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最近遊んだ・遊んでるゲームを一気にレビュー(2023年2・3・4月編)②フリーゲーム編

お詫び

 気づいたら5月になってしまっていたので4月に遊んだ分も追記いたします。遅れて申し訳ありませんでした…!(4月はメジャー作品やインディーゲームは新しいものを「エラーゲームリセット」ぐらいしか遊んでいないのでそちらは追記しません。私の推しはサンダーブレード(カソード)です)

メジャー作品・有料インディゲームについてはこちらをご覧ください。

注:遊んだ本数が多いので抜粋となります。

槨の家

 前にレビューを書いた「神石師」のスピンオフ作品となります。

 「神石師」内のエピソードの後日譚を描いた心霊ホラー作品です。主人公の女子高校生が幼馴染の家に閉じ込められ、心霊現象に見舞われながら脱出を目指します。探索、逃亡、二人のプレイヤー切り替えなど、前作にあったシステムが引き継がれています。
 今作は単作でも十分楽しめる作品ですが、「神石師」をプレイしてから遊ばれる方がより物語の連続性による怖さと、何より物語の持つなんともいえない切なさを味わえるのではないかと思います。心霊ホラーにとって大切な「人の心」を

 まあ、それより、えっと………

 怖い!!!!!

 ホラーには色んなジャンルがありますよね。パニックホラー、サイコホラー、心霊ホラー、モンスターホラー、ゾンビホラー、そのジャンルごとにさらに表現手法などによって細分化されたり、またそのジャンルを複合したり横断するような表現がされていきます。人によってこれが怖い、これはそうでもない、これは怖すぎてもはや見られないなど差があると思うのですが、okaさんの作品が私にはクリーンヒットするようで…、心霊ホラーとちょっとの脅かし要素のバランスがめちゃくちゃ自分に刺さるみたいで…前作に続き本当に声出して怖がってました。もちろん単に私に刺さるだけではなくホラーをホラーたらしめる演出や表現が豊かで巧みであるが故のもので、それは作者の感性と技術、研究のたまものでしょうからぜひそれを体験してください!
 今作で非常に印象的だったのは「心霊的な現象に強く触れることによる人間の変化」を描いている点です。それが作品の怖さと面白さ、そして市井の人が現象に対面していることを強調することで「実は身近なところでここんな霊的なものがあるのかもしれない」感をより増してくれています。結果終わった時に解放の感慨が強くありました。ぜひ次作では僕をマジ泣きさせてほしいです(?)
 なお自分が全力で怖がっている様子のショート動画があるのでよければ見ていただけると嬉しいです(ゲーム画面は見せていないのでネタバレにはならないと思います)

DISCOLO(U)R

 閉ざされた洋館を舞台に謎解きをしながらそこで過去に起きた事件の真相に迫っていくサスペンスアドベンチャーとなっています。
 謎解きは暗号解読や頭の体操的なもので、なかなか難易度が高いものもありますがヒントも二段階でありますし時間をかければ解けると思います。何より問題に骨があるゆえにわかったときの嬉しさがあります。また、謎を解くためにその問題文を延々と見ながら悩むだけではなく洋館の各部屋を移動して謎解きのカギを探していくというのも、ツクール製のアドベンチャーであることを生かされていてとてもよかったです。
 ゲームを進めていくたびに見えてくる事件の真相からは、クールな謎解きと対照的に人の情念を感じます。自分がこの立場だったらどのような気持ちになるのだろうと、いろいろな登場人物の立場から思いを馳せたりしました。謎解きゲームでありながら全体にウェットな感触があるのが印象的でした。そしてミステリーらしく最終的に主人公がびしっと決めてくれるのもとてもよかったです。このタイプのミステリーならここは気取って欲しいよねってところでちゃんと気取ったセリフ回しや演出をしてくれます。

おもいをつたえるプログラム ばーじょん.A

 「おもいをつたえるプログラム」の続編となります。
 時系列は前作と直結していて、前作主人公の息子が主人公になっています。前作をやらなくてもわかるようには作られていますが、前作をプレイせずに今作をプレイするのはドラクエ3をプレイせずにドラクエ11をプレイするぐらいにはもったいないでしょう!というわけでぜひ今作を遊ぶ前には前作もプレイしていただければと思います。

 前回好評だった「最初に選択肢を決めて、そのあとどうなったのかを見守る」というスタイルはゲームプレイの一部となり、は戦闘あり、ミニゲームありのアドベンチャーゲームとなっています。また、映画的・アニメーション的な演出が取り入れられていたり、ゲームの中で描ききれない設定が書かれた用語集があるなど、ゲームのスケールを拡大させています。一方もともと前作にあったキャラクターのやりとりの魅力やコミカルな面もちゃんと生かされています。
 個人的に作者であるgigabit millionさんは「プレイヤーにどう見せるか・プレイヤーの感情をどう動かすか」というプレイヤー視点を考えてそれを作品に反映させることをすごく意識されていると思っています。プレイしているとストーリーの複線回収や緩急のつけ方、プレイヤーにどこをゲームプレイという形で介入させるかなど、その工夫を細部から感じることができます。
 特筆するべきはゲームの形式で、前作は主人公の主観視点から描く物語になっているのに対して、今作は客観視点から主人公を見守るような視点になっていることで、その距離感が大人な手触りを抱かせてくれるのと、エンディングで「ああ、この物語が一つピリオドが打たれたんだな」と感じさせてくれる、その一点をもって本当にセンスと技術を感じます。
 ストーリーに込められたメッセージもAIという現代的なテーマや自己開示・自己肯定・親子関係など普遍的なものを交えつつ、ポジティブな帰結に向かっています。このあたりは個人的にディズニー・ピクサーなどの作品を思い出したりしますし、非常に素敵だと思います。全体に、工夫を凝らしてうまくスケールの大きい物語を描こうとする姿勢や、クリアした時にでるあの一言など、可愛い見た目と裏腹に「粋」で「骨太」な作品だと感じました。ぜひ、ちゃんと時間を作って前作からプレイするのはどうでしょうかあとピアちゃんかわいい。

Serpenters

 入社してしまった謎の会社からの脱出を図るアドベンチャーゲームです。
こちら、個別レビューを今月中にあげるつもりなのでそれまでにプレイしていてください!

私にとって間違いなく今年ベスト級です。

Counseling

  カウンセリング形式で複数の質問に答えていく短編ノベルゲームです。
私自身カウンセリングを受けた経験もあるのですが、前半の質問や内容は、「ああカウンセリングってこういう感じだったな」と思えるような再現性があります。そうやって答えていくと、途中から「あれ?」となり、どんどん話が不審な方向に転がっていきます。どう転がるかはここで言うのはよくないのでぜひプレイしてください。非常に短い作品なのでお時間ある時にぜひ…。
 短い作品ながら物語が劇的に変化していく、かわいいデザインだけでは済まないこちらの心に一突きしてくれるような作品です。

ショナビタンテイムチヨ

 湘南美術学院という美術予備校を舞台に、ウサギのムチヨと共に事件を解いていく作品になります。
 キャラクターの魅力と表情の豊かさが魅力で、謎解きも難しいものではないので気楽に楽しめる作品となっています。非常に遊びやすい作品ですし、エンディングにはちょっとしたサプライズも待っているので時間の空いた時に遊んでみるのをお薦めします。またセリフの中に美術業界の話がいっぱい入っていて、知らないことを学べるという楽しさもあります。石膏の話などは非常に興味深かったです。正直全く不勉強だった美術学院という世界の風景として描き込まれているものも非常に魅力的です。

贋作のゆりかご。

 とある事件の犯人と思しき女性の話を聴くという作品になります。
 本当に話を聞いているだけなのですが、ストーリーの内容や語り口、映像、BGMなどの演出が素晴らしく引き込まれていきます。人を愛するということ、あるいは人からの愛を受け入れるということについて考えさせられました。タイトルの「贋作のゆりかご」という言葉も読み終えた時に強烈に刺さってきます。こちらがその女性を見ているはずなのに、いつの間にか画面を越えて彼女に見られているようにさえ感じるようなゾクッとする怖さのある作品です。自分自身のメンタリティーが少女に通じる面があるからかもしれませんが自分自身を見透かされているような感覚がありました。また、今作の作者の作品は必ずちょっとしたギミックを作品に仕込んでいます。今作もそれはありますが作品概要に何をすればいいかのヒントが書かれているので必ずそれを確認してこの作品のすべてを味わってほしいと思います。
 作者自身も陰鬱な作品だと言っていますし、「批判的、及び差別的に捉えられる演出や発言が多数存在します。」という注意書きがあるように人を選ぶ作品だとは思いますが、刺さる人は少なくないと思いますので興味ある人はプレイしていただければと思います。私は好きです。

おまけ

今回紹介した作品は実況・配信したものがいっぱいあるのですが今回はきっと実況としても見やすい「DISCOLO(U)R」を紹介します!作者様見守りの元謎に挑みましたので一緒に謎解きしながら見てもらえれば…!!


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