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『デジモンアドベンチャー02』は無印組&02組ではなく02組VS無印組という構造の方が続編としてすっきりまとまったのではないか?

これは割と10年前くらいから思っていたし、私も一度は小説として考えたことがあるのですが、『デジモンアドベンチャー02』は02組VS無印組という敵対構造にした方が続編としてすっきりまとまったのではないでしょうか?

先代の主人公が敵として出てくるパターンというと『ポケットモンスター金銀』の真のラスボスである前作主人公・レッドやアニメ版『遊戯王GX』の武藤遊戯&闇遊戯(アテム)がそうでした。
そして実際に「02」は当初の構想では高石タケルが主人公で兄の石田ヤマトと魂の双子である八神ヒカリがデジモンカイザー&デジモンクイーンとして立ちはだかるものにする予定だったとスタッフは公言しています。
なればこそ私は思うのですが、思い切って無印組全員を敵に回して「デジモンカイザーズ」という1つの敵組織にして、それに大輔たち02組4人+四ノ宮リナの5人が立ち向かうという構成にしてはいかがでしょうか?

というのも原作の「02」がなぜあんなにグダグダになったのかというと「無印の続編」として作ってしまったことが良くも悪くも影響しているからであり、実際「無印の続編」でなかったらもっとマシなものになっただろうと思うのです。
大輔が特に前半では八神太一の劣化版として過小評価されていたのも「太一に憧れるサッカー少年」なんて設定にしてしまったからであり、その設定がなかったら最初から「Vテイマー」の客演回や02後期のような子として描けたでしょう。
それにこれは前から何度も言ってることですが、無印組のメンバーの構成とかキャラ付けってどう考えてもヒーロー側で出すよりも悪の組織で出す方が映えるんですよね、何故かって彼らはデジタルワールドから見たら破壊者だたからです。

無印〜02で問題になっていたのが「デジモン殺しの是非」「死生観」でしたが、これに関してはアズマケイさんの小説「おれとぼくらのあどべんちゃー」のサーバ大陸編でナノモンが言語化してくれています。

「お前たちは知っているだろう、私達は本来死というものは存在しない。死んでも生き返るのだ、デジタマに。そして、それでもなおこの世界にいるべきではない、と判断された者たちはダークエリアに送られる。そこでアヌビモンという裁判官によって裁判を受けるのだ。こちらの世界にいるべきか、ダークエリアで禁固刑に処せられるか、それともアヌビモンによってデジコアを食われて死ぬという名の消滅をするかこの消滅こそが我々にとっての死だ。恐らく古代デジタルワールド期という、まだダークエリアという場所が出来ていない頃に生まれてきたそこのチコモンが、強大な力を持つがゆえに寿命が尽きていないにも関わらず、死に至っても転生できなかったような憂き目にあったのだろう。チコモンが見てきたのは、正真正銘の死だ。パートナーをその死に追いやりかけたという恐怖は察するに余りある。デジタルモンスターにとっての死とはそういうものなのだ。まだ、選択の余地があるのだ。わかるか?だが、思いだしてみるがいい、お前たちの敵だったデビモンはどうなった」

ナノモンが詳細に言語化してくれているこれを端的に表すとこれです。

そうなのです、人間世界とは違ってデジタルワールドには「死」という概念が存在せず、死んでもはじまりの街でデジタマに転生するので、本来ミミ・京・伊織辺りがデジモン殺しに敏感になるのはおかしいのです。
人間世界の尺度で考えるから話がややこしくなるだけであって、「郷に入っては郷に従え」で考えると、デジタルワールドでデジモンを倒したりデジモンが死んだりしたからって死を悼む必要はどこにもありません。
このシステムに近いのは「ドラゴンボール」の死人復活のルールと同じであり、ドラゴンボール7つを揃えて1年以内に死んだ者の魂であればこの世に復活させることができるという仕組みなのです。
それを「電脳世界」というデジタルワールドならではの理屈を用いて合理化したのがデジタルワールドにおける「転生」というシステムであり、だから本来は太一たちがあんなにデジモン殺しで悩む必要はありません。

「命より重いものはない」などというミミ・京・伊織・タケル・ヒカリが主張する感覚はあくまでも日常の平時の理屈であって、何人もの命が当たり前のように散っていく非日常の戦争でそんなことを気にしていては成り立ちません。
裁判にしたって同じようなもので、殺人事件が起きるたびに人命の価値を主観で議論していたら話がややこしくなり裁判所は公平かつ客観的な判断ができなくなるので、あくまでも量刑と犯罪者の動機や情状酌量の余地などを真剣に議論します。
とはいえ、歴史的な大犯罪(地下鉄サリン事件や秋葉原事件など)でもない限り「死刑」に処されるということは滅多になく、だから通常の社会ではそれでいいのですが、戦いとなればそんな理屈は余裕で吹き飛んでしまうのです。
実際に「Vテイマー」でも八神タイチをはじめテイマーたちが一々デジモンの死で悩んだり躊躇したりしたことがあったかというとありません、何故ならば戦争において日頃の礼儀やマナーなんて守っていたら焼け死んでしまうから

少なくともデジモン同士が殺し合う世界においてはデジモンの命もまたいつでも補充可能な消耗品でしかなく、死んでも何度も転生可能なので子供達はそこを気にすることなく存分に戦うことができるのです。
「命は何よりも大事」なんてなんの役にも立たない綺麗事を戦争の世界で振りかざしたって無駄です、だから私は無印や02、または黒歴史の「Tri.」でデジモン殺しを一々躊躇うことがそもそもおかしいことになります。
それを「02」ではダークタワーデジモンだからとか変な理屈つけてましたが、ブラックウォーグレイモンがそうであるように、たとえダークタワーから生まれようと命を持って生まれた時点で同じデジモンに変わりはありません。
問題はそのことをきちんと太一たちや大輔たちに教えていなかったデジタルワールドの管理側の怠慢であって、特に無印のゲンナイは暗黒の力によって老化させられていたのでその辺りの説明をしていなかったのです。

とはいえ、じゃあだからといって次々と無益な殺生を行っていいのかというとそういうわけではありません、上記の小説でも言われているように原作無印の太一たちは本来ならデジタルワールドの守護者を殺してしまっていました
デビモン・エテモン・ナノモン・ヴァンデモンは本来であれば「闇の住人」にして「ダークエリアを治める住人」なのですから、暗黒の力に染まっていたとはいえそれに気づかず「ウィルス種=闇=悪」という価値観で殺してしまったのです。
まあデビモンに関してはエンジェモンが自己犠牲をしなければ浄化できなかったので仕方ないとしても、メタルエテモンとして復活したエテモンや魂の浄化をしていなかったがために怨霊として残ったヴァンデモンは明らかに無印組のやらかしでした。
太一たちがヴァンデモンをあの時ちゃんと浄化していれば「02」終盤のベリアルヴァンデモン戦は発生しなかったわけであり、考えれば考えるほど「02」って「無印組がやらかした所業のツケを大輔たちが支払わされる」という理不尽な構造です。

本来大輔たち02組にとっての無印組は「」であって、敵対関係にある者同士がそれすら知らずに「仲間」「味方」としてやっているから話が余計にごっちゃになって本筋がブレてしまうのはないでしょうか。
だから太一たちをスーパー戦隊でいうところの悪の組織みたいにしてしまって、八神太一がデジモンカイザーで武之内空がデジモンクイーン、泉光子郎がその側近で他が幹部連中にすればいいのです。
そうすれば原作のデジモンカイザー=一乗寺賢ですらも裸足で逃げ出したくなるほどの悍ましい敵組織が出来上がり、そこに敢然と立ち向かう大輔たち02組の少数精鋭の活躍を描くチームヒーローにできますから。
四ノ宮リナとブイブイを攻撃の要、大輔とブイモンが守りの要としてアーマー進化路線で極めさせて賢が闇代表で、京と伊織がそのサポート役に徹すればちょうどいいバランスとなることでしょう。

そしてそんな敵組織たる無印組を大輔たちがやっつけていく快進撃にしながら、ラストはデーモンやバルバモンら暗黒側との決戦で太一たち無印組は彼らに利用されていた被害者とでも落ちをつければ成り立ちます
そうすれば「Vテイマー」の神話をアニメで再現することにもなりますし、大輔たちも変に無印組に出番を奪われることなく、無印組のやらかしを大輔たちが支払う構造にも一定の筋を通すことができるでしょう。
また、古代種デジモンVS現代種デジモンという構図もロマンがありますし、最後は是非とも大輔とリナのアルフォースブイドラモン&マグナモンのコンビで七大魔王相手に立ち回る展開にすれば輝くはずです。
まあ無印信者は猛反発しそうですけど、そもそも原作の無印自体が既存のモンスター育成ゲームやヒーローものに対してひねくれたアンチヒーロー作品の立場を取っているので決して正統派の王道ヒーローではありません

だから、02組をコテコテの正統派として描いて無印組を悪役として描く方向に持っていけば一周回って見応えある作品になっただろうになあと惜しまれます。
中途半端に味方側にするからしっちゃかめっちゃかになっただけで、悪にするなら徹底的にやった方がスッキリするものです。
無印信者からの批判が殺到するって?「フロンティア」「セイバーズ」で正義の味方のはずのロイヤルナイツやイグドラシルと対立させてるんだし今更でしょう
少なくとも「Tri.」「ラスエボ」みたいなの出されるよりはそっち路線を振り切って詰めてやった方が面白いのできたんじゃないかなあと私は思うのですがね。

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