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真田弦一郎はなぜ関東決勝S2で「雷」と「陰」を使わなかったのか?本当に単なる手抜きだったのか?

真田弦一郎と越前リョーマの試合は今見直しても面白いのですが、やはり全国決勝S3の真田VS手塚で「雷」と「陰」という2つの究極奥義を封印していたことが判明しました。
幸村は「手塚が百錬自得を封印していたように、真田も2つの究極奥義を封印していた」と言い、真田もまた「これが風林火山の真の姿だ」と自慢げに言っています。
そうなるとどうしても気になるのは「じゃあなぜ越前リョーマとの試合では出さなかったの?」という疑問であり、これは長年私の中で引っかかっていました。
手抜きして「負けました」だったとしたらあまりにも真田が格好悪すぎて無様なのですが、ただ立海大周辺のドラマを合わせて考えていくと納得のいくものです。

結論から言えば真田は決して越前に対して手抜きをしていたのではなく、「雷」を酷使することで訪れる弊害に陥ることを恐れていたのではないでしょうか。
手塚VS真田の試合を見ればわかりますが、あの試合は手塚は手塚ファントムに零式サーブまで打って左肘が鬱血して腫れ上がっていました。
一方で真田も「雷」の高速移動は人の限界を超えた神業であるため1回や2回ならともかく何回も連続で使って足に限界が来ないわけがないと幸村は説明していました。
まず理由の1つはこれであり、真田がもし越前リョーマとの戦いで「雷」を何度も使ってしまうと真田の両足に限界が来て自滅してしまいかねません

次に考えられるのは「越前リョーマが無我の境地を使える」ことであり、これもまた真田にとっては地味に大きな原因になっていたと思われます。
どういうことかというと、越前は真田の風林火山に同じ風林火山をぶつけるという対消滅によって無効化し、風で火を打ち消すという芸当をやってのけました。
不二が解説しているように真田の風林火山の最大の敵は己自身にあり、もし雷を使い続けていたら越前もそれに対抗しうる技を用いて破っていたでしょう。
そして一度越前にそのデータを出してしまうと、今度は全国大会決勝で戦う時に対策を取られてしまうわけであり、勝ち目がなくなってしまいます。

そして3つ目、実はこれが最も大きい要因ですが、あの日は立海の部長・幸村精市の手術があったことが真田をはじめ立海メンバーにメンタルブロックをかけていたからではないでしょうか。
幸村はあの時ギランバレー症候群に酷似した病気でまともにテニスができない状態だったわけであり、その影響は少なからず真田たちの精神面に不安をかけていたと思われます。
真田は手塚ファントムと零式サーブを連発して左肘を犠牲にする手塚に対して「その辺にしておけ、2度とテニスが出来なくなるぞ」という言葉をかけているのです。
これに対して手塚は「お前の覚悟はそんなものか」と無自覚に真田の地雷を踏む言葉をかけてしまったのですが(こういうところが手塚の人でなしたる所以)、ここが一番大きいのでしょう。

幸村の難病を通して「テニスが出来なくなる」という状況がどれだけ恐ろしいかを知っている立海はテニスのために己の全てを捧げるなんてことはできなかったのです。
それをサラッとやってしまう辺り立海よりも青学の方が遥かに恐ろしいのですが、この後幸村は真田に真っ向勝負をやめて確実に勝ちに行く作戦に打って出ます。
確かに真田からすれば「ふざけるな」と言いたくなるのですが、でもあれは一見冷たいようでいて実は幸村も真田のフィジカルを心配していたのかもしれません。
どのみちあのまま打ち続けていたら真田の自滅でしたし、そこまでしても勝ちが得られないのであれば真田の自己満足でしかなくなってしまいます。

ましてや幸村と真田は幼馴染ですから、お互いのことはもう熟知していて、ここは幸村が諌めなかったら真田が暴走した挙句に自滅して終わるのが見えているのです。
そうなると結局は小学生の時の1-6での真田惨敗のトラウマは不可避ですから、幸村としてもここは何としても勝率を上げて真田を手塚に勝たせたなかったのではないでしょうか。
そう考えると、幸村って一見非情なようでいて割と身内に対しては優しいところもあるのだなと今更ながらに思いました、まあ赤也に対しては容赦ないですが。
立海は確かに「非情のテニス」ではあるのですが、「勝つために命の安全を捧げる」というところにまで踏み切れないあたりはむしろ青学よりも弱いのかなと思います。

赤也のラフプレーや幸村の五感剥奪で悪党っぽく見える立海ですが、でも勝つためなら腕の1本や2本差し出してもいいなんてところまで行くほど非情ではありません。
相手に対しては容赦なくても自分たち自身が自己犠牲を払ってまでテニスをやろうとは思わないので、青学に比べると実はまだ安全な学校だったのかも。
青学は一見明るそうな校風ですが、タカさんは相手を波動球で棄権狙いに持っていきますし、手塚や越前の柱組は容赦なく相手を叩き潰すスタイルですしね。
不二に至っては特に観月戦やジロー戦は「弟の裕太をボコボコにするなんて、やってくれるね」なんて感じで報復行為に出ていますし。

以上から総合的に判断すると、関東決勝S1の真田は越前リョーマに対して手を抜いていたから「雷」と「陰」を使わなかったわけじゃないと思います。
むしろ逆で越前リョーマのテニスに畏怖しており、また雷を酷使することで選手生命が絶たれることを恐れたからこそ使わなかったのではないでしょうか。
そう考えると真田がマッチポイント以外で無我の境地を隠していた理由も「選手生命が絶たれるのを恐れたから」ではない、つまり舐めプしていたわけじゃないとわかります。
何だか「如何に青学が立海に勝つか?」に見えていた話ですが、立海視点で見ると「いかに手塚と越前を攻略するか?」に見えてきて恐ろしいです。

「テニスの王子様」における真のラスボスは立海大ではなく青学だったのですね、うん、そりゃ青学優勝しますわ。


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