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歴代屈指の変態サイコパス・ラディゲ様の魅力を解説!「変化する強さ」と「底なしの我欲」でラスボスまで上り詰めた彼の軌跡

昨晩、ゼイハブを除いたスーパー戦隊シリーズの悪役10選を書いて見たところ、是非ともこの悪役たちについて語りたいという意欲が湧いてきました。
ということで今回から1人ずつピックアップして、私の印象に残ったスーパー戦隊シリーズの悪役を1人ずつクローズアップして語っていきます。
余計なノイズが入りましたが、たとえ誰に何と言われようと私は自分のスタイルを一切曲げるつもりはございませんのでよろしくお願いします。

今回は早速1位にランクインした『鳥人戦隊ジェットマン』のラスボス・ラディゲについてその魅力を思う存分に語らせていただきましょう!
まずランキングでも軽く触れましたが、個人的なラディゲ様の魅力は大きく分けて「変化する強さ」「底なしの我欲」の2つではないでしょうか。
それは「ギンガマン」の船長ゼイハブの「完成した強さ」とはまた別のものであり、他の作品を見ても中々類を見ないものです。
そもそもバイラム自体が歴代でも灰汁が強い組織ですが、その中でトップに君臨したラディゲ様の軌跡を見ていきます。

実力はあるがやられ描写も多い序盤〜中盤

まず序盤〜中盤のラディゲは「実力」においては間違いなくトップクラスなのですが、意外とやられ描写も多く性格的にも小物な側面が多く目立ちます。
具体的なエピソードとしてはジェットイカロス合体を描いた5〜6話、女帝ジューザとの戦いを描いた17〜18話、セミマルとの戦いを描いた23〜24話辺りです。
どのエピソードも印象的なのはラディゲ様がしゃしゃり出てきては肝心要のところでやらかして作戦失敗しており、大体彼が戦犯となって負けています。
しかし、それがマイナスになっているのではなく、むしろ首領じゃないからこそこのキャラ描写が魅力となって成立したのではないでしょうか。

他にも名エピソードはありますが、序盤〜中盤のエピソードとしてはこの辺りを中心に深掘りしていきます。

既に終盤への伏線が貼られていた5・6話

まずジェットイカロス合体がドラマとして描かれた5・6話では合体妨害をするものの、結局やられるといった描写が目立ちます。
この時期はどちらかといえばジェットマン側の方がバラバラでバイラムの方がまだ団結力があったので、強く見えますが性格は小物です。
ラディゲって一貫して余計なことをしでかしては墓穴を掘って負けるというパターンなのですが、この前後編から早速それが出ています。
ただ、単独での戦闘力は圧倒的であり、なおかつ終盤に向けての伏線としてラディガンという怪人形態が登場しているのです。

画像を見ていただければわかりますが、あまりにもグロテスクな見た目に最初見たときは思わずトラウマになりました、今では見慣れましたが。
圧倒はしていますが、レッドホークらによって割とあっさり撃退されてしまっており、妨害したまではいいものの詰めの甘さが目立ちます。
スペックだけなら素晴らしいのに、欲をかいて慢心して余計なことをやらかしてはその隙を突かれて負けてしまう「ラディゲらしさ」はこの頃から健在です。
ただ、他のマリア・トラン・グレイの個性がまだ今ひとつ印象に残っていないので、まずはラディゲを全面に押し出そうとこのような形になったのでしょうか。

記憶喪失からの大逆転劇を成し遂げた17・18話

次にバイラムの真の上司である女帝ジューザが登場する17・18話ですが、ここでの見所は「記憶喪失からの大逆転劇」によって一気にトップへ上り詰めるところです。
普通「ピンチからの大逆転」って普通ならヒーロー側がそれをやりそうなものですし、実際ジェットマンも記憶喪失にはなっていないものの結構ピンチからの大逆転が描かれています。
しかし、それをヒーロー側ではなく悪側がやったという意味でも面白いのですが、よくよく考えてみたら「ダイナマン」のダークナイト(メギド王子)とかがそうでした。
まあとにかく七転び八起きみたいな形での下克上が悪の組織で描かれたという意味でも印象的で、しかもこの話の流れ自体もまた終盤の展開に向けての仕掛けとなっています。

女帝ジューザが目の上のたんこぶだというのはラディゲのみならず他の幹部たちも共通の認識のようで、最終的にはジェットマンと結託するという呉越同舟が見られました。
しかしその理由が「改心したから」ではなく「利害の一致」という点も含めて類を見ない展開であり、なおかつそれを物語中盤で1つの山場として描いており出色のエピソードです。
思えばここでラディゲの泥臭いメンタルタフネスというか、異常なまでの執念深さはこの辺りで確立され、これが最終回までのラディゲの精神性ではないでしょうか。
特にラストで虫の息になった女帝ジューザに容赦無くトドメを刺し、セミマルの卵を盗んで我が物として使う辺りの暗躍ぶりはそれまでのマイナスを完全に払拭しました。

裏次元戦士を皆殺しにし、ロボ乗っ取りもやった23・24話

次にラディゲ様が成し遂げたのはジェットガルーダを持ち込んだ裏次元戦士を皆殺しにし、挙げ句の果てにガルーダ乗っ取りすらやった23・24話の前後編です。
ここでのポイントはジェットマン側が結束力を強めることもそうですが、それと同じくらいバイラム側の暗躍もまたしっかり描かれているところにあります。
セミマルを手にしたこともあり、ここでのラディゲ様はまあとにかくノリノリで力にものを言わせていますが、やっぱりここでも失敗してしまうのです。
裏次元戦士を皆殺しにするまではかなりの快挙ですが、ジェットガルーダの乗っ取りは幾ら何でも調子に乗りすぎて6話と同じ失敗をしてしまいました。

ラディゲ様は終始どこか詰めが甘いところがあって、典型的な「勝ちに不思議の勝ちあり、負けに不思議の負けなし」を地で行く感じがあります。
その意味ではラディゲ様ってキャラ造形自体は独特ではあるものの、「負ける理由」に関しては上原正三・曽田博久ら先人が引いてきた悪の理屈とそう変わりません。
セミマルも女帝ジューザの忘れ形見というだけあって圧倒的な強さを誇り、グレートイカロスに合体してもやや苦戦気味だったことからもかなりの強さではないでしょうか。
かくしてこの話まででラディゲ様のキャラクター造形の基本が出来上がり、後半に入っても彼は数々の滑り芸も見せつつ悪の首領への道を歩んでいくことになります。

仲間割れにより下僕に落とされた中盤〜年末商戦

中盤〜年末商戦の頃のラディゲはぶっちゃけいいとこ殆どありません(笑)、魔神ロボ・ベロニカ戦まではほぼ失敗・転落・挫折の3ステップを繰り返しています。
鳩に集られてやられたり、トランを嘲笑したばかりに自分が足蹴にされるようになったり、極め付けは「俺の名を言ってみろ」で屈辱まで味合わされるのです。
この時のラディゲは本当にいいところがなく、またジェットマンの結束力が強くなるのとは対照的にバイラム側はどんどん崩壊の兆しを見せていきます。
そのきっかけは大体ラディゲかトラン(ザ)なのですが、ひたすら煮え湯を飲まされ続ける後半戦のラディゲを見ていきましょう。

とにかく余計なことをやらかす30〜34話

まず30・31話の魔人ムー編〜34話辺りまでのラディゲはとにかく「情けない」以外の言葉しか浮かんできません、それぐらいパッとしないのです。
復活させて自分に従わせようとしても反撃を食らうなど人望がないし、34話ではよりにもよって鳩に集られて池ぽちゃという無様な醜態を晒しています。
しかも意図してやったわけじゃなく、大体が「俺はイケる!」勘違いして突っ込んでは失敗を繰り返すというある種のシュールギャグになっているのです。
下手なお笑い芸人よりも笑えるのですが、まあとにかく中盤の彼はひたすら転落人生で浮き沈みが本当に激しい日々を送っています。

ひたすら余計なことをやらかすラディゲですが、負ける理由は決してそれだけではなく31話目を起点としてジェットマンのチームワークが良くなってきます
真のジェットマンになろうと決意したので実力差も徐々に埋まり始めており、それがきっかけで負けの屈辱を味合わされているのではないでしょうか。
テトラボーイ編にしたってグレイとマリアが暗躍していたようなもので、はっきり言ってトランとラディゲはほぼ置物となっています。
とてもじゃないですが、終盤で見せることになっていく強大さやカリスマ性といったものはこの時のラディゲには一切ありません。

トップとライバルの座を奪われた37話〜42話

そしてラディゲにとって最も苦々しいのはトップとライバルの座を同時に奪われた37話〜42話ではないでしょうか。
そう、帝王トランザの台頭とそれに伴う凋落であり、特に「俺の名を言ってみろ」「トランザ様!」のやりとりが象徴的です。
何とトランがトランザに急激に進化してバイラムを乗っ取ってしまうという下克上を見せてしまいました。
きっかけは長野のロケ回で作戦失敗したのをジェットマンとバイラムの双方に愚弄されたのが原因でしたが、これで彼も落ちていきます。

しかもレッドホークのライバルポジションまで奪われてしまい、やることなすこと全て裏目に出てしまい、一切いいところがありません
久々にうまく行きかけた隕石ベムの回だって、手柄をトランザに横取りされた挙句失敗の責任を転嫁されてしまいました。
もっとも、トランザに対してはラディゲだけではなくグレイもマリアも言葉に出さないだけで内心不満が鬱積していたようです。
しかし、これだけ最大級の屈辱を味わったことが終盤で跳ねるための大きな布石となっていたように思えます。

形勢逆転のきっかけを手に入れた44〜45話

雌伏の時を経て、形勢逆転のきっかけを手にすることができた44〜45話、即ち魔神ロボ・ベロニカ編であり、やっとここで運が向いてきました
三千年の憂さ晴らしならぬ3ヶ月分の憂さ晴らしと言わんばかりに、有頂天になっているトランザにいよいよラディゲが反抗の兆しを見せ始めます。
とにかくお互いに足の引っ張り合いを繰り返した挙句、トランザは二度とこんなことにならないようラディゲをベロニカの養分にしようとしました。
普通だったらここでラディゲは詰んでいたはずなのですが、何とラディゲはここからとんでもない発想で窮地を切り抜けるのです。

そう、魔神ロボ・ベロニカのエネルギーを逆に吸い取って脱出し、記憶喪失にはならなかったものの再びMIA(行方不明)になりました。
ただ、皮肉なことにこれがジェットマン側に形勢逆転のチャンスを与えることになり、見事にジェットマンはベロニカを打ち倒したのです。
このラディゲの反逆は単なる反撃の狼煙というだけではなく、本格的なバイラム崩壊の始まりをも意味していました。
それは同時に「悪の組織はこうやって負ける」ということを示しており、トランザ政権が実質ここで終わりを告げたのです。

無敵の強さを手に入れた終盤

終盤のラディゲは本当に1話1話の描写が濃密なのですが、それまでの転落ぶりが嘘なくらいに無敵の強さを手に入れてジェットマンを追い詰めます。
まずは象徴的な下克上を見せた47話、更に変態サイコパスをこれ以上ないまでに見せてくれた48・49話、そしてジェットマンとの最終決戦が描かれた50・51話。
圧倒的な強さと同時にトランザ以上の格を手に入れ、本当の意味で彼がバイラムのトップに君臨する時がやってきたのです、苦節46話、本当に苦労が報われました。
しかし、どこまで行こうと彼は所詮悪党、その繁栄は決して長続きせずに最終回をもって滅ぶのですが、一体どのようにして彼は負けていくのでしょうか?

女帝ジューザ以上の下克上を見せた47話

まずラディゲが本格的な「恐怖」「最強」の象徴として描かれた47話、今でも語り草となっている伝説のトランザの末路が描かれた回です。
放送当時大問題となって、役者たちの間でも賛否両論分かれたそうですが、とにかくこの回はラストのラディゲが廃人化する様に全てが集約されています。
ベロニカのパワーを得てパワーアップした彼は記憶喪失にはなっていないものの、負けかけていたレッドホークに共闘を持ちかけるのです。
女帝ジューザ編のセルフオマージュをもう一度やりながら、同時に強大なパワーを得て復活した新生ラディゲの強さが光ります。

「トランザ、俺の名を言ってみろ!」「ラディゲ様」のやりとりは37話ラストを踏まえつつ、非常によくできた末路です。
「トランザ、所詮貴様は流れ星!いかに輝こうと堕ちる運命にあったのだ!」というのも、単にトランザのことだけを言っているわけではありません。
これはラディゲ自身にも刺さる特大のブーメランであり、彼自身がやってきたことのツケが終盤で巡ってくることになります。
確かに再びトップに返り咲いたラディゲ様、しかしその栄光は決して長続きしないことが暗示されてすらいました。

変態サイコパスと無敵の変身形態を見せた48・49話

この話はマリアへ倒錯した愛情を向けて自分のものにしようとする変態サイコパスであり、大きなNTR同人を見せられているようなものです。
だってマリアを吸血鬼に仕立て上げ、さらにはレッドホークまで悪魔に仕立て上げようとするのがサイコパスじゃなくて何なのでしょうか?
特に49話なんて全ての尺を使って天堂竜-マリア(葵リエ)-ラディゲという昼ドラも真っ青な修羅場を見せつけられているようなものです。
本作が「戦うトレンディドラマ」なんて揶揄も含めて言われるのはこんな昼メロじみたやり取りがインパクト強いせいだと思われます、そこは否定できません。

しかし、単なるクズの間男というだけではなく、まだ正体は見せていませんがラゲムという無敵の怪人形態もまた見せています。
そう、ラディガンがベロニカのパワーを吸収したことで見せた進化形態、まるで「ドラゴンボール」のセルを彷彿とさせますね。
その力は折り紙つきでグレートイカロスを余裕で圧倒し、一切の攻撃が通用しない不死身の肉体へと進化したのです。
最初から不死身の肉体を得ていたゼイハブに対し、ラディゲはここでようやく不死身の肉体を得ることに成功しました。

ジェットマンの真の力と油断・慢心が招いた破滅の50・51話

伝説の最終話はいうまでもなく、マリアなき後のレッドホークとの一騎打ちは中々の見どころであり、ここでのラディゲ様は隙がありません
一対一の戦いでレッドホークを圧倒し、その強力なパワーで他の戦士たちすら圧倒しており、正に自身でも言っているように「真の力」を出してきました。
完全にラスボスの風格を手に入れたラディゲに立ち向かうにはジェットマンが真の強さを手にするしかなく、それが50話の「それぞれの死闘」の意味です。
そしてジェットマンもとうとう竜がリエの死を乗り越えたことで真のヒーローとなり、ラディゲもまたラゲムとして真の強さを見せて戦います。

無敵のラゲムには傷一つつけられないのですが、そこで彼の敗因になったのは何と葵リエが背中にブリンガーソードで刺した傷でした。
そう、ラディゲ様が残した唯一にして最大の汚点は「油断」と「慢心」であり、トップの座に返り咲いたことで浮かれてしまったのです。
トランザに向けた「所詮貴様は流れ星」の言葉が自身にもブーメランとして跳ね返り、最期はその弱点をバードニックセイバーでやられました。
しかし、ジェットマンを終始苦しめ続けた圧倒的な強さは本物であり、彼の破滅をもってバイラムという悪は滅びましたとさ。

欲望を「抑える」のではなく「解放する」悪

こうしてみると、ジェットマンの竜だけではなくラディゲもまた苦難と挫折を繰り返してトップの座を勝ち取った人なのですね。
むしろ、紆余曲折が竜よりも凄いのですが、そこはそれ、どこまで行こうとラディゲは所詮悪党のままを貫き通しました。
ラディゲのいいところはゼイハブとは真逆で欲望を「抑える」のではなく「解放する」ところにあったのではないでしょうか。
カリスマ性があって安定した強さを誇る大ボスタイプではなく、感情をあちこちで爆発させる小物タイプです。

しかし、だからこそそれがハングリー精神として昇華され、最終的にはトップの座に食いこめたのだといえます。
欲望をあちこちで開放して発散させ、猜疑心・批判精神・エゴとあらゆる負の感情を己が勝つためならあちこちでぶつけるのです。
それが他の戦隊シリーズのラスボスには中々ない魅力であり、進化することによってあの強さに到達したことも含めて意外性の塊ではないでしょうか。
中盤で見せた滑り芸も含めて、1人の悪役の中にどれだけの可能性があるかに挑戦し、それが上手く転がった例だといえます。

ゼイハブのような圧倒的な強さと隙のない人間力を兼ね備えたカリスマは大好きですが、それと同じくらいラディゲもまた大好きな悪役です。
最初はイキってるだけの小物かと思いきや、そこからとんでもない確変を見せて頂点に上り詰めたという意味でも独自性の高いキャラでしょう。

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