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スーパー戦隊シリーズ第1作目『秘密戦隊ゴレンジャー』(1975)

※旧ブログからの移転記事です

スーパー戦隊シリーズ第1作目『秘密戦隊ゴレンジャー』は1975年〜1976年の約2年にわたって全84話が放送されました。
現在でもこの84話というシリーズ最長の話数は破られておらず、後世の作品群へ受け継がれていく要素が8割型詰まっています。
本作のモデルになったのは歌舞伎の「白浪五人男」ですが、同時代で近いのはアニメの「科学忍者隊ガッチャマン」です。
ガッチャマン」で5人1組のチームヒーローのベースが出来上がり、ロボアニメでも「超電磁ロボ コンバトラー・V」「超電磁マシーン ボルテスV」へ継承されています。
その実写版として出来上がったのが本作「ゴレンジャー」であり、様々なパロディ作品が作られる程の偉大なる原点です。

しかし、今でこそ本作はそのような「偉大なる大先輩」としての評価になっていますが、昔はスーパー戦隊シリーズにカウントされていませんでした
少なくとも「バトルフィーバーJ」〜「忍者戦隊カクレンジャー」辺りまでの時期はファンの間でも「ゴレンジャー」と次作「ジャッカー」はシリーズものに含まれていません。
1995年の「超力戦隊オーレンジャー」で「ゴレンジャー20周年」という文脈から徐々に戦隊シリーズの原点として何となく受け手も作り手も認識するようになりました。
その後、第24作目『未来戦隊タイムレンジャー』の最終回後のスペシャル回「スーパー戦隊大集合」で正式にスーパー戦隊シリーズ第1作目として仲間入りを果たしたのです。

そんな本作の魅力はもう方々で語り尽くされている気もしますが、改めてここが魅力!というポイントを私なりに見直した上で紹介します。


(1)個性豊かな5人のヒーロー

スーパー戦隊シリーズ第1作目というだけあって、非常に個性豊かなキャラクターが最大の魅力であり、変身前と変身後の双方で現行作品群に負けない魅力があります。
何より演じるキャストが素晴らしく、喧嘩最強の任侠系な誠直也、2枚目のスター俳優として輝いていた宮内洋コメディリリーフにしてムードメーカーの畠山麦、所作から見た目まで美しい小牧リサ、そしてやや地味ながらもアクセントになる伊藤幸雄
1人1人がスター級の輝きを放ち、その個性が拮抗しながらも決して邪魔することなくお互いを鮮やかに引き立て、5人が並んだ時の立体感が見事なのです。
中でもいい味を出していたのがアオレンジャー・新命明役の宮内洋キレンジャー・大岩大太役の畠山麦漫才コンビのような掛け合いが魅力的でした。
コックピット内での「行きますか?大ちゃん」「あいな!」がとても心地よく、あの強面のカリスマリーダー・海城剛にも物怖じせず話しかけられるのは彼のキャラだからこそできたもの。
そのキャラクターがよく出来過ぎたせいで「キレンジャーの錯誤」まで生み出してしまうのですが、決してカレー食うとかデブとかだけではなく、力持ちですし通信系にも強いのです。

また、特筆すべきはモモレンジャー・ペギー松山の存在であり、実写版の白鳥ジュンである彼女の存在は東映特撮において「戦うヒロイン」の地位向上を認知させるに至りました。
それ以前の作品でも、例えば「ウルトラマン」の科学特捜隊所属のフジ・アキコ隊員や「ウルトラセブン」のアンナ隊員など「戦うヒロイン」の存在がなかったわけではありません。
ただ、作品の中における活躍やチームへの貢献度を考えると、どうしても男性隊員たちと比べていまいち地味で、女性隊員の存在意義が強かったわけではないのです。
しかし、本作のペギーは男性メンバーに力では劣っても爆弾処理のスペシャリストであり、性格は冷静沈着にして頭脳明晰、かつゴレンジャーストームの起爆剤ともなります。
彼女がいなければ他の男性陣は怪人や幹部クラスにトドメを刺すこともできないことが40話「紅の復讐鬼!地獄のモモレンジャー」でしっかり描かれていました。
このエピソードで初めて「戦うヒロイン」の重要性が示されたと言え、今日に至るまで様々な戦隊ヒロインやセーラームーンプリキュアシリーズなどが作られ続けているのでしょう。

そして何と言っても戦隊レッド好きの私にとって、最大の魅力はアカレンジャー・海城剛のカリスマ性溢れるリーダーシップにあると言っても過言ではありません。
戦隊レッドについてはまた機会があれば個別に語りたいのですが、リアタイ世代ではない私ですらアカレンジャー好きな戦隊レッドの5本指に入ります。
よくスーパー戦隊シリーズを紹介する時にアカレンジャーが熱血、アオレンジャーが冷静沈着という紹介をされますが、実際のところは全くの正反対です。
アカレンジャーが熱血に見えるのはあくまで誠直也さんの任侠系の見た目と威勢のいい号令や掛け声だけであり、海城剛自身はとてもクレバーで1つ1つの行動に無駄がありません。
逆に一見冷静沈着なようでいて、その実とても仲間思いで優しいのがアオレンジャーであり、この見た目と中身が正反対なのもゴレンジャーのキャラの奥深い魅力です。

まあ、内面の人間性ストーリーテリングも含めたキャラ付けなどは後世のシリーズ作品の方がより洗練されているのですが、画面に出てきた時の迫力や存在感では決して負けていません。
変身後にもそれぞれレッドビュート、ブルーチェリー、キーステッカー、ミドメラン、イヤリング爆弾といった個別武器があり、しかも後半では敵の戦力強化に伴いパワーアップします。
最後の必殺武器であるゴレンジャーストームも単なるボールから赤いトゲトゲのボールになり、後半では敵の弱点を突いたものに変形するゴレンジャーハリケーンへと変化するのです。
まだシリーズ物のお約束が出来上がっていない1作目だからこそ出来た演出の変化なのですが、こうして徐々にベースが出来上がっていくプロセスがはっきり見れるのもまた魅力でしょう。

(2)ゴレンジャーを圧倒する個性的な黒十字軍

正義のヒーローであるゴレンジャーが個性的であるように、それと敵対する黒十字軍もまた個性豊かなメンバーが多く、多士済々の軍人たちをまとめ上げる黒十字総統の統率力も見事です。
中でも前半の山場という山場を担当し、作品全体の盛り上げに貢献してくれた鉄人仮面テムジン将軍は歴代でも印象に残る名幹部として個人的に上位にランクインしています。
ゴレンジャー前半戦の山場である42話「黒の鉄人死す!さらばバリブルーン」ではそんなテムジン将軍の魅力がこれでもかという程に描かれており、本シリーズのベストバウトです。
ゴレンジャーストームを全部受け止め、しまいにはバリブルーンごと特攻を決めようとする様は天晴れで、またそれに対抗するゴレンジャーたちの強さも光りました。

もっとも、後半になると、ギャグ・コメディの色が強くなり、石ノ森先生の漫画版は「秘密戦隊ゴレンジャーごっこ」という完全なギャグ路線へ舵を切りました。
中でもよく取り上げられるのが61話「桃色のKOパンチ!エンドボール勝負」の牛靴仮面であり、この回はもう全編にわたってシュールギャグで勝負しています。
火の山仮面マグマン将軍に至ってはゴレンジャーハリケーン・ゆで卵を頭に食らってそれが爆発したら死んでしまうという抱腹絶倒ものの最期です。
思えばこのようなシュールギャグ路線が後々の「激走戦隊カーレンジャー」の原点になっていたのだと思うと、その素地はすでに初代であったのだなと思います。
しかし、ギャグ路線になろうがゴレンジャーも黒十字軍も地球の平和をかけて戦っていたのは間違い無いので、キャラの魅力が根っこからブレることはありません。

そんな黒十字軍ですが、やはり最も高く評価すべきなのは最終回のラスボス・黒十字総統であり、最後の最後までゴレンジャーの前に強大なボスとして立ちはだかりました。
ゴレンジャーハリケーンも個人武器も効かず、しかも単独で黒十字城への変形も可能、というよりも黒十字総統の正体が黒十字城だったというオチが見事です。

攻撃・防御も完璧なのですが、唯一の弱点があって、それがゴレンジャー5人の苗字の頭文字「か・し・お・ぺ・あ」=「カシオぺア」の力でした。
つまり強大な星の力が弱点だったわけであり、ゴレンジャーたちはゴレンジャーハリケーン・カシオぺアで何とか追い詰めたのち、最期はゴレンジャーマシンと運命を共にしたのです。
昭和特撮というと、最終回のラスボスは意外にもあっけなく死んでしまうことも多いのですが、「ゴレンジャー」の最終回はしっかりと山場を盛り上げてくれます。

この最終回の大成功があればこそ、今日に至るまでスーパー戦隊シリーズの最終回を盛り上がるものにしようという流れができているのではないでしょうか。
悪役の存在がヒーローの魅力を引き立て、そしてヒーローの強さが悪役の魅力を引き立てる…そんな基礎基本が大事なのだと再確認させてくれました。

(3)魅力的なメカニックの数々

「ゴレンジャー」は「007」シリーズなどのスパイアクション映画に基づいてアクションが作られているので、後世のシリーズ作品と見比べてもメカニックをしっかり使いこなしています
飛行メカのバリブルーン、バリドリーンだけではなくゴレンジャーマシーンやバリタンク、バリキキューンなど豊富な乗り物をきちんと使いこなしているのが魅力です。
また、ゴレンジャーの個人装備を見てもシルバーショットやオートコントローラー、YTC、キーステッカーなどなど細かい武装や小道具もしっかり使っていました。
玩具販促用として使っているわけではないので、こういう細かい武器や道具を使って戦略・戦術に基づいて確実に敵に打ち勝つというのが大変魅力的です。

しかも、そのゴレンジャーのメカを味方側だけではなく敵側も逆利用しようとしたり、通信の弱点などを突いたりモモレンジャーを変身不能に陥らせたりもしています。
このように、玩具販促用にこれ見よがしの武器を登場させるのではなく(それもそれで魅力的ですが)、物語の中で自然にその道具をさらっと使っているのが魅力的なのです。
能ある鷹は爪を隠す、ではないですがゴレンジャーはいわゆる「歩く武器庫」のような存在としてイーグルが持つ最高の科学技術を余すところのなく使い切っていました。
まだ巨大ロボ戦や一対一のチャンバラアクションなどが出来上がっていない時代だからこそ、こうした細やかな知略で毎回自由に遊ぶことができたのだと思われます。
巨大ロボこそ登場しませんが、バリブルーンやバリドリーンなどのメカニックをゴレンジャーストーム・ハリケーンも含めてうまく使い熟していたのは本作ならではの評価点でしょう。

(4)外的(=公的)動機だけでは勝てない変身システム

シリーズ第1作目ということもあり、決してメインテーマではないのですが、本作では主にモモレンジャーキレンジャーを通して「外的(=公的)動機」と「内的(=私的)動機」の関係性が描かれていました。
この時代のスーパー戦隊は基本的に軍隊かそれに類する国際組織に所属しており、「お前は今日から〇〇戦隊だから戦え」「イエスボス」という滅私奉公型の組織体系によって成り立っていたのです。
しかし、だからと言って誰でもゴレンジャーになれるのかというとそうではなく、40話ではモモレンジャーが変身不能になったのを通してゴレンジャーが「選ばれしプロフェッショナル戦隊」だと描かれています。
40話でモモレンジャーが変身不能に陥りゴレンジャーは大変な目に遭いましたが、だからと言ってゴレンジャー予備軍かわ代わりのモモレンジャーを呼び寄せるということをしないのです。
それはゴレンジャーの変身システムに秘密があり、ゴレンジャースーツを着るためには体に流れる10万ボルト以上に耐えうる強靭な肉体と精神の集中力がないとなれないからという説明がありました。

逆に、55話〜67話にかけてキレンジャーの大岩が一時的に九州支部に栄転(という名の左遷)で異動になり、ゴレンジャー予備軍から熊野大五郎がキレンジャー2世として働くのですが、結局死んでしまいます。
そして最終的に正規戦士の大岩が再び呼び戻されるのですが、これはゴレンジャーになるためには外的(=公的)動機だけではなく内的(=私的)動機も経なければ真のプロになれないことを意味しているのでしょう。
また、それを通して「1人1人は弱いけど5人揃えば無敵」というのが実は必ずしもそうではないことを示しているとも言え、初代にして既にチームヒーローにありがちなツッコミへの上手い回答をしているのです。
ゴレンジャーとは決してイーグル支部所属から指名されただけではなく、第一話で黒十字軍の突然の襲撃から生き延びるという経験を通じて真の強さを手にした5人のエリートだけがなれています。
単なるチームヒーローものの元祖だからと侮ることなかれ、こういう外からやってくるであろう批判やツッコミに対する回答を用意しているところが本作のよくできたところです。

(5)「ゴレンジャー」の好きな回TOP5

それではそんな魅力的なゴレンジャーの中から好きな回TOP5を選出いたします。

  • 第5位…73話「黒いつむじ風!! 勝負だ!一直線」

  • 第4位…20話「真赤な死闘!日輪仮面対アカレンジャー

  • 第3位…40話「紅の復讐鬼!地獄のモモレンジャー」

  • 第2位…76話「真赤な潜入!! 君は海城剛を見たか?」

  • 第1位…42話「黒の鉄人死す!さらばバリブルーン」

第1話と最終回は殿堂入りなので敢えて外し、それ以外で選出しました。
それぞれ軽く説明すると、まず73話は有名な剣道仮面の回であり、最後は優しい嘘をついて剣道仮面に思いを果たさせるあkレンジャーのかっこよさが光りました。
同じ理由で20話の日輪仮面とアカレンジャーの一騎打ちも好きであり、義理人情を重んじるがゆえに滅多に怒らない海城が日輪仮面に激昂し本気で怒った時の怖さが光ります。

そして上位3つですが、40話は上でも説明したようにペギーを通じてゴレンジャーの変身システムを解説するだけではなく、ゴレンジャーがどんなヒーローかを描写してくれました。
そして2位は熱血風味なようでいて実はクレバーな海城剛のカッコよさと同時に冷静沈着なようでいて実は仲間思いの熱血漢である新命の2TOPの信頼関係と魅力がたっぷり描写されています。
そして1位はもう間違いなく「ゴレンジャー」を象徴する前半のベストバウトである42話で、テムジン将軍とゴレンジャーの壮絶な死闘に最後まで手に汗握る傑作回です。

(6)まとめ

まずはスーパー戦隊シリーズ第1作目の「秘密戦隊ゴレンジャー」の魅力を私なりに評価・分析してまとめて見ましたがいかがでしたでしょうか?
2021年現在から46年も前の作品なので映像の質や技術なども含めて荒削りな部分や物足りない面、今日の方が優れている点はあります。
しかし、そういう時代の試練に晒されてもなお古き良き魅力がたくさん詰まっており、いまだに様々なところで語り継がれるシリーズの原点であるのも納得のクオリティです。
耐久年数が過ぎている部分はあるものの、改めて振り返ってみての総合評価は間違いなくA(名作)であると断言します。

  • ストーリー:B(良作)100点満点中75点

  • キャラクター:S(傑作)100点満点中95点

  • アクション:A(名作)100点満点中85点

  • カニック:S(傑作)100点満点中100点

  • 演出:B(良作)100点満点中70点

  • 音楽:A(名作)100点満点中80点

  • 総合評価:A(名作)100点満点中84点

評価基準=SS(殿堂入り)S(傑作)A(名作)B(良作)C(佳作)D(凡作)E(不作)F(駄作)

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