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お父さん、死んじゃいやだ!

わたしの父は、癌で闘病しています。
胃がんと肝臓癌の末期で、医師からも余命宣告されています。

最近、悪質液なのか痩せ方が顕著になってきました。
ドクターからは何でも食べていいし、好きなことをして良いと言われています。
だから、わたしは父が好きな食べ物を作ります。

おはぎ、ケーキ、チョコレートチーズケーキ、
イチジクのケーキ、クッキー、ヒレカツ、ローストビーフ、お肉いっぱいのコロッケなどなど。

でもいくら食べても父は枯れ木のように痩せていきます。
甘いものが癌の餌になることも知っています。

でも父は自分の余命を知りません。
大好きな母親と一緒にいるのを何よりの楽しみにしています。
だからわたしは、甘いものも揚げ物も作ります。
笑いながら作っています。

最初に父が病院に運ばれたとき、医師から
「血を視ても倒れない人だけ」と言う条件で、

わたしだけ、内視鏡を見せてもらいました。


父の胃からは血液が噴水みたいに溢れ出していました。
そして転移したと思われる肝臓は、血液を含みながら不気味に膨れ上がっていました。

母と妹の強い意志で、父親にこのことを言わないことにしてから、はや2ヶ月が経過しました。


リミットは近づいてきています。

お父さん、

昔はわたしを肩車して、あちこち連れて行ってくれたじゃない。
二十歳のお祝いのときには、高島屋でカシミヤのコートを買ってくれたじゃない。

わたしが電車の中で倒れたときには、横浜の病院まで迎えにきてくれたじゃない!

どうして?
どうしてお父さんが死ななきゃいけないの?

お父さん、何でもできたじゃない、
いつもわたしを助けてくれたじゃない。

どうしていなくなっちゃうの?
どうして、死ななきゃいけないの?

わたしを置いていかないで、

お父さん、

昔みたいに肩車してよ。
ねえ、

お父さん!



置いていかないでよ、


お父さん!