ばれている方だと推察されます。個人の感想ですが、「怪異や神様ってそんな簡単にどうにかできるものじゃないんだよ」ってことをゲームとして表現したかったのかな、と考えています。
3:綾ちゃんがかわいい!!
このゲームのヒロインで神石師である纉石綾の可愛さは本作においてとても重要な意義を持っています。単純にかわいい最高!って話だけではありません。いやかわいいんですけど。
今作のストーリーは、進むにつれて一と綾にとって深刻で辛い展開になっていきます。特に綾は神石師という特殊な自分の運命と、若者らしい悩みとのギャップに葛藤しながらも、決して暗くならずに前向きでい続けていてくれます。その姿は、このゲームに明るさを与えてくれる存在でもあり、また、基本的に一を操作することが多いプレイヤーにとって、綾の存在はゲームを進める推進力にもなってくれます。
とはいえ、綾は決して守られる女性という感じではなく、とりわけ怪異と戦うという意味ではとても強い存在です。それゆえに、主人公の一の関係性も、ロマンスキャラクターというよりはバディ感を持っています。でもそこに若者ゆえの揺らぎがあって、それでも過酷な運命をしっかりと受け止めて前に進む姿という多面性が非常に魅力的で、このゲームの魅力そのものになっていると思います。
もし彼女がここまで魅力的でなければ、この作品はもう少し辛さの方が先に出てしまっていたのではないかと思います。
こんな人にお薦め!
https://plicy.net/GamePlay/135366
おわりに
何度も言っている様に、本当に怖い作品でした。今回この記事を書くにあたりスクショを撮るために前半を再プレイをしたのですが、やはり怖かったです。
ただ、この怖さが単に怖がらせるだけでなく、ゲーム性の向上や物語的な意味を持っているのが非常にいい作品だなと改めて思いました。いわゆるホラー耐性がある程度ある方なら、ぜひやってみてほしい作品です。また、なかなか触れられませんでしたが、ドット絵の美しさや、セリフのやり取りも素晴らしいです。
そして、私事ではありますがこの度神石師の作者であるoka様の方からなんとファンアートをいただきました!本当にかっこよく書いていただきました、ありがとうございます!
おまけ
私が「神石師」をプレイした再生リストを貼っておきます!私が怖がっている声色などを楽しんでいただきたいですが、まずはぜひ自分でプレイしてから私の反応をニヤニヤ楽しんでいただければと思います!
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